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第三章:恋獄の国と悲しいおとぎ話

40.前世の物語と不幸令嬢(ヨミ視点(ルーファスの護衛))03

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「ルーファス殿下、そちらはいかがですか?」

『最低だ』

不機嫌にそう返した殿下は、とても声色から疲れていることがうかがえた。

「海の国は殿下に何か酷いことをしているのですか?」

『海の国がではなく王太子が僕を監禁している』

その言葉に以前考えた最悪の想定が頭を過った。

「まさか、何故ですか?トリス王太子は……まさか殿下に懸想していたのですか?」

『何故それがわかった?正直僕はここでこの状態になるまであの男がこんなことをするなんて思っても考えてもいなかった』

「……だとしたら殿下気を付けてください。この話を殿下にするか迷いましたが海の国ではなぜかたまに月の国の者に異常な執着をする存在が現れる場合があります」

それは遠い昔、兄神に執着するあまりその妻を殺した弟神の血を色濃く受け継いだ者。月の国の『月狂いルナティック』ばかりが取り沙汰されあまり語られないが確実に海の国の王族を蝕んでいる狂気。それは月の国の王族に異常なまでに執着しそのために破滅すらいとわず略奪、拉致をするという恐ろしいもの。歴代の月の国の王族の失踪に関わることだが月の国ではそれはついぞ知れていなかった。

しかし、海の国に密偵を放ち分かった。海の国にはとある建物があるその名は『キヅタの塔』と呼ばれていて、離宮に併設されている。

名前の通りキヅタの蔓に覆われたその塔には昔、海の神がかけた魔法封じの呪文がかかっているという。その塔に海の国の王族はたまに誰かを囲うことがあり、その塔で囲われれる人は決して表に出すことができない、秘密の恋人で国家的な公然の秘密扱いらしい。

公然の秘密ということは海の国の人間なら大半が知っているが決して話にのぼらない。その塔に閉じ込められる人物は海の国の王族の最愛の存在であるが本来なら決して結ばれない身分または公にできない人だと言われている。

最愛というのはこの塔を覆うキヅタに由来する。キヅタの花言葉は『永遠の愛』『破錠のない結婚』そして『死んでも離れない』であり、どれもが恐ろしいまでの執念を表していた。

『ヨミの言う通り異常な執着をあいつは見せている。あいつ僕のことをなんて呼んでいると思う?だ。気持ちが悪い』

「あの、聞きにくいですがそれ以外直接的な被害はありませんか?」

そう聞くと少し黙ってから殿下はとても疲れたように、

『今のところはない。ただ……いつその一線を越えてこようとするかわからない。少なくとも後2日は猶予があるが、そこにきたら、あいつは僕を問答無用で手籠めにする気だ』

「手籠めなんて……本気ですか?ルーファス殿下が綺麗でも男だと分かるだろうに……」

『だろう。だから僕は一刻も早くここから出てレミーナを救いたいんだ。ブルームーンのタイミングより少しでも早めることはできないか??』

「前も言いましたがそれは難しいです。しかし、今の状況はルーファス殿下に消えないトラウマを植え付けかねない最悪の事態なのでなるべくどうにか、例えば密偵を送り先にその場所から別の場所へ移動できないかとかを考えます」

一応密偵を使い、なんとかルーファス殿下を移動することだけでもできれば作戦の成功率も上がる。

『ありがとう。すまない、足音がする』

「また、後ほどご連絡いたします」

そう言って通信を切ったが不安が募る。大切な殿下に何かあったらと思うと気が気ではない。取り急ぎ海の国にいる使いに通信を送る。

『キヅタの塔』にいるだろうルーファス殿下の救出へ向かうようにと。
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