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第五章:真実の断片と

101.呪いの根源と不幸令嬢02(ヨミ視点)

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今でもはっきりと記憶している。自身が弟のスサを裏切った記憶を。自身とスサは真逆の性格をした兄弟だった。私が勉学を好むならスサは剣術を好んでいた。

しかし、だからといってけっして険悪な仲ではなかった。スサは確かに粗野で乱暴であったけれどちゃんと反省できる人間だった。悪いことを悪いと思えば素直に謝れる、とても心の素直な男だった。

そのスサにあてがわれた婚約者であったオオゲツヒメ、美しい銀色の髪をした少女はまるで下弦の月のように儚い人だった。その美しさにスサだって恋心を抱いていたが、幼き日から強引に決められていた婚約だったのもあり、どこかでスサは彼女をないがしろにしていた。

オオゲツヒメ自身も、スサに強く言い返すことができず、結果スサは自身が正しいを思いこんでいった。

(何をしてもオオゲツヒメは許してくれる)

彼女をないがしろにし、酷い言葉を投げつけ、それでもなお彼女は愛してくれていると愚かにも思い続けていた。その愚かさを知った時点で私は諫めることができた。

『何故婚約者をないがしろにする、優しくしてあげるべきだ。彼女は悲しんでいる、お前の行いは間違っている』

きっとそう話したなら、スサは自身の行いを猛省しただろう。少なくとも傷つけ続けることはなく一度立ち止まったはずだ。けれど私はそれをしなかった。

なぜなら、スサの婚約者に決まる前から、オオゲツヒメを愛していたから。

てっきり自身の婚約者になると考えていたが、私の家族は私よりスサが好きだった。明確に差別されていた。ただ、当のスサは全く気付いていなかった。

どこに行くにも愛されていた弟はそれ故に、粗野で乱暴だった。何をしてもちゃんと考えて謝ることで許されたからだ。けれど僕は違う。それはできて当たり前だった。その上でそれ以上の何かをできなければ認められることはなかった。

思えば、とても前から因縁は続いていたのだろう。そして弟の婚約者となっても陰ながら彼女を守り続けた、いつか弟がみずから破滅することを願いながら。

私は、結局、弟から彼女を奪う形になった。それは望んでいた形だったが許されるものでもなかった。

婚約、婚姻し、そのお腹に愛おしい我が子が出来た時はその仄暗さを払しょくするほど幸せだった。けれど、その幸福の絶頂を弟は叩き潰したのだ。

あの日の弟の狂気に似た目を覚えている。そして、妻を庇い私自身も怪我をし、その際に魂の一部が剥離してしまった。魂が砕ければ人は死ぬ。けれど、一応魔法の力を強く持つ神と呼ばれる存在だった私は、一部が無くなることだけで許された。

ちなみにその剥離した魂がどこにいるのかは未だに分からない。
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