上 下
127 / 143
第六章:集う運命

119.海の王子と不幸令嬢02

しおりを挟む
必死にその訳の分からないものからレミリアを守ろうとした。しかし、クリストファーの体は今や他人のものであるように、勝手に動こうとする。

「どうして、なんなんだ、どうして!!」

クリストファーに頭の中に、慟哭が響く。そして、その声にクリストファー自身怯えていた。それはまるで遠い昔のトラウマのように、記憶の果てに追いやったもののように、広がる感覚は未知のものなのによく知っている気がして恐ろしかった。

少なくとも、自分はレミリアを愛している、それだけは変ることがないはずだ、それなのに何故か頭からレミリアを連れ去ったムーンティア王国の王子ルーファスの残像が消えないで居座っている。

(お前は勘違いしている。お前はその女を愛していない)

「違う、僕はレミリアをずっと好きだし愛している」

(その感情は、作られたものだ)

「確かに僕は太陽狂いだ、けれどレミリアを愛しているんだ」

(「太陽狂い」自体が作り物の呪いなのにか??本当のことを教えてやろう。その呪いは月の国で作られたものだ。ルーをアトラス王国の王族から護るために。つまり、お前がルーを好きにならないように、その可能性がある者の感情が「太陽の娘」へのものにすり替える呪い……。どういう意味かわかるだろう??)

「そんなわけない!!ふざけるな、僕はレミリア以外に興味なんて……」

(その感情は本来、ルーに向くものだった。もし正常に作用していたらお前は俺のようにルーを愛して愛して愛して、その女を殺してやったはずだ、あああああ、殺させろ、ルーを俺から奪う者は全部全部殺してやる!!)

「やめろ!!だめだ、レミリアを……レミリアだけは……」

クリストファーの中で、ひとつの記憶が蘇る。それは城での記憶。クリストファーは表向き誰よりも大切な王子として育った。正当な王族の血と、国で最も暗いが高い公爵の娘であった正妃との間に生まれた一切の汚点のない王子様。

既に、兄であるクレメントが居たが、彼の母は下級貴族。クリストファーこそが王太子になり王位継承をおこなうべきだという根強い声がささやかれ続けていた。

幼いながらにそれを理解していたクリストファー。しかし、それと同時に「太陽狂い」である彼は不適切だとする声もあった。クリストファーに考え方の多様性を教えるとともに、明確な敵と味方がこの世界にはいることを知った原因でもある。

そして、「太陽狂い」だから王太子にしないということを言ったのが実の父親である国王だと知った日、クリストファーはショックで震えが止まらなかった。

父親である国王はクリストファーにはとても甘かった。それに比べてクレメントには厳しかったので自身のが愛されていると思っていた。

しかし、国王はクリストファーを愛しているフリをしながら全く愛していなかった。いや、愛してはいたかもしれない、まるで飼い犬に注ぐような愛情なら持っていたかもしれない。けれど、息子として愛されることはなかったと言いきれた。

しおりを挟む
感想 49

あなたにおすすめの小説

拝啓、婚約者さま

松本雀
恋愛
――静かな藤棚の令嬢ウィステリア。 婚約破棄を告げられた令嬢は、静かに「そう」と答えるだけだった。その冷静な一言が、後に彼の心を深く抉ることになるとも知らずに。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛

らがまふぃん
恋愛
 こちらは以前投稿いたしました、 美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛 の続編となっております。前作よりマイルドな作品に仕上がっておりますが、内面のダークさが前作よりはあるのではなかろうかと。こちらのみでも楽しめるとは思いますが、わかりづらいかもしれません。よろしかったら前作をお読みいただいた方が、より楽しんでいただけるかと思いますので、お時間の都合のつく方は、是非。時々予告なく残酷な表現が入りますので、苦手な方はお控えください。 *早速のお気に入り登録、しおり、エールをありがとうございます。とても励みになります。前作もお読みくださっている方々にも、多大なる感謝を! ※R5.7/23本編完結いたしました。たくさんの方々に支えられ、ここまで続けることが出来ました。本当にありがとうございます。ばんがいへんを数話投稿いたしますので、引き続きお付き合いくださるとありがたいです。この作品の前作が、お気に入り登録をしてくださった方が、ありがたいことに200を超えておりました。感謝を込めて、前作の方に一話、近日中にお届けいたします。よろしかったらお付き合いください。 ※R5.8/6ばんがいへん終了いたしました。長い間お付き合いくださり、また、たくさんのお気に入り登録、しおり、エールを、本当にありがとうございました。 ※R5.9/3お気に入り登録200になっていました。本当にありがとうございます(泣)。嬉しかったので、一話書いてみました。 ※R5.10/30らがまふぃん活動一周年記念として、一話お届けいたします。 ※R6.1/27美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛(前作) と、こちらの作品の間のお話し 美しく冷酷な公爵令息様の、狂おしい熱情に彩られた愛 始めました。お時間の都合のつく方は、是非ご一読くださると嬉しいです。 *らがまふぃん活動二周年記念として、R6.11/4に一話お届けいたします。少しでも楽しんでいただけますように。

記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話

甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。 王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。 その時、王子の元に一通の手紙が届いた。 そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。 王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

【完結】この胸が痛むのは

Mimi
恋愛
「アグネス嬢なら」 彼がそう言ったので。 私は縁組をお受けすることにしました。 そのひとは、亡くなった姉の恋人だった方でした。 亡き姉クラリスと婚約間近だった第三王子アシュフォード殿下。 殿下と出会ったのは私が先でしたのに。 幼い私をきっかけに、顔を合わせた姉に殿下は恋をしたのです…… 姉が亡くなって7年。 政略婚を拒否したい王弟アシュフォードが 『彼女なら結婚してもいい』と、指名したのが最愛のひとクラリスの妹アグネスだった。 亡くなった恋人と同い年になり、彼女の面影をまとうアグネスに、アシュフォードは……  ***** サイドストーリー 『この胸に抱えたものは』全13話も公開しています。 こちらの結末ネタバレを含んだ内容です。 読了後にお立ち寄りいただけましたら、幸いです * 他サイトで公開しています。 どうぞよろしくお願い致します。

嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜

みおな
恋愛
 伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。  そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。  その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。  そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。  ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。  堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・

「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。

木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。 因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。 そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。 彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。 晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。 それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。 幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。 二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。 カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。 こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。

私は貴方を許さない

白湯子
恋愛
甘やかされて育ってきたエリザベータは皇太子殿下を見た瞬間、前世の記憶を思い出す。無実の罪を着させられ、最期には断頭台で処刑されたことを。 前世の記憶に酷く混乱するも、優しい義弟に支えられ今世では自分のために生きようとするが…。

処理中です...