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第四章:太陽の国と皇太子
58.太陽の国と月の国と不幸令嬢02
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「そうですね、その話もしなければいけません。今サンソレイユ帝国の皆様と話している我々は精神体なのです」
そう言われたが、カールにはピンとこなかった。それは他のサンソレイユの人々も同じようだった。精神体についてはオカルトとしては理解している。霊体というか霊魂のような存在のはずだ。
「それはどのような意味でしょうか」
「……我々の国はもう魔法で時を止めて幾千年と同じ日を繰り返しております。その関係で我々は本来ムーンティア王国より出ることができません。国自体が異空間にあると考えていただけると分かりやすいです。そのため中に入れること同様に外に出ることにも条件が必要なのです」
「つまり外に簡単には出れないと?」
「はい。そのため、我々は肉体を置いて今は精神体の状態で外へ出てきています」
到底信じがたい話ではあったが、カールは今目の当たりにしているふたりの様子からそれが嘘ではないということが分かった。
「その件と、レミリアの精神だけがそちらにいるというのは似たような状況ということだろうか?」
「そうです。逆のことが起きたというべきですね。ただ、本来であれば肉体ごとこちらへ無事に来る予定でした。しかし」
「アトラスの王子がレミリアを引っ張ったため中途半端に別れてしまったということか」
「その通りです」
そう頷いてカールを見つめたルーファスは憎々し気な表情を一瞬したのが分かった。彼にとってそれは想定外の事態でかつ苛立っているということがわかった。
「なるほど。我々は古にあなた方の国と約束をしている。もしも次に貴方達が我々の元に生まれてた「太陽の娘」を花嫁に求めた場合、それを受け入れると。国同士の約束を違えることはこちらとて望まない。しかし、私には気になることがある」
勤めてカールは冷静に話ながら、使者ふたりの様子を見つめていた。その言葉には特に動じている様子はない。
(こちらがこれからする話についても多少なりと予測していたのかもしれないな……)
「どのようなことでしょうか」
今まで受け答えをしていた、ルーファスではなく、その側近だと名乗った男がはじめて口火を開いた。カールは彼を妙な気配のする男だなと思ったがそのまま続けた。
「私達にとってレミリアは血のつながった家族だ。そのレミリアが望むならば我々はその結婚を全力で後押ししたい。しかし、もしもレミリアが望まないのであれば……」
そう言われたが、カールにはピンとこなかった。それは他のサンソレイユの人々も同じようだった。精神体についてはオカルトとしては理解している。霊体というか霊魂のような存在のはずだ。
「それはどのような意味でしょうか」
「……我々の国はもう魔法で時を止めて幾千年と同じ日を繰り返しております。その関係で我々は本来ムーンティア王国より出ることができません。国自体が異空間にあると考えていただけると分かりやすいです。そのため中に入れること同様に外に出ることにも条件が必要なのです」
「つまり外に簡単には出れないと?」
「はい。そのため、我々は肉体を置いて今は精神体の状態で外へ出てきています」
到底信じがたい話ではあったが、カールは今目の当たりにしているふたりの様子からそれが嘘ではないということが分かった。
「その件と、レミリアの精神だけがそちらにいるというのは似たような状況ということだろうか?」
「そうです。逆のことが起きたというべきですね。ただ、本来であれば肉体ごとこちらへ無事に来る予定でした。しかし」
「アトラスの王子がレミリアを引っ張ったため中途半端に別れてしまったということか」
「その通りです」
そう頷いてカールを見つめたルーファスは憎々し気な表情を一瞬したのが分かった。彼にとってそれは想定外の事態でかつ苛立っているということがわかった。
「なるほど。我々は古にあなた方の国と約束をしている。もしも次に貴方達が我々の元に生まれてた「太陽の娘」を花嫁に求めた場合、それを受け入れると。国同士の約束を違えることはこちらとて望まない。しかし、私には気になることがある」
勤めてカールは冷静に話ながら、使者ふたりの様子を見つめていた。その言葉には特に動じている様子はない。
(こちらがこれからする話についても多少なりと予測していたのかもしれないな……)
「どのようなことでしょうか」
今まで受け答えをしていた、ルーファスではなく、その側近だと名乗った男がはじめて口火を開いた。カールは彼を妙な気配のする男だなと思ったがそのまま続けた。
「私達にとってレミリアは血のつながった家族だ。そのレミリアが望むならば我々はその結婚を全力で後押ししたい。しかし、もしもレミリアが望まないのであれば……」
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