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第四章:太陽の国と皇太子

66.その頃の月の国と不幸令嬢

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「……殿下、サンソレイユ帝国から良くない報せが入りました」

そうあからさまに疲れたようなヨミの様子にルーファスは胸騒ぎがした。

「レミーに何かあったのか?」

丁度、先ほどレミリアと別れて私室に戻ろうとしていたところだったのもあり、ルーファスは怪訝な態度を一切崩さずに聞いた。

「そうです。レミリア姫君の体がさらわれたと……」

「犯人は?大方、海の国、今はアトラス王国の王子の仕業だろう」

酷く冷たい声で問うたルーファスにヨミは思わず苦笑した。分かってはいるがどれほど年月がが経とうがルーファスの中でトリス王子のトラウマが消えることはない。だからこそ、今回の件でも真っ先にそこを疑ったようだ。

(まぁ、私もほぼそこで間違いないと思うが……)

「一応まだ、不明とのことですが、元々アトラス王国から嫁いできた姫である皇帝の妃のひとりが関係しているようです」

「なら、やはりまちがいなくあの国のゲスな王子の仕業だ。あいつにレミリアの体を好きにされるのは嫌だ。何としても取り返さないと……」

「殿下、落ち着いてください。むやみに動くと前回の二の舞になりますよ」

「……そうだな。あんなことに度と繰り返してなるものか」

ルーファスが忌々し気に表情を歪めた。あれから長い月日の繰り返しの中で以前よりずっとルーファスの力は強いものになっていた。けれどだからといって油断は禁物だ。

「そうです。それに今回はサンソレイユ帝国からもとても良い打診がきています」

「打診?」

聞き返したルーファスを見てにんまりとヨミが笑う。

「無抵抗のムーンティア王国をアトラス王国が攻撃しているとの報告を受けた。同盟国としてそれが事実なら解決のために手助けをしたいとのことです」

(それはつまり……)

サンソレイユ帝国もアトラス王国には思うところがあるのだろう。もちろん今の彼等がレミーナを覚えている訳ではないが、今の皇太子の魂を見た時、彼の中に前世の悔恨の念がこびりついているのがわかった。記憶があるわけではないが、愛娘を殺してしまった自身の判断を悔いているかの魂は、今生ではなんとしても悲劇を未然に防ぐための手助けをしてくれるだろう。

「……ならば、再度サンソレイユ帝国ともう一度話合いを行い今後の方針を決めよう」

「ですね。それについて再度かの国へ打診いたします」

今度こそ、何があっても彼女を守りたい、そのためならなんでもできるとルーファスは再度誓った。
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