90 / 143
第五章:真実の断片と
82.太陽の皇太子と不幸令嬢
しおりを挟む
「初めまして、レミリア嬢」
そう声をかけてきた人を見た瞬間だった。レミリアの中にあった何かが溶けたのは。その人はレミリアと同じ黒い髪に黄金の瞳、そして浅黒い健康的な肌の色をしたその男性、サンソレイユ帝国の皇太子であるカールに出会った瞬間、レミリアはただ立ち尽くした。
その人をレミリアは知らない。会ったこともない。それなのにいままでずっとレミリアが抱えていた絶望を払拭してくれるようなそんなものをその人は持っていた。
(間違いない、この人は私の血のつながりのある人だ)
その顔立ちが、髪の色が、目の色が、全てがレミリアにどこか似ている。今までの家族、母親以外の家族に感じたことのないその親近感に思わず涙が頬を伝っていった。
「貴方は……サンソレイユ帝国の方ですね」
「そんな他人行儀にしないでほしい。私はサンソレイユ帝国の皇太子カール。君の従兄弟だ」
まるで太陽というような微笑みだった。その微笑みにレミリアも思わず笑いかける。それはいままでの無理やりの笑顔ではない本当の笑顔だった。
(ふたつの太陽……)
その様子を見つめていたルーファスは憧憬にも似た気持ちを抱いた。自分が持ちえない明るさがそこにはあった。太陽のような裏表のない笑顔。
「カール殿下、お会いできてとても光栄でございます」
「だから、他人行儀はやめておくれ。君は私達の家族だ」
「……ありがとうございます」
そう言って、何の他意もなくカールはレミリアを抱きしめた。あたたかい手だった。とてもあたたかいそれは陽だまりのようでレミリアは一瞬躊躇したが、最終的にその背を抱きしめた。
ー離れ離れだった家族の再会。
まさにそんな風にルーファスには思えた。何故ならカールは、レミーナの父親の太陽の国の皇帝の生まれ変わりだったから。
(今生の父からは愛を貰えなかったレミリアが、前世の父から愛を貰う、ひどく悲しい話だ)
今生でのふたりは父娘ではなく、従兄弟だ。それでもサンソレイユ帝国では大切な家族としてレミリアは体を取り戻せばかの国で大切にされること、健全な幸せを掴めるだろうことがその時ルーファスには分かってしまった。
ルーファスの側にいるよりも輝くだろうレミリアのことを想像していた。
(それでも僕はレミリアを……)
完全なエゴだと分かっている。それでも体を取り戻したとしてもレミリアを手放すことがルーファスには難しいと感じた。
「ルーファス殿下、此度は我々の大切な家族であるレミリアを保護頂き感謝している」
そう声をかけてきた人を見た瞬間だった。レミリアの中にあった何かが溶けたのは。その人はレミリアと同じ黒い髪に黄金の瞳、そして浅黒い健康的な肌の色をしたその男性、サンソレイユ帝国の皇太子であるカールに出会った瞬間、レミリアはただ立ち尽くした。
その人をレミリアは知らない。会ったこともない。それなのにいままでずっとレミリアが抱えていた絶望を払拭してくれるようなそんなものをその人は持っていた。
(間違いない、この人は私の血のつながりのある人だ)
その顔立ちが、髪の色が、目の色が、全てがレミリアにどこか似ている。今までの家族、母親以外の家族に感じたことのないその親近感に思わず涙が頬を伝っていった。
「貴方は……サンソレイユ帝国の方ですね」
「そんな他人行儀にしないでほしい。私はサンソレイユ帝国の皇太子カール。君の従兄弟だ」
まるで太陽というような微笑みだった。その微笑みにレミリアも思わず笑いかける。それはいままでの無理やりの笑顔ではない本当の笑顔だった。
(ふたつの太陽……)
その様子を見つめていたルーファスは憧憬にも似た気持ちを抱いた。自分が持ちえない明るさがそこにはあった。太陽のような裏表のない笑顔。
「カール殿下、お会いできてとても光栄でございます」
「だから、他人行儀はやめておくれ。君は私達の家族だ」
「……ありがとうございます」
そう言って、何の他意もなくカールはレミリアを抱きしめた。あたたかい手だった。とてもあたたかいそれは陽だまりのようでレミリアは一瞬躊躇したが、最終的にその背を抱きしめた。
ー離れ離れだった家族の再会。
まさにそんな風にルーファスには思えた。何故ならカールは、レミーナの父親の太陽の国の皇帝の生まれ変わりだったから。
(今生の父からは愛を貰えなかったレミリアが、前世の父から愛を貰う、ひどく悲しい話だ)
今生でのふたりは父娘ではなく、従兄弟だ。それでもサンソレイユ帝国では大切な家族としてレミリアは体を取り戻せばかの国で大切にされること、健全な幸せを掴めるだろうことがその時ルーファスには分かってしまった。
ルーファスの側にいるよりも輝くだろうレミリアのことを想像していた。
(それでも僕はレミリアを……)
完全なエゴだと分かっている。それでも体を取り戻したとしてもレミリアを手放すことがルーファスには難しいと感じた。
「ルーファス殿下、此度は我々の大切な家族であるレミリアを保護頂き感謝している」
0
お気に入りに追加
432
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい
棗
恋愛
婚約者には初恋の人がいる。
王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。
待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。
婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。
従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。
※なろうさんにも公開しています。
※短編→長編に変更しました(2023.7.19)
人生の全てを捨てた王太子妃
八つ刻
恋愛
突然王太子妃になれと告げられてから三年あまりが過ぎた。
傍目からは“幸せな王太子妃”に見える私。
だけど本当は・・・
受け入れているけど、受け入れられない王太子妃と彼女を取り巻く人々の話。
※※※幸せな話とは言い難いです※※※
タグをよく見て読んでください。ハッピーエンドが好みの方(一方通行の愛が駄目な方も)はブラウザバックをお勧めします。
※本編六話+番外編六話の全十二話。
※番外編の王太子視点はヤンデレ注意報が発令されています。
虐げられた令嬢は、姉の代わりに王子へ嫁ぐ――たとえお飾りの妃だとしても
千堂みくま
恋愛
「この卑しい娘め、おまえはただの身代わりだろうが!」 ケルホーン伯爵家に生まれたシーナは、ある理由から義理の家族に虐げられていた。シーナは姉のルターナと瓜二つの顔を持ち、背格好もよく似ている。姉は病弱なため、義父はシーナに「ルターナの代わりに、婚約者のレクオン王子と面会しろ」と強要してきた。二人はなんとか支えあって生きてきたが、とうとうある冬の日にルターナは帰らぬ人となってしまう。「このお金を持って、逃げて――」ルターナは最後の力で屋敷から妹を逃がし、シーナは名前を捨てて別人として暮らしはじめたが、レクオン王子が迎えにやってきて……。○第15回恋愛小説大賞に参加しています。もしよろしければ応援お願いいたします。
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
拝啓、許婚様。私は貴方のことが大嫌いでした
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【ある日僕の元に許婚から恋文ではなく、婚約破棄の手紙が届けられた】
僕には子供の頃から決められている許婚がいた。けれどお互い特に相手のことが好きと言うわけでもなく、月に2度の『デート』と言う名目の顔合わせをするだけの間柄だった。そんなある日僕の元に許婚から手紙が届いた。そこに記されていた内容は婚約破棄を告げる内容だった。あまりにも理不尽な内容に不服を抱いた僕は、逆に彼女を遣り込める計画を立てて許婚の元へ向かった――。
※他サイトでも投稿中
記憶を失くした代わりに攻略対象の婚約者だったことを思い出しました
冬野月子
恋愛
ある日目覚めると記憶をなくしていた伯爵令嬢のアレクシア。
家族の事も思い出せず、けれどアレクシアではない別の人物らしき記憶がうっすらと残っている。
過保護な弟と仲が悪かったはずの婚約者に大事にされながら、やがて戻った学園である少女と出会い、ここが前世で遊んでいた「乙女ゲーム」の世界だと思い出し、自分は攻略対象の婚約者でありながらゲームにはほとんど出てこないモブだと知る。
関係のないはずのゲームとの関わり、そして自身への疑問。
記憶と共に隠された真実とは———
※小説家になろうでも投稿しています。
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる