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17.『魅了』魔法の秘密とお姫様抱っこされた拙者
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「……可愛いルシオンのお願いならおじしゃまはなんでも叶えてあげよう。まずルシオンは両親についてどれくらい知っているかな??」
「……政略結婚で結婚して、あまり仲が良くないと把握しているでござるが……」
逆にそれ以上はふたりと接していないので分からない。もっと言えば父親であるはずの陛下は物凄く拙者を嫌っているというのも肌で感じていた。
拙者が『全く魔力を保有していない』という部分で特に冷遇されているのだとは思っていたが……。
「そうだね。元から仲が悪かったわけじゃない。婚約者時代はルシオンの父親である国王は、君の母である兄上に夢中だったのだから。ただ、昔から僕はあの男が気に入らなかった。なんせ有能では全くないが魔力だけは高かったのでそれを鼻にかけた実に嫌な男だった。
僕が魔力を持たないことについてもネチネチ言ってきたからね。今思い出しても腹立たしい。『所詮は汚れた血の流れる庶子だな』と言われた時はとりあえず肉体言語で黙らせたが、今でもあのクソ野郎の首は捥いでやりたいよ」
「ひぃ、突然のスプラッター展開はやめて頂きたい。もしかして、陛下が拙者を毛嫌いするのは……」
叔父上の話で拙者は察した。多分陛下は拙者を自分の子供ではないと思っているということだろう。そしてその根拠は拙者が全く魔力が使えない辺りではないか、ただそこまで考えても腑に落ちない点がある。
「あのクソ国王はこんなに可愛い可愛いルシオンを何故か自分の息子だと思っていない。兄上は浮気など当然せずにルシオンを産んだというのに!!顔立ちは兄上にそっくりだけれど金髪の髪もそのロイヤル・ブルーの瞳の色も間違いなく王家の色だというのに……。何故かあの男にはルシオンの髪色と目の色が銀髪で青い目に見えていたらしい。意味が分からない。兄上もそれを何度も何度も伝えたが全く聞く耳を持たなかった。正直その時点で帝国は王国と戦争することも辞さないつもりでいた。
それを止めたのがカルナック公爵だった。帝国に自身の命の危険も恐れずに赴いて謝罪と補償をし、王宮で冷遇されていたルシオンについても正しい待遇が受けられるようにと手筈を整えた。そして、ルシオンを守るために自身の息子との婚約もさせた。ただ、この婚約はふたりがお互いの意思に反すると言えばすぐに解消できるものだった。けれど……」
「拙者が、婚約を破棄してしまった……拙者の意思が弱くて『魅了』にかかって……」
『魅了』に掛かっていたとはいえ、拙者は最愛の人であったレイを裏切ってしまった。しかし、その言葉に叔父上はそれはそれは不機嫌な表情に変わった。例えるならば般若のような形相とでも例えるべきだろうか。
「あの男は、本当にクソ野郎だね。『魅了』は精神論でどうにかできるものではない。それはそれはおそろしい禁忌魔法だ。ほんのわずかな好意を増幅させて精神操作まで行うことが出来てしまうんだから」
「で、でも、ほんのわずかでも好意を抱くというのは婚約者がいる者としては裏切りではないのでござるか??」
妹の部屋で前世よくみたざまぁ系の『魅了』の話は、大体が少しの好意や浮気心があったから『魅了』に掛かるというのがセオリーであり、この世界もそのセオリー通りなのだと想像していた。しかし、叔父上は首を振って悲し気に言った。
「いいかい、そんなに単純ではないんだ。例えば、可愛いルシオンはもふもふの子犬や子猫をみたらどう思う??」
「もふもふは正義でござる!!」
「つまり可愛いと思うだろう??また、僕はルシオンが可愛いと思っている。それはもう尻に挿れてほしいくらい可愛いと思っている。
つまり別に恋愛関係になくとも、あ、僕はルシオンならお嫁さんに欲しいけど、そうじゃなくて可愛いと思うことや僅かな好意、いや好感を持つことは日常で当たり前に起きる、生きていれば何かを好きだとか嫌いだとかはごく当たり前に感じることだろう??
そんな感情を増幅し言いなりにするような魔法は最悪国すら壊しかねない。
実際帝国では数代前に異世界からやってきた聖人がその力を持っていて危なく国が滅びかけているつまりとても危険な……ん?
ルシオン真っ青になっているけれど大丈夫かな??ああ、可哀そうに熱がありそうだ。もし熱があるなら、おじしゃまがルシオンの可愛い可愛いお尻に座薬を挿れて覚ましてあげ……」
「け、けっこうです!!そ、それより、えっと、その帝国でもし『魅了』魔法を使ったらどうなるでござるか??」
「ん??そうだね、火炙りで処刑して灰も全て消滅させられるけれど……」
その言葉に冷や汗が止まらない。なぜなら拙者は『魅了』のスキルを持っている状態であり、それがバレたら殺されるという恐ろしい事実に気付いてしまい正気度がピンチでござる。
「ルシオン殿下。それはあくまで『魅了』を使用した場合です。なのでスキルでお持ちしているだけなら特に問題ありませんし、王国では軟弱な精神魔法という認識のようなので違法ですらありません」
スラスラと拙者の心を読んだようにレオンハルト殿が答えた。その言葉に、ホッとした拙者を叔父上が持ち上げていきなりお姫様抱っこをされて完全に硬直する。
「ああ、羽のように軽い可愛いルシオン、おじしゃまはルシオンに『魅了』されて好きなんじゃなくて、もうルシオンがルシオンでルシオンなだけで愛しているからね、そこは変な誤解をしないでおくれ。
そして、話を戻そう。つまり本来ならばルシオンが婚約を破棄すると言ってもここまで本当は大ごとにならない話だったはずだ。何故ならどちらかに相手が出来たら解消できる程度の拘束力しかないものだったのだから。
なのに、何故かそれを原因として、ルシオンは廃嫡されてさらに炭鉱に連れて来られたと王国を監視させていたレオンハルトから報告を受けた時は驚いたし、驚きすぎてその勢いで王国を焦土にするところだった。ルシオンがまだ王国に居ると思わなければ絶対に焼き滅ぼしただろう。
なお、今現在まで正式にルシオンが該当の婚約破棄が原因で廃嫡されたという話は帝国への報告はない状態なんだ、これがどういうことかわかるかい??」
「……政略結婚で結婚して、あまり仲が良くないと把握しているでござるが……」
逆にそれ以上はふたりと接していないので分からない。もっと言えば父親であるはずの陛下は物凄く拙者を嫌っているというのも肌で感じていた。
拙者が『全く魔力を保有していない』という部分で特に冷遇されているのだとは思っていたが……。
「そうだね。元から仲が悪かったわけじゃない。婚約者時代はルシオンの父親である国王は、君の母である兄上に夢中だったのだから。ただ、昔から僕はあの男が気に入らなかった。なんせ有能では全くないが魔力だけは高かったのでそれを鼻にかけた実に嫌な男だった。
僕が魔力を持たないことについてもネチネチ言ってきたからね。今思い出しても腹立たしい。『所詮は汚れた血の流れる庶子だな』と言われた時はとりあえず肉体言語で黙らせたが、今でもあのクソ野郎の首は捥いでやりたいよ」
「ひぃ、突然のスプラッター展開はやめて頂きたい。もしかして、陛下が拙者を毛嫌いするのは……」
叔父上の話で拙者は察した。多分陛下は拙者を自分の子供ではないと思っているということだろう。そしてその根拠は拙者が全く魔力が使えない辺りではないか、ただそこまで考えても腑に落ちない点がある。
「あのクソ国王はこんなに可愛い可愛いルシオンを何故か自分の息子だと思っていない。兄上は浮気など当然せずにルシオンを産んだというのに!!顔立ちは兄上にそっくりだけれど金髪の髪もそのロイヤル・ブルーの瞳の色も間違いなく王家の色だというのに……。何故かあの男にはルシオンの髪色と目の色が銀髪で青い目に見えていたらしい。意味が分からない。兄上もそれを何度も何度も伝えたが全く聞く耳を持たなかった。正直その時点で帝国は王国と戦争することも辞さないつもりでいた。
それを止めたのがカルナック公爵だった。帝国に自身の命の危険も恐れずに赴いて謝罪と補償をし、王宮で冷遇されていたルシオンについても正しい待遇が受けられるようにと手筈を整えた。そして、ルシオンを守るために自身の息子との婚約もさせた。ただ、この婚約はふたりがお互いの意思に反すると言えばすぐに解消できるものだった。けれど……」
「拙者が、婚約を破棄してしまった……拙者の意思が弱くて『魅了』にかかって……」
『魅了』に掛かっていたとはいえ、拙者は最愛の人であったレイを裏切ってしまった。しかし、その言葉に叔父上はそれはそれは不機嫌な表情に変わった。例えるならば般若のような形相とでも例えるべきだろうか。
「あの男は、本当にクソ野郎だね。『魅了』は精神論でどうにかできるものではない。それはそれはおそろしい禁忌魔法だ。ほんのわずかな好意を増幅させて精神操作まで行うことが出来てしまうんだから」
「で、でも、ほんのわずかでも好意を抱くというのは婚約者がいる者としては裏切りではないのでござるか??」
妹の部屋で前世よくみたざまぁ系の『魅了』の話は、大体が少しの好意や浮気心があったから『魅了』に掛かるというのがセオリーであり、この世界もそのセオリー通りなのだと想像していた。しかし、叔父上は首を振って悲し気に言った。
「いいかい、そんなに単純ではないんだ。例えば、可愛いルシオンはもふもふの子犬や子猫をみたらどう思う??」
「もふもふは正義でござる!!」
「つまり可愛いと思うだろう??また、僕はルシオンが可愛いと思っている。それはもう尻に挿れてほしいくらい可愛いと思っている。
つまり別に恋愛関係になくとも、あ、僕はルシオンならお嫁さんに欲しいけど、そうじゃなくて可愛いと思うことや僅かな好意、いや好感を持つことは日常で当たり前に起きる、生きていれば何かを好きだとか嫌いだとかはごく当たり前に感じることだろう??
そんな感情を増幅し言いなりにするような魔法は最悪国すら壊しかねない。
実際帝国では数代前に異世界からやってきた聖人がその力を持っていて危なく国が滅びかけているつまりとても危険な……ん?
ルシオン真っ青になっているけれど大丈夫かな??ああ、可哀そうに熱がありそうだ。もし熱があるなら、おじしゃまがルシオンの可愛い可愛いお尻に座薬を挿れて覚ましてあげ……」
「け、けっこうです!!そ、それより、えっと、その帝国でもし『魅了』魔法を使ったらどうなるでござるか??」
「ん??そうだね、火炙りで処刑して灰も全て消滅させられるけれど……」
その言葉に冷や汗が止まらない。なぜなら拙者は『魅了』のスキルを持っている状態であり、それがバレたら殺されるという恐ろしい事実に気付いてしまい正気度がピンチでござる。
「ルシオン殿下。それはあくまで『魅了』を使用した場合です。なのでスキルでお持ちしているだけなら特に問題ありませんし、王国では軟弱な精神魔法という認識のようなので違法ですらありません」
スラスラと拙者の心を読んだようにレオンハルト殿が答えた。その言葉に、ホッとした拙者を叔父上が持ち上げていきなりお姫様抱っこをされて完全に硬直する。
「ああ、羽のように軽い可愛いルシオン、おじしゃまはルシオンに『魅了』されて好きなんじゃなくて、もうルシオンがルシオンでルシオンなだけで愛しているからね、そこは変な誤解をしないでおくれ。
そして、話を戻そう。つまり本来ならばルシオンが婚約を破棄すると言ってもここまで本当は大ごとにならない話だったはずだ。何故ならどちらかに相手が出来たら解消できる程度の拘束力しかないものだったのだから。
なのに、何故かそれを原因として、ルシオンは廃嫡されてさらに炭鉱に連れて来られたと王国を監視させていたレオンハルトから報告を受けた時は驚いたし、驚きすぎてその勢いで王国を焦土にするところだった。ルシオンがまだ王国に居ると思わなければ絶対に焼き滅ぼしただろう。
なお、今現在まで正式にルシオンが該当の婚約破棄が原因で廃嫡されたという話は帝国への報告はない状態なんだ、これがどういうことかわかるかい??」
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