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第六章:集う運命
117.太陽の皇帝と皇太子と不幸令嬢
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「ついに見つけたか」
「はい、陛下」
そう答えた、カールの表情にはこの先に待つだろう戦いへの覚悟が見て取れた。この後、彼らは同盟国の王子を捕縛する。そして、全てを明るみにする予定だ。
「許すことはできない。私の大切な妃のひとりと可愛い息子を傷つけた罪は重い」
祖父のルイからは、静かだが確実な怒りを感じた。弱い者を人質にする者が許せないのだ。それはカールも同じだった。そしてもうひとつカールには許せないことがある。それは、彼が、いや彼等が長年レミリアを、大切な姉妹を苦しめていたという事実も調べて分かったからだ。
「はい。そして我々の大切な太陽の娘を傷つけた罪も許すことはできない。しっかりと償わせましょう」
その言葉にルイも深く頷いた。既にサンソレイユ帝国にはクレメントからクリストファーの居場所が密告されていた。そして、その場所に今サンソレイユ帝国の騎士が踏み込む準備をしていた。
そこは切り立った崖の上に隠されるようにあって、簡単に近づくことが難しい場所だった。
(本当によく考えたものだ)
魔法具で隠した場所の次は自然で隠された、行くのが困難な場所。このようなところに密偵を送りこんでいたと思うと中々、アトラス王国はしたたかだと感心せざるおえなかった。
その場所へ行くには、浮遊の魔法またはザイールで崖を下りて向かうしかない。そして浮遊魔法はムーンティア王国の援助が必要だ。その件について先ほど連絡があり、魔法についてはムーンティア王国の者が遠隔操作で魔法を使うことを了承してくれている。
(ルーファス殿下とヨミ殿が現れるのだろうか……)
そう考えていたカールの目の前に現れたのは、ひとりの青年だった。彼は今までサンソレイユ帝国、ムーンティア王国に機密を伝えていたアトラス王国の王太子、クレメントだった。
カールは彼にもちろん面識があった。彼は王太子であるため何度か対談していたのだ。そして、その度にカールはあることを思っていた。
クレメントは常に、かの父である現国王から叱責されていた。それは人格を否定するような酷いものが多かった。それでも彼は何も感じていないような無表情を貫いていた。
しかし、その反面でかの国王はクレメントに大半の事柄を確認していたし、クレメントに対して父と息子にしては異常な熱を持った眼差しを向けていたことを……。
「お久しぶりです、カール殿下」
「ああ。お久しぶりですね、クレメント殿下」
お互いに握手を交わす。いよいよ、レミリアの体の奪還が始まったのだった。
「はい、陛下」
そう答えた、カールの表情にはこの先に待つだろう戦いへの覚悟が見て取れた。この後、彼らは同盟国の王子を捕縛する。そして、全てを明るみにする予定だ。
「許すことはできない。私の大切な妃のひとりと可愛い息子を傷つけた罪は重い」
祖父のルイからは、静かだが確実な怒りを感じた。弱い者を人質にする者が許せないのだ。それはカールも同じだった。そしてもうひとつカールには許せないことがある。それは、彼が、いや彼等が長年レミリアを、大切な姉妹を苦しめていたという事実も調べて分かったからだ。
「はい。そして我々の大切な太陽の娘を傷つけた罪も許すことはできない。しっかりと償わせましょう」
その言葉にルイも深く頷いた。既にサンソレイユ帝国にはクレメントからクリストファーの居場所が密告されていた。そして、その場所に今サンソレイユ帝国の騎士が踏み込む準備をしていた。
そこは切り立った崖の上に隠されるようにあって、簡単に近づくことが難しい場所だった。
(本当によく考えたものだ)
魔法具で隠した場所の次は自然で隠された、行くのが困難な場所。このようなところに密偵を送りこんでいたと思うと中々、アトラス王国はしたたかだと感心せざるおえなかった。
その場所へ行くには、浮遊の魔法またはザイールで崖を下りて向かうしかない。そして浮遊魔法はムーンティア王国の援助が必要だ。その件について先ほど連絡があり、魔法についてはムーンティア王国の者が遠隔操作で魔法を使うことを了承してくれている。
(ルーファス殿下とヨミ殿が現れるのだろうか……)
そう考えていたカールの目の前に現れたのは、ひとりの青年だった。彼は今までサンソレイユ帝国、ムーンティア王国に機密を伝えていたアトラス王国の王太子、クレメントだった。
カールは彼にもちろん面識があった。彼は王太子であるため何度か対談していたのだ。そして、その度にカールはあることを思っていた。
クレメントは常に、かの父である現国王から叱責されていた。それは人格を否定するような酷いものが多かった。それでも彼は何も感じていないような無表情を貫いていた。
しかし、その反面でかの国王はクレメントに大半の事柄を確認していたし、クレメントに対して父と息子にしては異常な熱を持った眼差しを向けていたことを……。
「お久しぶりです、カール殿下」
「ああ。お久しぶりですね、クレメント殿下」
お互いに握手を交わす。いよいよ、レミリアの体の奪還が始まったのだった。
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