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06:豪華なお部屋とビッチ氏の事情
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その後、御者から娼館の従業員に引き渡された拙者とビッチ氏は、娼館内に連れていかれたのだが……。
「おお!!さすがルッシー!!腐っても元王族!!いい部屋だね!!」
ビッチ氏が浮かれるくらい広くてそれどころか、どう見ても高そうな調度品が並べられている部屋は明かにVIP待遇というヤツだと分かった。
記憶の中にある王族時代の自分の部屋よりもなんなら豪華な気すらするし、元々汚部屋に住んでいたオタクといたしましては大変良い部屋過ぎて膝がガクガクするレベルだったりする。
さらに、先ほどギムレット殿が話していたが、拙者の水揚げ価格は相当高額なのだろうとも察した。
その現実を実感するようなその部屋に戦々恐々とする拙者とは対照的に、浮かれて部屋の主より先にベッドにダイブしているビッチ氏をぼんやりと見つめる。
「……ビッチ氏、むしろいい部屋過ぎて怖いのだが……」
「確かに。でもぉそれだけルッシーがここで価値があるってことだよ。あ、ちなみに俺の部屋はトイレってくらい狭くて汚い部屋だったよ。まぁ、さっきギムレットさんが言ってた通り俺って価値がないらしいからさ」
とても明るい調子で漆黒なことを言うビッチ氏に、胸が痛んだ。
正直、ビッチ氏について拙者はあまりにも何も知らない。
魅了されていた期間の記憶はとても朧で、ただ分かるのはあくまで魅了は相手を精神的に操作するものだけれど心までは操れなかったということだ。
だから拙者は記憶を取り戻した時から、ずっとレイのことを思い出して辛く悲しい気持ちになる。
とても優しかったレイを、魅了魔法に掛かったとはいえ、ないがしろにしてしまった愚かな拙者。妹が大好きだったざまぁ小説なら完全に悪役ポジションの顔だけで頭悪い王子とかでござる。
前世の観点でいうなれば、アイドルに熱を上げすぎて、東京に居たいあまり不摂生なブラック生活を送っていた息子を心配してなんども故郷に帰ってきなさいといってくれた両親を適当にあしらってしまった結果、推しの結婚のショックで孤独に死んでしまった前世の最期を想起する
ただ、レイへは少なくとも恋愛感情もあったので違う部分もあるが、生きているうちにスライディング土下座くらいはしないと気が済まない。
(前世のカルマを断ち切らねばならぬ)
「前世のカルマってなぁに??ルッシーって時々変になるよね」
「はわわ、また口にしていたでござるか??」
心で思ったことを口に出していたらしいことと、『前世のカルマ』とかちょっと中二病じみたことを口にしていたらしい恥ずかしさに思わず、枕に顔を埋めてバンバン思春期の女学生のようにしたくなったがそれをグッと我慢する。
「うん。でもそういう素直なとことかルッシーの美点だからそのままでいいと思うよ」
「ビッチ氏……」
こうやってちゃんと話していて思うのは、ビッチ氏は人が言うほどひどい人間なのかということだ。
確かに拙者に魅了魔法をかけていたらしいが、そこまで悪い人間には思えないし、むしろオタクに優しいギャルという今まで概念しかなかった存在だとずっと思っている。
オタクに優しいギャルが悪い人間なんて信じたくない。だから、拙者はビッチ氏に聞いてみることにした。
「あの……どうしてビッチ氏は拙者を魅了したんでござるか??」
「ああ、実はね、俺さ淫魔と人間のハーフなんだよね」
あっけらかんと言い放った言葉にびっくりしすぎて無言になる。この世界が中世ヨーロッパっぽいことは把握していたが魔物がいる系の話とは認識していなかったし、聞いたこともなかった。
「えええ!!で、でもビッチ氏は男爵令息では……」
「そう。うーん。俺あんまり隠すの苦手だから全部はなしちゃおう♡実は俺のパパは男爵じゃないんだよ。でも俺のママは男爵夫人なんだ。つまり本当のパパである淫魔との間に出来たベイビーなんだってさ。しかも俺のママは俺を産んですぐお星さまになっちゃったんだ☆」
想像以上に重い話をすごく軽いテンションで話されるとびっくりしすぎて何も言えなくなる。そんな拙者にビッチ氏はさらに続けた。
「その血の影響で魅了が使えたんだよ。半分淫魔だから人間の食事と別でエッチして精気を吸うのも生命活動のために必要でさ。一応小さなときはこっそり本当のパパが来て俺にご飯をくれてたんだけど、ある程度大きくなったら『自分でケツを開いて頑張りなさい』って言われて、そこからが割とヤバかったけどここまで大きくなったんだよ☆ただ、どうしても俺は定期的にエッチする必要があるんだよ、だから今の魅了を封印されてエッチできない状況はまずいんだよね」
まるで、エッチなコメディーマンガの冒頭みたいな身の上を目の前で語るビッチ氏。
(これは……ま、まさか、拙者にエッチなことを強要される??エロ同人みたいに??エロ同人みたいに??いや、むしろラッキースケベの主人公みたいな展開か!?)
「安心して、ルッシーはなんかこう強い守りみたいなのがあって俺みたいなクソ雑魚魔物だと手が出せないんだよ。じゃなきゃ魅了した時に童貞食べてただろうし♡」
「なるほど。……しかしならどうして拙者を魅了したでござるか??」
ビッチ氏の悲しい生い立ちと、ラッキースケベの予感に色々忘れかけていたが、ビッチ氏の生命活動に不要だとしたら何故ビッチ氏が拙者に魅了などをかけたのかが疑問となる。
すると、ビッチ氏は今までの軽薄さが消えたとても真面目な顔をした。
「それは……」
「おお!!さすがルッシー!!腐っても元王族!!いい部屋だね!!」
ビッチ氏が浮かれるくらい広くてそれどころか、どう見ても高そうな調度品が並べられている部屋は明かにVIP待遇というヤツだと分かった。
記憶の中にある王族時代の自分の部屋よりもなんなら豪華な気すらするし、元々汚部屋に住んでいたオタクといたしましては大変良い部屋過ぎて膝がガクガクするレベルだったりする。
さらに、先ほどギムレット殿が話していたが、拙者の水揚げ価格は相当高額なのだろうとも察した。
その現実を実感するようなその部屋に戦々恐々とする拙者とは対照的に、浮かれて部屋の主より先にベッドにダイブしているビッチ氏をぼんやりと見つめる。
「……ビッチ氏、むしろいい部屋過ぎて怖いのだが……」
「確かに。でもぉそれだけルッシーがここで価値があるってことだよ。あ、ちなみに俺の部屋はトイレってくらい狭くて汚い部屋だったよ。まぁ、さっきギムレットさんが言ってた通り俺って価値がないらしいからさ」
とても明るい調子で漆黒なことを言うビッチ氏に、胸が痛んだ。
正直、ビッチ氏について拙者はあまりにも何も知らない。
魅了されていた期間の記憶はとても朧で、ただ分かるのはあくまで魅了は相手を精神的に操作するものだけれど心までは操れなかったということだ。
だから拙者は記憶を取り戻した時から、ずっとレイのことを思い出して辛く悲しい気持ちになる。
とても優しかったレイを、魅了魔法に掛かったとはいえ、ないがしろにしてしまった愚かな拙者。妹が大好きだったざまぁ小説なら完全に悪役ポジションの顔だけで頭悪い王子とかでござる。
前世の観点でいうなれば、アイドルに熱を上げすぎて、東京に居たいあまり不摂生なブラック生活を送っていた息子を心配してなんども故郷に帰ってきなさいといってくれた両親を適当にあしらってしまった結果、推しの結婚のショックで孤独に死んでしまった前世の最期を想起する
ただ、レイへは少なくとも恋愛感情もあったので違う部分もあるが、生きているうちにスライディング土下座くらいはしないと気が済まない。
(前世のカルマを断ち切らねばならぬ)
「前世のカルマってなぁに??ルッシーって時々変になるよね」
「はわわ、また口にしていたでござるか??」
心で思ったことを口に出していたらしいことと、『前世のカルマ』とかちょっと中二病じみたことを口にしていたらしい恥ずかしさに思わず、枕に顔を埋めてバンバン思春期の女学生のようにしたくなったがそれをグッと我慢する。
「うん。でもそういう素直なとことかルッシーの美点だからそのままでいいと思うよ」
「ビッチ氏……」
こうやってちゃんと話していて思うのは、ビッチ氏は人が言うほどひどい人間なのかということだ。
確かに拙者に魅了魔法をかけていたらしいが、そこまで悪い人間には思えないし、むしろオタクに優しいギャルという今まで概念しかなかった存在だとずっと思っている。
オタクに優しいギャルが悪い人間なんて信じたくない。だから、拙者はビッチ氏に聞いてみることにした。
「あの……どうしてビッチ氏は拙者を魅了したんでござるか??」
「ああ、実はね、俺さ淫魔と人間のハーフなんだよね」
あっけらかんと言い放った言葉にびっくりしすぎて無言になる。この世界が中世ヨーロッパっぽいことは把握していたが魔物がいる系の話とは認識していなかったし、聞いたこともなかった。
「えええ!!で、でもビッチ氏は男爵令息では……」
「そう。うーん。俺あんまり隠すの苦手だから全部はなしちゃおう♡実は俺のパパは男爵じゃないんだよ。でも俺のママは男爵夫人なんだ。つまり本当のパパである淫魔との間に出来たベイビーなんだってさ。しかも俺のママは俺を産んですぐお星さまになっちゃったんだ☆」
想像以上に重い話をすごく軽いテンションで話されるとびっくりしすぎて何も言えなくなる。そんな拙者にビッチ氏はさらに続けた。
「その血の影響で魅了が使えたんだよ。半分淫魔だから人間の食事と別でエッチして精気を吸うのも生命活動のために必要でさ。一応小さなときはこっそり本当のパパが来て俺にご飯をくれてたんだけど、ある程度大きくなったら『自分でケツを開いて頑張りなさい』って言われて、そこからが割とヤバかったけどここまで大きくなったんだよ☆ただ、どうしても俺は定期的にエッチする必要があるんだよ、だから今の魅了を封印されてエッチできない状況はまずいんだよね」
まるで、エッチなコメディーマンガの冒頭みたいな身の上を目の前で語るビッチ氏。
(これは……ま、まさか、拙者にエッチなことを強要される??エロ同人みたいに??エロ同人みたいに??いや、むしろラッキースケベの主人公みたいな展開か!?)
「安心して、ルッシーはなんかこう強い守りみたいなのがあって俺みたいなクソ雑魚魔物だと手が出せないんだよ。じゃなきゃ魅了した時に童貞食べてただろうし♡」
「なるほど。……しかしならどうして拙者を魅了したでござるか??」
ビッチ氏の悲しい生い立ちと、ラッキースケベの予感に色々忘れかけていたが、ビッチ氏の生命活動に不要だとしたら何故ビッチ氏が拙者に魅了などをかけたのかが疑問となる。
すると、ビッチ氏は今までの軽薄さが消えたとても真面目な顔をした。
「それは……」
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