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第四章:太陽の国と皇太子

54.太陽の国の言い伝えと不幸令嬢

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それからしばらく太陽の国ではありとあらゆる手段で、検査が行われたがレミリアは毒の効果がとうに失われているのに目覚めていないということが判明した。

つまり原因の糸口が全くわからないということだった。それには流石にカールもどうすべきかとレミリアを見つめながら考えていた。

(あまりかかわりにはなりたくないがやはり一度海の国の人間に確認すべきだろうか……)

しかし、レミリアを追ってきた婚約者の王子はどうもまともでないようにカールには思えた。

「太陽狂い」に罹患しているとは聞いていたが、まさかそれがあれほどに人を執着に搔き立てるのだとしたら恐ろしいことだ。

「太陽狂い」については太陽の国の人間にも知られていた。元々、海の国の人間が古の太陽の姫君を殺害したことにより罹ったとされる病で、サンソレイユの皇族に執着を起こす人間が定期的に生まれてくるというものだ。

この病に罹患した海の国の姫君ならばカールは何人も見たことがあった。父のハーレムにひとり、祖父のハーレムにふたり。彼女たちはとても美しく慈悲深い女性で情熱的に父や祖父を愛していた。

家族として接していても、他の妻たちのように執着心を持っているようには見えなかった。しかし、あのクリストファーという王子はレミリアに対して異常ともとれる執着が見てとれた。

そんな人間をカールは今は安全に静かに眠る大切な家族に、会わせたくはないがきっとレミリアの話を聞くならば会わせろといわれることが目に見えていた。

一応、ダメ元でムーンティア王国にこの件についての書状を送る。関係ない可能性が高いし、かの国は他国との交流を避けているので何の連絡もないかもしれないと考えていたが意外にあっさりと返事が届いた。

『レミリア姫は古の盟約により我が国に花嫁として迎え入れる。ただ、邪魔が入り現在は魂のみがこちらにある状態であるため、一度話し合いをしたい』

その言葉にカールは、太陽の国に伝わるおとぎ話を思い出す。

太陽の国にそれはそれは美しいお姫様が生まれた。本来は月の国の王子様に嫁ぐはずが、月の国の王子様が病気になったため海の国の王子様へ嫁いだ。海の国の王子様は嫉妬深く、太陽のお姫様が他の男と浮気をしたと嫉妬してついには刺し殺してしまった。

その話を、病気の治った月の王子様が聞いて、嘆き悲しみ月の国を閉ざしてしまう。その一途な愛情に胸を打たれた当時の太陽の王が月の国と約束をする。

月の国から次に太陽の姫を花嫁にと打診が来た場合は今度こそ嫁がせようと。

「レミリアが見初められたというのか……」

いままで数は少ないが何度か太陽の姫が生まれても打診はなかった。それなのに……

(なぜよりによってレミリアなのだろう)

そう思ったが、これが打診であるならば、約束は果たされるべきだ。ただ、それはレミリアの意思をしっかりと確認してからの話だともカールは思った。

(彼女が望まなかったその時は……)
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