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第五章:真実の断片と

93.太陽の妃と王子と不幸令嬢

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「私は、私の太陽をルイ陛下を裏切った」

わなわなと体を震わせながら、女は怯えていた。震える母を前に幼い少年が心配そうに声を掛ける。

「母上、大丈夫ですか??」

そう心配してくれる息子は、まだ10歳で黒い髪に黄金の瞳をした太陽の王族の特徴を強く引き継いでいる。女にとってその息子を巻き込み、自身の保身のために最愛の太陽を裏切った罪がどんどん心を蝕んでいた。

あの日、アトラス王国の第2王子に脅されて、であった、レミリア皇女を、太陽の娘の体を奪う手助けをしてしまった。そしてそれが原因で、もうあの愛おしい人の側にもどれないであろうことを想像し、さらにそれに何の罪もない最愛の人との息子を巻き込んでしまったことに、後悔してもしきれない。

それだけの罪を犯した女に与えられたのは粗末な部屋だった。きっと女ひとりなら既に罪滅ぼしに自害していたかもしれない。しかし、女にはサンソレイユ帝国の王族の太陽の血を引く愛おしい息子がいた。その息子を守るために、なんとしても今のままではいけない。

(私が死ぬことになっても、この子だけは、守り抜かないと……)

そう考えていた時、部屋の外で普段聞かないような言い争うような声が聞こえてきた。

「……何が起きているの??」

疑問に思いながら聞き耳を立てると、外から怒声が聞こえる、それは明らかに何者かが侵入してきたことを意味していた。

(ここは、安全だと聞いていたけれどそれそらも嘘だったようね、ならば……)

「アテン、私の可愛い息子。貴方だけでも助けたいのです、だから……」

そう言って、女は息子をベッドの下に掘っていた脱出用のまだ完成していない穴の中へ隠す。

「母上もご一緒に……」

「だめよ、大人しくここでしていて。私は外の様子を見てきます」

女は、静かに扉を開いて外へ出る。そこでは、この隠れ家に常駐しているアトラス王国の密偵達とサンソレイユ帝国の騎士たちが小競り合いをしているのが分かった。

(私は、どうすべきだろうか……)

女は考える。考えてあるひとつの決断をした。

まだ、女に気付いていない男達から隠れながら、この建物の外を目指す。本当は中でサンソレイユ帝国の騎士に身柄を拘束されるのが一番安全だが、今は武力がぶつかり合うような小競り合いが多々発生している。

その中で安全に保護される見込みはない。ましてや大切な息子だけでも救い出してもらうには、一旦外に出て、騎士の元へ出頭した方が良い。

(そうすれば、私はどんな罰も受けよう。そして息子を何がなんでも助けてみせる)
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