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第三章:恋獄の国と悲しいおとぎ話

41.前世の物語と不幸令嬢(ルーファス視点)15

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足音がして身構えたが、今回訪れたのはトリスではなかった。

それは見たことのない男だった。どうやら彼はしゃべれないらしいが手紙を渡して、その場を立ち去ってしまった。

(あの男は一体……)

気になりながらもその手紙を読むことにした。上質の紙に書かれたそれを開いた、それは慣れ親しみ見間違えるはずのない、レミーナからの手紙だった。

「親愛なるルーファス様

あの日、攫われた私の元へあなたが現れた時、すぐに海の国の者が貴方を介抱するためと連れて行きましたが、私はあの時、その者達を止めるべきだったと後悔しております。

なんとか太陽の国へ戻った私は、海の国の者が貴方を攫ったという事実を海の国の国王陛下にも突きつけましたが、そのような事実はないとされてしまいました。

映像石があったことも思い出して、そちらも確認しましたが、不自然に石は壊れていて映像を復旧することもできませんでした。そのせいで証拠が不十分とされてしまい未だにそれがとても悔しいです。間違いなく貴方をあいつらが攫ったのに。考えると腸が煮えくり返ります。

それでも私は貴方をあきらめることはできませんでした。そして、丁度良くトリスから結婚の打診がありました。私は当然トリスに関しては親戚程度の感情しかありません。

それはトリスも同じはずです。なので結婚したからといってそういう関係にはならないはずだと思いました。父上は反対しましたが、海の国へ自身で乗り込むにはこれ以上の妙案が浮かびませんでした。

父上は結婚の条件の中に白い結婚の場合は無条件で離縁を行える条項を盛り込む形でこの作戦に同意してくれました。また、私が間違っても傷物になどならないように沢山の太陽の国の使徒も潜りこませました。

しかし、トリスは私を襲おうとします。それについてはどうやら貴方が目を覚ました時に貴方と私が決して結ばれないということを示したいからのようですが何とか夜は城のあらゆる部屋に隠れたり太陽の国の者を使い撹乱して逃げています。

最近気づきましたが、トリスは貴方に対して恋心を抱いているようです。昔からトリスは「月の国のお姫様」と結婚したいと居もしない女性への想いを拗らせていたのは知っていました。

沢山の女性に手を出したのもそのお姫様より素敵な人を見つけて彼女を忘れたいということだったらしいのですが、結局その幻影のお姫様より好きになれる人がいなかったと、嘆いていると親類から聞いたことがありました。

あれはてっきり彼の完全な妄想だと思っていましたが、まさかお姫様でなくルーファス様のことだったなんて。

けれど、私はここに誓えます。どんなことがあろうとルーファス様への想いは変らないと。そしてそのために私は今日も貴方に捧げるための純潔を守り続けていると。


この手紙が貴方に届いたなら、私の願いが結実した証拠です。必ずふたりでここから抜け出しましょう。そして今度こそあなたと私が夫婦となりましょう。

愛をこめて レミーナ」

その内容に思わず涙が零れた。僕がレミーナを想っていたようにレミーナも僕を想っていてくれていたこと。ただ、僕のせいでレミーナが危険にさらされているという事実にとにかくしっかりしなければと自身を奮い立たせる。

(トリスに見つからないように隠さないとな……)

手紙を隠すための場所を探そうとした時、足音がこちらへむかぅているのに気付いた。もしトリスだとまずい。

仕方なく僕はベッドの布団の下にそれを一時的に隠した。

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