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第五章:真実の断片と

84.太陽の皇太子と不幸令嬢03

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会議が行われたのはムーンティア王国の大きな会議室だった。高い天井に美しい彫刻がなされた荘厳なその部屋にレミリアははじめて入った。

その彫刻の中で目を引くものがあった。それはとても美しい女神の彫刻、そしてその女神がレミリアにはどことなくルーファスに似ているような気がしていた。

思わず、レミリアはルーファスとかの女神を見比べる。するとヨミがその視線に気づいてこう答えた。

「この美しい女神はオオゲツヒメ。この世でもっとも美しい女神です」

そう答えたヨミの目に、レミリアは僅かに違和感を覚えた。まるでそれは、とても愛おしい人を見るような眼差しだった。確かにかの女神の像は美しいが、そういうものとは異なる恋情を孕んだ眼差しだとレミリアは感じた。

「確かにとても綺麗、まるで……」

「僕に似ているというのだろう。よく言われる」

ルーファスが少し照れ臭そうに答えた。確かに面と向かって美しいと言われれば、相当の自信家でなければ誰だって恥ずかしいと思うかもしれない。

「確かに美しい。我が国の太陽の女神に匹敵する美しさだ」

カールがそう評した時、ヨミが一瞬翳りのある表情をしたがすぐに笑顔になり、

「そうですね、太陽の女神、アマテル様もお美しい。そうですね、例えるならまるでレミリア様によく似ていらっしゃる」

その言葉に弾かれたようにカールとヨミを交互に見つめる。それは間接的に自分も美しいと言われたのだから、とても恥ずかしいと思った。

今までレミリアはアトラス王国では美人として扱われたことがない。白い肌も金色の髪も美しい緑や青の瞳も持ち合わせていなかったからだ。しかし、カールやヨミはレミリアのような女神を美しいと称した。それがとても恥ずかしい。

「その、本当に私に似ているのですか??だとしたら美しいとはいいがたいのでは……」

「何を言っている。レミリア、君は美しい。我がサンソレイユ帝国では美しく艶のある黒髪と黄金の瞳に健康的な肌の色は最も美しいとされる。君はまさに理想の女性だ」

嘘偽りない真っすぐな眼差し。それがレミリアには恥ずかしい。みるみる真っ赤になるレミリアをルーファスは複雑な面持で見つめていた。

ルーファスもレミリアを美しいと思ってきたけれど、カールから言われた時のような反応をレミリアがしてくれたことがない。なんだか、ずっとカールに、太陽の血筋にルーファスは嫉妬ばかりしてしまう自分に気付いた。

(どうして、こんな気持ちになってしまうんだ。僕は、ただレミリアを……)

「愛している、誰よりも何よりも。それだけは変ることのない永遠」

けれど、レミリアをすこやかに愛せない自分、レミーナとレミリアの間での葛藤。それらがルーファスの心に深い闇を落としていく。
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