上 下
1 / 99

01:天国へ連れて行こう

しおりを挟む
「ルカ・ウィリアム・アクアマリン伯爵令息。君は私の婚約者であるミリアに手を出した。これは違反行為だ。よって君に慰謝料を請求する」

そう言っているのは、ルビー侯爵家の息子だったと思う。ミリアとは、その婚約者の女性だが正直良い噂のない人物だけれど何故かルカは彼女と親密な付き合いをしていた。

とはいっても一線を越えたわけではなかった。ただ、婚約者のいる女性に手出ししたことはよくないことだ。

まぁ、正直プラチナブロンズの髪に紫のまるで宝玉のような瞳、更に至上の薔薇も霞むような色合いの唇を持つ美しく可憐なルカにあの女が汚らわしく触れて挑発したから本来なら全くルカは悪くない。

むしろ今調べているが、どうやら美人局的なことをしていた可能性が高そうだ。

しかし、愛するルカは、ルビー侯爵令息に手渡された紙を見て震えた。

どんな酷いことが書いてあるのだろう。事と次第によっては後で社会的に殺してやろう。そう心に決意しながらルカを見守る。

「責任は取らないといけないと考えていますが、僕は爵位も継がないような男でその金額を払えるかどうか……」

なんてルカは優しいのだろう。しかしその優しく美しい精神を汚そうとするクソ野郎が多すぎる。まぁそういうヤツらは秘密裡に色々してきたが……。

「心配するな。その賠償ができるように働く場所は確保した。お前はこれから辺境伯領で兵役についてもらう」

「辺境伯領、あそこは隣国との境界線で、今も戦争が続いている場所じゃないですか。そんなところに僕が行けば死んでしまう」

安心してほしい。ルカは絶対前線なんかにはいかせないし、俺の城で最高に甘やかして囲ってあげる予定だ。だから絶対に死ぬなんて過ちは起きない。

「死んでもかまわないという風に君の家からも言質はとったし、兵士として死ねば国家補償の支払いがされる。最悪それで支払いは賄える」

やはり、ルカの生家だがアクアマリン伯爵家はいずれ潰す必要がありそうだ。ただ、ルカが悲しむかもしれないのでそのあたりはルカが俺の城に来てからちゃんと確認しよう。

「いやだ、死にたくないです」

綺麗なルカが大粒の涙を流す。その真珠のような美しい涙を舐め取りたい、さらにはその細くしなやかな体を抱きしめて慰めてあげたい……。ルカを傷つける全ての者を皆殺しにしてやりたいのだけれど、今はその感情を押し殺す。

なぜなら……

「もう全て手遅れだ。君をほら、迎えにきているよギルベルト・ターコイズ辺境伯が」

そう言って、俺に可憐で美しいルカを差し出す。しかし、その汚い手で触った罪は絶対許さないなんなら切り落とそうか。ルビー侯爵令息が汚い手で触ったせいかルカの顔は明らかに絶望に歪んでいた。

(大丈夫。もうルカを傷つける奴らからこれからはずっと守ってあげるからね)

俺は、誰よりもルカを愛していると自負できる。なんやかんや15年ほどストーカーしてきたからな。

でもルカは俺を見るとすごく怯えた顔をする。それが何故なのか分からない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

賢者となって逆行したら「稀代のたらし」だと言われるようになりました。

かるぼん
BL
******************** ヴィンセント・ウィンバークの最悪の人生はやはり最悪の形で終わりを迎えた。 監禁され、牢獄の中で誰にも看取られず、ひとり悲しくこの生を終える。 もう一度、やり直せたなら… そう思いながら遠のく意識に身をゆだね…… 気が付くと「最悪」の始まりだった子ども時代に逆行していた。 逆行したヴィンセントは今回こそ、後悔のない人生を送ることを固く決意し二度目となる新たな人生を歩み始めた。 自分の最悪だった人生を回収していく過程で、逆行前には得られなかった多くの大事な人と出会う。 孤独だったヴィンセントにとって、とても貴重でありがたい存在。 しかし彼らは口をそろえてこう言うのだ 「君は稀代のたらしだね。」 ほのかにBLが漂う、逆行やり直し系ファンタジー! よろしくお願い致します!! ********************

俺の義兄弟が凄いんだが

kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・ 初投稿です。感想などお待ちしています。

ボクのことが嫌いな彼らは、10年後の僕を溺愛する

BL
母親の再婚により、幼いアンリの生活は一変した。 十年間、最悪を受け入れ、諦め、死んだように生きていたアンリの周りは最近なんだかおかしい。 !!  暴力表現は*   R18表現は**   という感じで作者判断で一応印をつけようと思いますが、印がなくても色々あると理解した上でご覧ください。 ※すべては見切り発車です。 ※R18は保険です。サラッと描写するかもしれないし、がっつりにするかもしれないし。いずれにしてもある程度話が進まないとそういうシーンは出てこないと思います。がっつりになったら印つけます。 ※女性との絡み、暴力、犯罪描写あります。 ※主人公重度のマザコン

耽溺 ~堕ちたのはお前か、それとも俺か?~

寺原しんまる
BL
女の様に美しく整った容姿のビジュアル系バンドマンのヒロトは、ステージで美声を響き渡らせる傍ら、毎日違う女の家を渡り歩く生活をおくっていた。その日もある女の家に行き、貢ぎ物を受け取って事に及んで寝ていると、部屋にヤクザが乗り込んでくるのだった。拉致されたヒロトは、組事務所に連れて行かれ組長に引き渡される。その組長は圧倒的なオーラを身に纏い、同性でさえ身体が疼く程の色気を放つ人物だった。 性描写は激しいです。乱暴な行為も多々あります。ろくでなしが沢山出てきます。ほんわかラブストーリーではないので、苦手な方はご注意ください。一応、ラブストーリーです。暗闇の中に光りあり? 表紙はヒロトのイメージで描いています。 ムーンライトノベルズでも連載中です。

【完結】僕の大事な魔王様

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
BL
母竜と眠っていた幼いドラゴンは、なぜか人間が住む都市へ召喚された。意味が分からず本能のままに隠れたが発見され、引きずり出されて兵士に殺されそうになる。 「お母さん、お父さん、助けて! 魔王様!!」 魔族の守護者であった魔王様がいない世界で、神様に縋る人間のように叫ぶ。必死の嘆願は幼ドラゴンの魔力を得て、遠くまで響いた。そう、隣接する別の世界から魔王を召喚するほどに……。 俺様魔王×いたいけな幼ドラゴン――成長するまで見守ると決めた魔王は、徐々に真剣な想いを抱くようになる。彼の想いは幼過ぎる竜に届くのか。ハッピーエンド確定 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/11……完結 2023/09/28……カクヨム、週間恋愛 57位 2023/09/23……エブリスタ、トレンドBL 5位 2023/09/23……小説家になろう、日間ファンタジー 39位 2023/09/21……連載開始

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

記憶の欠けたオメガがヤンデレ溺愛王子に堕ちるまで

橘 木葉
BL
ある日事故で一部記憶がかけてしまったミシェル。 婚約者はとても優しいのに体は怖がっているのは何故だろう、、 不思議に思いながらも婚約者の溺愛に溺れていく。 --- 記憶喪失を機に愛が重すぎて失敗した関係を作り直そうとする婚約者フェルナンドが奮闘! 次は行き過ぎないぞ!と意気込み、ヤンデレバレを対策。 --- 記憶は戻りますが、パッピーエンドです! ⚠︎固定カプです

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

処理中です...