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22:酷く陰鬱な気持ちと新しい出会い(ビッチ氏視点)
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その後、公爵は俺に信じられないことを告げた。
「君からルシオンの魔力を感じるよ。やはり、ルシオンは『神返り』だったのだね」
『神返り』とはこの国で知らぬ者のいないほどの最大限の福音であるスキル持ちをさす。勉強嫌いの俺でも幼い頃に絵本で読んだから知っている。
この国の建国神話の神様のカペラは、王族の先祖に魔力を与え、初代王はその魔力を臣下に与えることができたと言われている。
そこから、神に忠義を誓う者、神に認められた者に高い魔力が宿る的な魔力至上主義思想とかいうヤバイ信仰が貴族の間でなされているんだけど、そいつらがもっとも崇拝するのが『神返り』と呼ばれる極まれに現れる存在で、文字通り他者へ自身の魔力、魔法を付与できる存在のことを指す。
つまり、ルッシーのおかげで魅了が使えるようになった時点で俺にはルッシーが『神返り』だということは分かっていた。
でも、それを明かすつもりはなかったし、何よりそれを分かる人間はいないと思っていた。何故ならステータスが視れても『神返り』が与えたスキルは表示されない。
それを見ることができるのは……。
「……公爵様は『真実の瞳』のスキルをもってるんですね」
全てのステータスをつまびらかにできるスキル。その言葉にはじめて公爵はニコリと冷えた笑みを浮かべた。
「ははは、君はとても勘が良いようだ。その通り、私には『真実の瞳』のスキルがある。これについては特に隠しては居ないが、魔力至上主義の貴族にとっては魔力が少ないにも関わらず至高のスキルを持っているということが忌避されてね、隠されているんだよ」
そう語る時の公爵は終始笑顔だった。しかし、そこから言い知れない恨みのような強い怒りのような感情が伝わってきた。
ずっと無感情だった瞳が苛烈さを感じる光を宿したからかもしれない。俺は、その素性から人の僅かな感情を読み取ることがとても得意だから、この感覚に多分間違いはないはずだ。
「だから、私はずっとルシオンの本当の魔力量も知っていたよ。ただ、スキルについてはまだ覚醒していなかったので知らなかったけれどなるほど、『魅了』を相手に付与できるスキル……中々に恐ろしいものだ。
『神返り』について理解があるなら、『神帰り』を与えた側と受けた側の間に魔力的な絆が生まれるのも分かるね。つまり、君とルシオンは繋がっているのでその縁を類寄せればルシオンがどこにいるか分かるんだ」
(ごめん、ルッシー……)
きっと、この人には一番バレてはいけなかっただろうことが明るみになってしまった。どうしようもなかったこととはいえ罪悪感がせり上がる。
(こんな気持ちになったのは初めてだな……)
その後は、特になすすべもなく、俺とルッシーの絆を類寄せられてルッシーが今、帝国のそれも辺境伯領にいるということが分かった。
その間、俺は食事さぇ忘れるほどに憔悴しきってしまっていた。
けっしてカルナック公爵が酷いことをしたのではない。むしろ、今までで一番人道的に扱われたというのにやるせない気持ちに支配されて全てに対して無気力になってしまったのだ。
「食事の時間だ」
部屋にひとりの男が入ってくる。カルナック公爵家の騎士のひとりだというその男は、どこか洗練されきっていない雰囲気で正直ダサい眼鏡の男だった。
年齢は俺達とかわらないと思う彼は、俺の監視と世話を仰せつかっているらしく毎日部屋へとやってくる。
「ありがとう♡美味しそうだね」
「……お前、そんなこと心にも思っていないだろう」
はっきりとそう言い切られたとき思わず目を見開いた。正直この冴えない騎士は俺のことなんて義務で見ているだけだからこんな風に感情を看破されるなんて考えてもみなかったのだ。
思わず鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をしていると、男は少し意地の悪い笑みを浮かべた。
「だって、お前はその食事を他人に渡しているのを知っているからな。毒なんて入っていなから安心して食べてくれ、そうしないと体に毒だぞ」
「ははは、ありがとう。でもね、俺はこれを食べても意味がないんだよね」
なんとなく、イラっとしたのでいままで男を魅了してきた、流し目でそいつを見つめて誘惑するようにその肩に手をかけた。
「……ああ、噂は本当だったのか。ガリラヤ男爵家の三男は男爵の子ではない。魔性との間にできた子供、つまりお前は半淫魔なんだな」
「ふふふ、話が早くて助かるよ。ねぇ、俺は精液を摂取しないといきていけないんだ。今ここで接触できるの君くらいだから、食事させてよ」
わざとしなだれかかりながら言えば、魔力封じも今は外されているから簡単に引っかかると思った。けれど男はそれはそれは意地悪い笑みを浮かべる。
「残念だったな。俺は妖精の血を引く半妖精なものでその手の魔法は一切効かない。ただ、お前に食事を与えても構わないが条件がある」
そうして、彼が俺に出した条件はいままでの俺の人生では到底考えられないものだった。
「君からルシオンの魔力を感じるよ。やはり、ルシオンは『神返り』だったのだね」
『神返り』とはこの国で知らぬ者のいないほどの最大限の福音であるスキル持ちをさす。勉強嫌いの俺でも幼い頃に絵本で読んだから知っている。
この国の建国神話の神様のカペラは、王族の先祖に魔力を与え、初代王はその魔力を臣下に与えることができたと言われている。
そこから、神に忠義を誓う者、神に認められた者に高い魔力が宿る的な魔力至上主義思想とかいうヤバイ信仰が貴族の間でなされているんだけど、そいつらがもっとも崇拝するのが『神返り』と呼ばれる極まれに現れる存在で、文字通り他者へ自身の魔力、魔法を付与できる存在のことを指す。
つまり、ルッシーのおかげで魅了が使えるようになった時点で俺にはルッシーが『神返り』だということは分かっていた。
でも、それを明かすつもりはなかったし、何よりそれを分かる人間はいないと思っていた。何故ならステータスが視れても『神返り』が与えたスキルは表示されない。
それを見ることができるのは……。
「……公爵様は『真実の瞳』のスキルをもってるんですね」
全てのステータスをつまびらかにできるスキル。その言葉にはじめて公爵はニコリと冷えた笑みを浮かべた。
「ははは、君はとても勘が良いようだ。その通り、私には『真実の瞳』のスキルがある。これについては特に隠しては居ないが、魔力至上主義の貴族にとっては魔力が少ないにも関わらず至高のスキルを持っているということが忌避されてね、隠されているんだよ」
そう語る時の公爵は終始笑顔だった。しかし、そこから言い知れない恨みのような強い怒りのような感情が伝わってきた。
ずっと無感情だった瞳が苛烈さを感じる光を宿したからかもしれない。俺は、その素性から人の僅かな感情を読み取ることがとても得意だから、この感覚に多分間違いはないはずだ。
「だから、私はずっとルシオンの本当の魔力量も知っていたよ。ただ、スキルについてはまだ覚醒していなかったので知らなかったけれどなるほど、『魅了』を相手に付与できるスキル……中々に恐ろしいものだ。
『神返り』について理解があるなら、『神帰り』を与えた側と受けた側の間に魔力的な絆が生まれるのも分かるね。つまり、君とルシオンは繋がっているのでその縁を類寄せればルシオンがどこにいるか分かるんだ」
(ごめん、ルッシー……)
きっと、この人には一番バレてはいけなかっただろうことが明るみになってしまった。どうしようもなかったこととはいえ罪悪感がせり上がる。
(こんな気持ちになったのは初めてだな……)
その後は、特になすすべもなく、俺とルッシーの絆を類寄せられてルッシーが今、帝国のそれも辺境伯領にいるということが分かった。
その間、俺は食事さぇ忘れるほどに憔悴しきってしまっていた。
けっしてカルナック公爵が酷いことをしたのではない。むしろ、今までで一番人道的に扱われたというのにやるせない気持ちに支配されて全てに対して無気力になってしまったのだ。
「食事の時間だ」
部屋にひとりの男が入ってくる。カルナック公爵家の騎士のひとりだというその男は、どこか洗練されきっていない雰囲気で正直ダサい眼鏡の男だった。
年齢は俺達とかわらないと思う彼は、俺の監視と世話を仰せつかっているらしく毎日部屋へとやってくる。
「ありがとう♡美味しそうだね」
「……お前、そんなこと心にも思っていないだろう」
はっきりとそう言い切られたとき思わず目を見開いた。正直この冴えない騎士は俺のことなんて義務で見ているだけだからこんな風に感情を看破されるなんて考えてもみなかったのだ。
思わず鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をしていると、男は少し意地の悪い笑みを浮かべた。
「だって、お前はその食事を他人に渡しているのを知っているからな。毒なんて入っていなから安心して食べてくれ、そうしないと体に毒だぞ」
「ははは、ありがとう。でもね、俺はこれを食べても意味がないんだよね」
なんとなく、イラっとしたのでいままで男を魅了してきた、流し目でそいつを見つめて誘惑するようにその肩に手をかけた。
「……ああ、噂は本当だったのか。ガリラヤ男爵家の三男は男爵の子ではない。魔性との間にできた子供、つまりお前は半淫魔なんだな」
「ふふふ、話が早くて助かるよ。ねぇ、俺は精液を摂取しないといきていけないんだ。今ここで接触できるの君くらいだから、食事させてよ」
わざとしなだれかかりながら言えば、魔力封じも今は外されているから簡単に引っかかると思った。けれど男はそれはそれは意地悪い笑みを浮かべる。
「残念だったな。俺は妖精の血を引く半妖精なものでその手の魔法は一切効かない。ただ、お前に食事を与えても構わないが条件がある」
そうして、彼が俺に出した条件はいままでの俺の人生では到底考えられないものだった。
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