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第五章:真実の断片と
80.月の国と太陽の国と不幸令嬢02
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「レミリア、それはダメだ、君は精神体だからもしもこのムーンティア王国から出たら、この間も一瞬消えかけた……だから」
「そうね、でも私は、サンソレイユ帝国へ行きたい。私のおばあ様とお母様の祖国。そしておじい様のいらっしゃるその国へ……」
レミリアはそれが我儘であることは分かっていた。それでも、どうしても夢の中に現れた優しい人、今まで出会ったことのない父親のような、本当の家族がいるとしたらサンソレイユ帝国にいるのではないかと思っていた。
それすらも哀れな妄想かもしれない、それでも、レミリアは彼等に会ってみたいと今回のことがあってからずっと思っていた。
「それでも、君を危険に晒すことはできない」
ルーファスは頑なに首を振る。それも当然のことだ。もしも精神体が滅んでしまえば、肉体が生きていても二度と目を覚ませない。それは死んでしまうことと変わりないのだから。
「命に危険があるの知っているわ。それでも私は……」
「あの……」
ふたりのやりとりを聞いていたヨミが言いづらそうに口を挟んだ。
「なんだ」
「それなら、サンソレイユ帝国の方々に来て頂くことにしたらいかがでしょうか??元々、あちらからこちらに来る予定もございましたし、状況は変わりましたがあちらの方々もレミリア姫にお会いしたいと思っているでしょうし、快諾されると思いますよ」
ニコニコとしてヨミはレミリアを見た。なるほど、助け船を出してくれたらしい。レミリアにとってヨミはよくわからない存在ではあるが、今回はとてもその行動に助かった。
「もし、それが可能なら私はサンソレイユ帝国の人達に会いたいわ」
「……わかった。まずは打診してみよう」
それから、一旦ヨミがサンソレイユ帝国へ赴いてその話をしに行くということになった。門から出て行ったヨミを見送り、久しぶりにふたりきりになる。
「ねぇ、ルー。私貴方に確認したいことがあるの」
「レミーナのこと??それなら君が納得するまでいくらでも話すよ」
儚げという言葉が似合うような美しい、そして偽りのない笑みをルーファスは浮かべた。本当にルーファスは美しい人だとレミリアはしみじみ思った。
「違うわ。そのこともまだ分からないことはあるけれど、私が気になったのは……彼女の遺骸を見る原因になった人、あのヨミに似た男の人は国王様??」
その言葉にルーファスの顔がみるみる青ざめていく。
「レミリア、君は父上を見たのか??」
「多分、あの人がそうなら、霊廟に入り浸っている方よね」
レミリアの言葉にみるみるルーファスの顔色が青ざめていった。そして、とても悲し気にこう答えた。
「そうだね、父上だろう。この国は時を止めてしまった。そのせいで同じ1日を同じ状態で繰り返している。父上は丁度「月狂い」を発症した状態で止まってしまっているんだよ」
「そうね、でも私は、サンソレイユ帝国へ行きたい。私のおばあ様とお母様の祖国。そしておじい様のいらっしゃるその国へ……」
レミリアはそれが我儘であることは分かっていた。それでも、どうしても夢の中に現れた優しい人、今まで出会ったことのない父親のような、本当の家族がいるとしたらサンソレイユ帝国にいるのではないかと思っていた。
それすらも哀れな妄想かもしれない、それでも、レミリアは彼等に会ってみたいと今回のことがあってからずっと思っていた。
「それでも、君を危険に晒すことはできない」
ルーファスは頑なに首を振る。それも当然のことだ。もしも精神体が滅んでしまえば、肉体が生きていても二度と目を覚ませない。それは死んでしまうことと変わりないのだから。
「命に危険があるの知っているわ。それでも私は……」
「あの……」
ふたりのやりとりを聞いていたヨミが言いづらそうに口を挟んだ。
「なんだ」
「それなら、サンソレイユ帝国の方々に来て頂くことにしたらいかがでしょうか??元々、あちらからこちらに来る予定もございましたし、状況は変わりましたがあちらの方々もレミリア姫にお会いしたいと思っているでしょうし、快諾されると思いますよ」
ニコニコとしてヨミはレミリアを見た。なるほど、助け船を出してくれたらしい。レミリアにとってヨミはよくわからない存在ではあるが、今回はとてもその行動に助かった。
「もし、それが可能なら私はサンソレイユ帝国の人達に会いたいわ」
「……わかった。まずは打診してみよう」
それから、一旦ヨミがサンソレイユ帝国へ赴いてその話をしに行くということになった。門から出て行ったヨミを見送り、久しぶりにふたりきりになる。
「ねぇ、ルー。私貴方に確認したいことがあるの」
「レミーナのこと??それなら君が納得するまでいくらでも話すよ」
儚げという言葉が似合うような美しい、そして偽りのない笑みをルーファスは浮かべた。本当にルーファスは美しい人だとレミリアはしみじみ思った。
「違うわ。そのこともまだ分からないことはあるけれど、私が気になったのは……彼女の遺骸を見る原因になった人、あのヨミに似た男の人は国王様??」
その言葉にルーファスの顔がみるみる青ざめていく。
「レミリア、君は父上を見たのか??」
「多分、あの人がそうなら、霊廟に入り浸っている方よね」
レミリアの言葉にみるみるルーファスの顔色が青ざめていった。そして、とても悲し気にこう答えた。
「そうだね、父上だろう。この国は時を止めてしまった。そのせいで同じ1日を同じ状態で繰り返している。父上は丁度「月狂い」を発症した状態で止まってしまっているんだよ」
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