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12.様子のおかしい娼館と一蓮托生な拙者とビッチ氏

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「ねぇ、ルッシーおきて!!」

怖い人達に睨まれた翌日、普段は拙者と違って夜にお楽しみをしてきているので昼まで起きてこないはずの、ビッチ氏に揺すり起こされた。

あまりの力強さと体力脆弱な美少年になってしまった拙者は、体力おばけなビッチ氏にただただ振り回される。

「ビビビッチ氏、ど、どうしたでござるか??」

揺すられたせいで前世ばりに震えたコミュ障な感じで返してしまった拙者に、ビッチ氏は何かを気にしながら、小声で囁くように言った。

「ここの様子がおかしい。さっきからなんか爆音とか怒号とか聞こえたりして……戦場みたいで、よくないことが起きている気がするんだよね……」

爆音や怒号が聞こえるというのは物凄く良くないのは間違いない。ただ、前世の先入観なのだがこういう場所は裏社会との繋がりがあるので、もしかしたらワンチャン抗争的なものにこの娼館が巻き込まれた説もあるのではと考えた。

(ギムレット殿も、マティーニ殿も完全にそっち側の人のようだったでござったし……)

しかし、だとしたら何が原因でそのような諍いが生まれたのか、そこまで考えた時、昨日の記憶と現在の娼館の状況を思い出した。

この娼館は現在、ビッチ氏が食い散らかしたため過半数の下っ端氏達は拙者、というか拙者に擬態したビッチ氏に骨抜きにされている。

もし彼らが拙者に会いたいとかで暴動を起こしたとしたら……。

「……拙者のスキルが原因で暴動が起きたりなどしていたら大変でござる!!しかも昨日、拙者のスキルはギムレット殿に知られてしまったようだし……くっ、関係ない下っ端氏達が可哀そうすぎる!!」

『魅了』の恐ろしさを知るものとしては、ビッチ氏の餌食になった哀れな子羊が暴れたりして、彼等の人生が色々めちゃくちゃになったり、誰かが怪我したり不幸になったりしたらいたたまれなすぎる。前世のオタクであった頃を思い出した影響で完全に彼らが他人ではない何なら推しにハマって暴走してしまった同士を見ているような複雑な心情だった。

だから、絶対に阻止しなければいけない。そんな拙者に真剣な顔でビッチ氏が言った。

「言うか迷ってたけど、ルッシーは優しすぎるよ。これからはもう王子様じゃないからルッシーを守ってくれる人はいない。だから時には非情になる必要だってある。それにね、俺はもう一蓮托生の仲だとルッシーに思うからバラすけど、誰もルッシーの正確なステータスは見れないよ、俺が保証できる。だから仮にルッシー起因の魅了が原因の暴動でもその原因はわからないと思うからそのままスルーしちゃえばいいと思う」

「……仮に分からないとしても、それでも拙者のせいで、誰かが辛い目に遭うのは嫌でござる。捨てる側は気づかないけど捨てられる側は辛いから……」

ただ、そう言っても今の拙者に何ができるのか、ほぼ時間が立たないうちに事件が起きてしまっているので魔法の勉強もしていない、けれど何とかしなければともう一度ステータスを見直す。

『ルシオン・クリスト・メビウス 人間(元王族、元性奴隷(仮)) 18 男(この世界には男しかいないため妊娠可)
 HP:100,MP:∞ 固有魔法:『魅了Ω:任意の他者を自身に擬態させて魅了させる』『魅了α:人間的魅力で相手を虜にする』『魅了∞:現在のレベルでは内容を公開できません』』

そうして、ある決意をする。それがうまくいった場合、最悪拙者のスキルが割れるかもしれない。けれど……。

「ビッチ氏、拙者は雑魚美少年でしかないが、この状況を確認してくるでござる」

「……ああ、もう仕方ないな。さっき一蓮托生って言ったし、今ご飯食べられるのもルッシーのおかげだから俺も付き合うよ」

今まで見た中で一番、素の表情で答えたビッチ氏は男前だった。

「ありがとうビッチ氏」

とりあえず、部屋をまず出ようと扉に手を掛ける。ビッチ氏はいつも通り外に簡単に出れた。そして拙者もあっさりと出ることができた。

「……見張りは……」

いつもなら居るはずの見張りは誰も居ない。ただ、思ったより部屋の外のフロアが荒れているということはない

辺りを見回していた拙者に、ビッチ氏がシッと口の前で黙る様にという仕草をした。

「どうしたでござるか??」

「何か下の階から聞こえる……ここ、実は穴が開いててさ……」

と、美しいフロアの壁にわずかにあるヒビを指した。とりあえずふたりで耳を澄ますと男達の話声が聞こえた。

「……いくらなんでも意味がわからなすぎる」

「許すか許されないかではない。そもそもここは法的に問題があるだろう??そんな場所に私の最愛を置いておくわけにはいけない、いや、そもそも最愛は私の安楽な腕の中にいるべきなのに……何故奪ったんだ」

「話にならない。そもそもいくら高貴な貴方とはいえどんな許可があってここにそのような根の葉もない話をしにきたんだい??ここに元王子様なんていないよ」

その話に拙者とビッチ氏は思わずお互いを見つめ合った。
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