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第五章:真実の断片と

83.太陽の皇太子と不幸令嬢02

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「いえ、彼女は約束の娘ですので」

「そうか、それでも、もしあの時、アトラス王国にレミリアがそのまま囚われていたら一番最悪の事態になっていた。本当に感謝してもし足りないくらいだ」

明るい、裏表のない感謝の言葉はルーファスの胸を打つ。その明るさに思わず涙が零れた。

(光のない場所で生きている僕には、眩しすぎるな……)

「そして、レミリア、これから私達は君の体を取り戻すための話とアトラス王国への制裁に関する話合いをする。その会議に君にも同席してもらいたい」

ルーファスはその言葉にカールを見る。アトラス王国は確かにロクでもないのだがレミリアにとっては故郷だだから、制裁の話は聞きたくないのではないか、そう思った。口を挟もうとした時、カールが困惑しているレミリアを優しく見つめてさらにこう続けた。

「ただ嫌ならもちろん断ってくれて構わないし、途中で辛くなった場合は、いつでも離席してくれて構わない。同席についてはもし私が君の立場ならきっと今の状況や今後について気になると思ったからの提案に過ぎない」

「同席したいです」

カールの言葉に戸惑っていたレミリアがあっさりと返事をする。ルーファスはどうしてもレミリアを危険から遠ざけるために自分が自由を奪ってしまう事実に気付いた。

ルーファスなら、話し合いへの参加はさせないだろう。しかしカールは自由で構わないといった。その優しい懐の深さ、なんて羨ましいのだろう。

そう考えた時、ルーファスは自身のある感情に気付いた。

元々「月狂いルナティク」の気質は自分にもあるとルーファスは知っていたが、そのトリガーについては考えたことがなかった。

レミーナのことで一時的に「月狂いルナティク」に陥ったとヨミに言われたが、もしかしたらルーファスは太陽の血筋に反応して、自身が狂う可能性に行き着いた。なぜから、今カールの言葉がルーファスを苛んでいたのだ。

(ああ、うらやましい、太陽がただうらやましい)

そう考えた時、ルーファスはある恐ろしい仮説に行き着いていた。もしかしたらトリスも自身に対して似たような感覚を抱き行き過ぎたのではないかと。海狂いの話は聞いたことがないが、そもそも海の国とは月の国と違う狂気を持ち合わせていたのかもしれない。そしてそれを隠していたのだと。

しかし、ヨミの呪いでそれが別の形で酷くなり明るみに出た。そう考えるとこの狂おしいまでの狂気はどこからきたのか、そう考えかけてルーファスは現実に戻る。

(それより、まずはレミリアの体を取り戻すのが先だ。狂気については全て片付いてからでも遅くないはずだ)

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