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第四章:太陽の国と皇太子

55.太陽の家族と不幸令嬢

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「陛下、レミリアが目覚めない原因が分かりました」

「まことか、よくやったなカール」

カールが皇帝である祖父の元を訪れて、報告をすると皇帝はとても嬉しそう手を叩いた。サンソレイユ帝国では感情を隠すことはあまり好まれない。感情を抑えるべき時は抑えるが、特に喜びの感情は特に表現するべきものとされていた。

カールにとって祖父とは憧れの存在であった。皇太子に選ばれた際に、祖父のような立派な皇帝になると誓いを立てた。そのために、厳しい教育も、剣術の腕も磨いてきた。

それでもまだ届かないほどに今代の皇帝は偉大だった。そして、輝かしい功績を持つ現皇帝が唯一、心を曇らせるのが、美しく哀れな孫娘であるレミリアのことだ。

だからこそ、目を覚ます糸口があるならばきっと全力で力を貸してくれるだろう。それは皇帝だけではなく太陽の家族全てが。

ハーレムというと他国からはあまり好まれない場合もあるようだが、サンソレイユ帝国にとってそれはもっとも大切な文化であった。そして、その家族は母親が異なろうが、兄弟姉妹であり、また妻同士もお互いに牽制しあうのではなく協力しあい国を盛り立てる姉妹のような絆で結ばれている。

「ありがとうございます。原因はレミリアはかの国の花嫁に見初められたそうなのです」

「ムーンティア王国か……しかし、だとしたら何故眠ったままなのだ?」

「アトラス王国の王子ともみ合いになった際に、肉体と精神が分離してしまったそうです。そのためムーンティア王国からはレミリアのためにまずその状態を解消するための話し合いがしたいとのとでした」

「ついにムーンティア王国が動くのだな……。あの国は長きに渡り他の国との国交を断裂させてきた国。しかし、あの国には魔法使いがいる。そして、我々は魔法の恩恵を受けてきた、実に興味深いことだ」

「しかし、それにあたり気になることがございます」

「アトラス王国のことだな、一応はレミリアはかの国の国籍を持ち、現在療養のために預かっているということにはなっている。無駄に騒いでいるかの国の王子に見舞いをさせないのは、具合が芳しくないと理由付けして追い払っているが……」

そこで皇帝は深いため息をついた。こんなことになるくらいならば、以前無理やりにでも孫娘が「太陽の娘」で会った時点で問答無用でサンソレイユ帝国の王族に迎え入れるべきであったと。

アトラス王国の国のものであるという事実がある時点で、レミリアの体が元に戻った際に返還を求められるのはわかっていた。そのため、ある手筈を整えようとはしていた。

「レミリアをサンソレイユ帝国の王族に迎え入れたいことをレミリアの生家には直接打診する考えでおります」

王家にこの話を持ち掛ければややこしくなることは間違いない。しかし、そもそもアトラス王国はレミリアが「太陽の娘」でかつムーンティア王国から求められた存在であることすら隠して、自国の王族に嫁がせて自身の国の利益を優先しようとしていた。

その時点で、交渉の余地など考えていない。

「その際に、レミリアの親族についてもサンソレイユ帝国へ亡命を許すことも必ず付け加えるように」
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