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60:番の絆(レオンハルト視点)※時間が少し遡ります
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「なに独り言を言ってるの、死に直面して幻覚でもみてるのかな。まぁ、関係ないけど。マティーニ」
「ええ。安心してください。先ほどは突然で対応できませんでしたが、私がこの男を仕留めます」
いつの間にか立ち上がったマティーニと視線が合った。
(やるしかない、いや、やり切って見せよう)
私は自身の傷口に対して今できる限り最大限の回復魔法をかけた。そうすることで無理やり傷口を一時的に縮めて自身の体が動くようにした。
そんな私に対して、間合いを詰めるようにマティーニが駆け出す。確かに早いスピードだが相手も手負いであるため、私はそれを躱す様に走る。
「マティーニだけ相手ならなんとかなるかもしれないけど、僕もいるからね」
躱して走った方角へ、レイン様が魔法を放とうとしている。
『させるか』
私にしか聞こえない、アンドレイ様の声と共にレイン様目掛けて爆弾が飛ぶ。それを物の消滅魔法でレイン様は消すとチッとお行儀の悪い舌打ちをする。
(舌打ちなんて全く品がありません。私のアンドレイ様ならそんなことはどんなことがあってもしない)
『……そう言うこと言うと舌打ちしたくなる』
あまのじゃくな私の愛おしい人。しかし、私はしっている。この人は根っから品が良い人なので舌打ちはできず……。
チュッ
『あっ……』
(ふふ、本当に貴方は可愛い。遠隔からの愛のあるキスをありがとうございます。しかし、遠隔ではなく貴方に直接キスをしたいのでなんとしても私は生きて帰りますのでご安心ください)
『……ふん。当たり前だ』
マティーニから目を離せないので、真正面から見れないのが大変悔しいが、間違いなくアンドレイ様は私の大好きな恥じらう表情というか恥ずかしがって強がっているに違いない。
(ああ、早く沢山愛したい)
愛する番の元へ戻るために、同じように再度、ふたりを躱す。後2分くらいだろう。
「ちょこまか動いて、本当に猫のくせに邪魔だよね」
苛立ったように、こちらを睨むレイン様に私は最大限の嫌み満載の笑みを浮かべる。レオンハルトとは獅子を意味する名なのでたまに猫と言って揶揄する輩はいる。
「私はネコではありません。まぎれもなくタチですよ」
「……」
私のユーモアのある答えの後、何故かマティーニの目が厳しくなる。そして、私へ向かう速度も心なしか上がった気がした。
薄々感づいていたがこのふたりは私とアンドレイ様のように主従関係でそういう関係なのだろう。
「安心してください。私は最愛の御方以外に全く興味はない。そう、誰よりも美しい幸いのドラゴン以外は全員同じに見えるのでね」
再びマティーニを躱した時、私の頬を掠めるようにかまいたちが起きた。どうやら大きな魔法ではなくレイン様は小さなトラップのような魔法を使い始めているようだ。
(なるほど、ちまちまと罠で追いやるつもりか、しかし、それなら……)
私が次の一手を打とうとした時だった、突然妙なことが起きた。
『母上、助けて下さい』
少年と思われる声が場所いっぱいに響いたのだ。
「!!レイノック??どうしたの??」
今までずっと不機嫌そうだったレイン様の顔が、見たことのないほど動揺したのが分かる。そして彼を母上と呼んだことからどうやらひとり息子でありこの全ての元凶であるマグダラ男爵令息の声だと理解する。
「レイン様、レイノック様の元へ……」
『させるか!!ドロー!!我が騎士団を召喚!!』
某デュエルマンガのような叫びと共に、ついに転送が完了し騎士団がやってきた。
「間に合った……グフッ」
その瞬間、無理がたたり私はその場に血を吐いて崩れ落ちた。
「レオンハルト様、すぐ治療いたします」
騎士団で一番の治癒師が私の元へ駆けつけて治療を開始した。
『逃がすな、奴らを必ず捕まえろ!!後、罠があるようだから気をつけろ!!』
「「「はっ」」」
アンドレイ様の命令にふたりを捕縛しようと騎士団が動く。遠のく意識の中でなんとか逃げきれてと思った時だった。
「レイン様、どうかレイノック様を助けに行ってください」
とても澄んだマティーニの声がした。
「何言って……」
「私は一足先に祖母の元へ参ります」
マティーニが手を大きく上げて開く。その様子に気を取られた一瞬の隙に、とても苦し気にマティーニを見つめたレイン様は騎士団を振り切り逃げ出した。
魔法の力がじわじわと集まっていくのが分かる。
「まずい。みんな防御を……」
重傷でなければ声を張り上げられたが、私の声は大勢いる騎士団に響かない。マティーニの手から大きな魔法が放たれる。自分もろとも騎士団を巻き込んで自爆させるつもりだ。
(クソ、間に合わない)
体が吹っ飛ぶことを予測して防御姿勢をとった。
『させるか!!騎士団もレオンハルトも僕の大切な部下を守るのが上司の役目だ!!』
(アンドレイ様??)
ドン!!
巨大な爆音の響く前に響いた声に私は不穏なものを感じた。土煙が立ち上る中目を開くと部屋が崩落しており満身創痍のマティーニがその場に倒れてはいたが、騎士団にけが人はいないことが分かった。
そう、あれだけの爆発があり怪我人がいない。
「アンドレイ様!!!!」
咄嗟に私は叫んでいた、愛する人の名を。しかし、それに反応する答えは返ってこなかった。
「ええ。安心してください。先ほどは突然で対応できませんでしたが、私がこの男を仕留めます」
いつの間にか立ち上がったマティーニと視線が合った。
(やるしかない、いや、やり切って見せよう)
私は自身の傷口に対して今できる限り最大限の回復魔法をかけた。そうすることで無理やり傷口を一時的に縮めて自身の体が動くようにした。
そんな私に対して、間合いを詰めるようにマティーニが駆け出す。確かに早いスピードだが相手も手負いであるため、私はそれを躱す様に走る。
「マティーニだけ相手ならなんとかなるかもしれないけど、僕もいるからね」
躱して走った方角へ、レイン様が魔法を放とうとしている。
『させるか』
私にしか聞こえない、アンドレイ様の声と共にレイン様目掛けて爆弾が飛ぶ。それを物の消滅魔法でレイン様は消すとチッとお行儀の悪い舌打ちをする。
(舌打ちなんて全く品がありません。私のアンドレイ様ならそんなことはどんなことがあってもしない)
『……そう言うこと言うと舌打ちしたくなる』
あまのじゃくな私の愛おしい人。しかし、私はしっている。この人は根っから品が良い人なので舌打ちはできず……。
チュッ
『あっ……』
(ふふ、本当に貴方は可愛い。遠隔からの愛のあるキスをありがとうございます。しかし、遠隔ではなく貴方に直接キスをしたいのでなんとしても私は生きて帰りますのでご安心ください)
『……ふん。当たり前だ』
マティーニから目を離せないので、真正面から見れないのが大変悔しいが、間違いなくアンドレイ様は私の大好きな恥じらう表情というか恥ずかしがって強がっているに違いない。
(ああ、早く沢山愛したい)
愛する番の元へ戻るために、同じように再度、ふたりを躱す。後2分くらいだろう。
「ちょこまか動いて、本当に猫のくせに邪魔だよね」
苛立ったように、こちらを睨むレイン様に私は最大限の嫌み満載の笑みを浮かべる。レオンハルトとは獅子を意味する名なのでたまに猫と言って揶揄する輩はいる。
「私はネコではありません。まぎれもなくタチですよ」
「……」
私のユーモアのある答えの後、何故かマティーニの目が厳しくなる。そして、私へ向かう速度も心なしか上がった気がした。
薄々感づいていたがこのふたりは私とアンドレイ様のように主従関係でそういう関係なのだろう。
「安心してください。私は最愛の御方以外に全く興味はない。そう、誰よりも美しい幸いのドラゴン以外は全員同じに見えるのでね」
再びマティーニを躱した時、私の頬を掠めるようにかまいたちが起きた。どうやら大きな魔法ではなくレイン様は小さなトラップのような魔法を使い始めているようだ。
(なるほど、ちまちまと罠で追いやるつもりか、しかし、それなら……)
私が次の一手を打とうとした時だった、突然妙なことが起きた。
『母上、助けて下さい』
少年と思われる声が場所いっぱいに響いたのだ。
「!!レイノック??どうしたの??」
今までずっと不機嫌そうだったレイン様の顔が、見たことのないほど動揺したのが分かる。そして彼を母上と呼んだことからどうやらひとり息子でありこの全ての元凶であるマグダラ男爵令息の声だと理解する。
「レイン様、レイノック様の元へ……」
『させるか!!ドロー!!我が騎士団を召喚!!』
某デュエルマンガのような叫びと共に、ついに転送が完了し騎士団がやってきた。
「間に合った……グフッ」
その瞬間、無理がたたり私はその場に血を吐いて崩れ落ちた。
「レオンハルト様、すぐ治療いたします」
騎士団で一番の治癒師が私の元へ駆けつけて治療を開始した。
『逃がすな、奴らを必ず捕まえろ!!後、罠があるようだから気をつけろ!!』
「「「はっ」」」
アンドレイ様の命令にふたりを捕縛しようと騎士団が動く。遠のく意識の中でなんとか逃げきれてと思った時だった。
「レイン様、どうかレイノック様を助けに行ってください」
とても澄んだマティーニの声がした。
「何言って……」
「私は一足先に祖母の元へ参ります」
マティーニが手を大きく上げて開く。その様子に気を取られた一瞬の隙に、とても苦し気にマティーニを見つめたレイン様は騎士団を振り切り逃げ出した。
魔法の力がじわじわと集まっていくのが分かる。
「まずい。みんな防御を……」
重傷でなければ声を張り上げられたが、私の声は大勢いる騎士団に響かない。マティーニの手から大きな魔法が放たれる。自分もろとも騎士団を巻き込んで自爆させるつもりだ。
(クソ、間に合わない)
体が吹っ飛ぶことを予測して防御姿勢をとった。
『させるか!!騎士団もレオンハルトも僕の大切な部下を守るのが上司の役目だ!!』
(アンドレイ様??)
ドン!!
巨大な爆音の響く前に響いた声に私は不穏なものを感じた。土煙が立ち上る中目を開くと部屋が崩落しており満身創痍のマティーニがその場に倒れてはいたが、騎士団にけが人はいないことが分かった。
そう、あれだけの爆発があり怪我人がいない。
「アンドレイ様!!!!」
咄嗟に私は叫んでいた、愛する人の名を。しかし、それに反応する答えは返ってこなかった。
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