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第六章:集う運命
119.海の王子と不幸令嬢02
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必死にその訳の分からないものからレミリアを守ろうとした。しかし、クリストファーの体は今や他人のものであるように、勝手に動こうとする。
「どうして、なんなんだ、どうして!!」
クリストファーに頭の中に、慟哭が響く。そして、その声にクリストファー自身怯えていた。それはまるで遠い昔のトラウマのように、記憶の果てに追いやったもののように、広がる感覚は未知のものなのによく知っている気がして恐ろしかった。
少なくとも、自分はレミリアを愛している、それだけは変ることがないはずだ、それなのに何故か頭からレミリアを連れ去ったムーンティア王国の王子ルーファスの残像が消えないで居座っている。
(お前は勘違いしている。お前はその女を愛していない)
「違う、僕はレミリアをずっと好きだし愛している」
(その感情は、作られたものだ)
「確かに僕は太陽狂いだ、けれどレミリアを愛しているんだ」
(「太陽狂い」自体が作り物の呪いなのにか??本当のことを教えてやろう。その呪いは月の国で作られたものだ。ルーをアトラス王国の王族から護るために。つまり、お前がルーを好きにならないように、その可能性がある者の感情が「太陽の娘」へのものにすり替える呪い……。どういう意味かわかるだろう??)
「そんなわけない!!ふざけるな、僕はレミリア以外に興味なんて……」
(その感情は本来、ルーに向くものだった。もし正常に作用していたらお前は俺のようにルーを愛して愛して愛して、その女を殺してやったはずだ、あああああ、殺させろ、ルーを俺から奪う者は全部全部殺してやる!!)
「やめろ!!だめだ、レミリアを……レミリアだけは……」
クリストファーの中で、ひとつの記憶が蘇る。それは城での記憶。クリストファーは表向き誰よりも大切な王子として育った。正当な王族の血と、国で最も暗いが高い公爵の娘であった正妃との間に生まれた一切の汚点のない王子様。
既に、兄であるクレメントが居たが、彼の母は下級貴族。クリストファーこそが王太子になり王位継承をおこなうべきだという根強い声がささやかれ続けていた。
幼いながらにそれを理解していたクリストファー。しかし、それと同時に「太陽狂い」である彼は不適切だとする声もあった。クリストファーに考え方の多様性を教えるとともに、明確な敵と味方がこの世界にはいることを知った原因でもある。
そして、「太陽狂い」だから王太子にしないということを言ったのが実の父親である国王だと知った日、クリストファーはショックで震えが止まらなかった。
父親である国王はクリストファーにはとても甘かった。それに比べてクレメントには厳しかったので自身のが愛されていると思っていた。
しかし、国王はクリストファーを愛しているフリをしながら全く愛していなかった。いや、愛してはいたかもしれない、まるで飼い犬に注ぐような愛情なら持っていたかもしれない。けれど、息子として愛されることはなかったと言いきれた。
「どうして、なんなんだ、どうして!!」
クリストファーに頭の中に、慟哭が響く。そして、その声にクリストファー自身怯えていた。それはまるで遠い昔のトラウマのように、記憶の果てに追いやったもののように、広がる感覚は未知のものなのによく知っている気がして恐ろしかった。
少なくとも、自分はレミリアを愛している、それだけは変ることがないはずだ、それなのに何故か頭からレミリアを連れ去ったムーンティア王国の王子ルーファスの残像が消えないで居座っている。
(お前は勘違いしている。お前はその女を愛していない)
「違う、僕はレミリアをずっと好きだし愛している」
(その感情は、作られたものだ)
「確かに僕は太陽狂いだ、けれどレミリアを愛しているんだ」
(「太陽狂い」自体が作り物の呪いなのにか??本当のことを教えてやろう。その呪いは月の国で作られたものだ。ルーをアトラス王国の王族から護るために。つまり、お前がルーを好きにならないように、その可能性がある者の感情が「太陽の娘」へのものにすり替える呪い……。どういう意味かわかるだろう??)
「そんなわけない!!ふざけるな、僕はレミリア以外に興味なんて……」
(その感情は本来、ルーに向くものだった。もし正常に作用していたらお前は俺のようにルーを愛して愛して愛して、その女を殺してやったはずだ、あああああ、殺させろ、ルーを俺から奪う者は全部全部殺してやる!!)
「やめろ!!だめだ、レミリアを……レミリアだけは……」
クリストファーの中で、ひとつの記憶が蘇る。それは城での記憶。クリストファーは表向き誰よりも大切な王子として育った。正当な王族の血と、国で最も暗いが高い公爵の娘であった正妃との間に生まれた一切の汚点のない王子様。
既に、兄であるクレメントが居たが、彼の母は下級貴族。クリストファーこそが王太子になり王位継承をおこなうべきだという根強い声がささやかれ続けていた。
幼いながらにそれを理解していたクリストファー。しかし、それと同時に「太陽狂い」である彼は不適切だとする声もあった。クリストファーに考え方の多様性を教えるとともに、明確な敵と味方がこの世界にはいることを知った原因でもある。
そして、「太陽狂い」だから王太子にしないということを言ったのが実の父親である国王だと知った日、クリストファーはショックで震えが止まらなかった。
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しかし、国王はクリストファーを愛しているフリをしながら全く愛していなかった。いや、愛してはいたかもしれない、まるで飼い犬に注ぐような愛情なら持っていたかもしれない。けれど、息子として愛されることはなかったと言いきれた。
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