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第三章:恋獄の国と悲しいおとぎ話
38.前世の物語と不幸令嬢(ルーファス視点)13
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「レミーナはどうしているだろうか……」
ひとりになると考えることはレミーナのことばかりだった。自身の軽率な行動でよりによってトリスに嫁がされてしまったなんて、いくら考えても夢であってほしい現実だ。
しかし、あの太陽の皇帝が娘をトリスに嫁がされたのも信じがたい。
トリスは確かに海の国の王太子ではあるが女癖が酷いことは他国にも知れていた。レミーナはとても魅力的な女性だ。太陽の国の貴族を嫁ぎ先にだってできたはずだ。例え求婚がなされてもあの皇帝陛下なら愛娘を苦労すると分かるようなところへ嫁がせるはずがない。
太陽の皇族は僕の目から見てもとても健全だった。誰かが病むこともなく、皇帝はまさに太陽であり、全てを照らす偉大なる神の化身のようだ。
それはその家族も同じで、ハーレム制度で一夫多妻制であるがその全ての妻と子供を平等に愛するのが皇帝の努めであった。誰かひとりだけを偏った寵愛などせず全ての妻を子どもを太陽の光のように愛するその姿は僕には真似することはできない。
そして、固い絆で結ばれたかの家族は母親が違う兄弟でも実の兄弟のように親しく、沢山の家族が団結して国と皇帝を支えている。
その中で唯一例外なのが『太陽の娘』である。皇帝の血族には女性がほぼ生まれない。しかしごく稀に生まれる『太陽の娘』は太陽の国を創造し、この世界そのものを作った最高にして至高の女神であるテンテル神の化身とされる。テンテル神は月の神、海の神の姉であり最も力を持った神だったと言われている。
その偉大なる女神の再来である『太陽の娘』はかの国の宝であり、その婚約者は慎重に選ばれる。だからどう考えてもトリスのところに嫁がせた事実が奇妙でならなかった。
(もしかしたら何かしらの計画が動いている可能性もあるかもしれない)
そう考えて思考をまとめていた時だった。
『ルーファス殿下、ご無事ですか?』
脳内にいきなり声が響いた。それはヨミの声だった。
「ヨミ?」
『そうです。これは魔法で通信しています。やはり海の国にいらっしゃいましたか』
「そうだ、どうにかここから出たいが、あいにく僕は今自分ひとりで歩くことができない。魔法が使えれば状況は変わるが……」
『なるほど。だとしたら、3日後までお待ちいただけますか?』
3日後と言えばトリスが掲示した、僕がトリスのものになるか否かを答える期限の日だ。出来ればそれ以前が望ましい。
「それより早くはできないか?」
『……月の力が足りません。3日後は月の力が最も強くなる満月、それもブルームーンの夜です。そのタイミングなら私が転移魔法を使用して、そちらに乗り込み、貴方と囚われているであろうレミーナ姫を連れて。再度月の国へ戻ることができます』
「転移魔法は反動がでかい。ヨミでも片道で魔力が尽きるだろう」
僕のように眠られたら困る。しかしヨミは何故かそれに関して一言答えた。
『それは問題ありません。ただ、今すぐには難しいですが……それまでなんとか待っていてください』
「しかし……」
ヨミに話しかけようとした時こちらへ向かう足音が聞こえた。トリスだろう。咄嗟に僕は黙った。
『3日後必ず……』
そこで声が途切れた。そしてそれとほぼ時を置かずにドアが開いた。想像通り、そこにはトリスがいつもの笑みを浮かべて立っていた。
ひとりになると考えることはレミーナのことばかりだった。自身の軽率な行動でよりによってトリスに嫁がされてしまったなんて、いくら考えても夢であってほしい現実だ。
しかし、あの太陽の皇帝が娘をトリスに嫁がされたのも信じがたい。
トリスは確かに海の国の王太子ではあるが女癖が酷いことは他国にも知れていた。レミーナはとても魅力的な女性だ。太陽の国の貴族を嫁ぎ先にだってできたはずだ。例え求婚がなされてもあの皇帝陛下なら愛娘を苦労すると分かるようなところへ嫁がせるはずがない。
太陽の皇族は僕の目から見てもとても健全だった。誰かが病むこともなく、皇帝はまさに太陽であり、全てを照らす偉大なる神の化身のようだ。
それはその家族も同じで、ハーレム制度で一夫多妻制であるがその全ての妻と子供を平等に愛するのが皇帝の努めであった。誰かひとりだけを偏った寵愛などせず全ての妻を子どもを太陽の光のように愛するその姿は僕には真似することはできない。
そして、固い絆で結ばれたかの家族は母親が違う兄弟でも実の兄弟のように親しく、沢山の家族が団結して国と皇帝を支えている。
その中で唯一例外なのが『太陽の娘』である。皇帝の血族には女性がほぼ生まれない。しかしごく稀に生まれる『太陽の娘』は太陽の国を創造し、この世界そのものを作った最高にして至高の女神であるテンテル神の化身とされる。テンテル神は月の神、海の神の姉であり最も力を持った神だったと言われている。
その偉大なる女神の再来である『太陽の娘』はかの国の宝であり、その婚約者は慎重に選ばれる。だからどう考えてもトリスのところに嫁がせた事実が奇妙でならなかった。
(もしかしたら何かしらの計画が動いている可能性もあるかもしれない)
そう考えて思考をまとめていた時だった。
『ルーファス殿下、ご無事ですか?』
脳内にいきなり声が響いた。それはヨミの声だった。
「ヨミ?」
『そうです。これは魔法で通信しています。やはり海の国にいらっしゃいましたか』
「そうだ、どうにかここから出たいが、あいにく僕は今自分ひとりで歩くことができない。魔法が使えれば状況は変わるが……」
『なるほど。だとしたら、3日後までお待ちいただけますか?』
3日後と言えばトリスが掲示した、僕がトリスのものになるか否かを答える期限の日だ。出来ればそれ以前が望ましい。
「それより早くはできないか?」
『……月の力が足りません。3日後は月の力が最も強くなる満月、それもブルームーンの夜です。そのタイミングなら私が転移魔法を使用して、そちらに乗り込み、貴方と囚われているであろうレミーナ姫を連れて。再度月の国へ戻ることができます』
「転移魔法は反動がでかい。ヨミでも片道で魔力が尽きるだろう」
僕のように眠られたら困る。しかしヨミは何故かそれに関して一言答えた。
『それは問題ありません。ただ、今すぐには難しいですが……それまでなんとか待っていてください』
「しかし……」
ヨミに話しかけようとした時こちらへ向かう足音が聞こえた。トリスだろう。咄嗟に僕は黙った。
『3日後必ず……』
そこで声が途切れた。そしてそれとほぼ時を置かずにドアが開いた。想像通り、そこにはトリスがいつもの笑みを浮かべて立っていた。
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