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67:様々な可能性
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「話は終わりですか??妹はまだ病み上がりですし、この場にはアレクサンドル殿下が療養されているので、あまり無理をさせたくありません」
完全に猫を被っていた口調ですべてを打ち切ろうとしたリアム。そんなリアムの耳元にイグニスは何は小さく囁いていた。残念ながらそれはリアムにしか聞こえなかったのだろう。その顔がみるみる青ざめていく。
「そうだね。今回はここくらいにしておこうか。裏切り者も可愛い子もまたすぐ会える」
意味深な言葉を残すとそのまま砂になり消えてしまった、まるでこの間の女、イザベラのように……。
「リアム殿のいう通り、一旦解散しましょう。私は、アレクサンドル殿下のことがございますので伝令だけでも飛ばしてまいります」
クリスはそう言って、その場を離れた。その後に、ファハド殿下も立ち去り部屋の中は眠っているヤンデル殿下、ルキヤン、そしてリアムと私の4人になった。
「……リアム殿、あのイグニスという獣人とは初めて会ったのではないようですね」
ルキヤンが相変わらず微笑みながらけれど断定的な口調で言った。私の知っているルキヤンはもっと晴れやかな子だったのに何が変えてしまったのかずっと最近闇が深い。
「ええ。彼とは知り合いです」
「どんな知り合いなのかな??」
ルキヤンの質問に、リアムは黙り込んでしまった。その様子にルキヤンの黒さが増していく。
「答えないつもりですか??リアム殿、先ほどの話を聞くとリアム殿は嫌悪剤の件で一番怪しいと個人的に感じたのです」
「違います!!リアムが嫌悪剤に関わる訳ありません!!」
思わず声を張り上げて否定していた。けれど、私は自身の失態を悟る。
「ベアトリーチェ嬢、何故兄であるリアム殿を呼びつけにしたのですか、もしかしてリアム殿、実の兄上でないと知っているのですか??」
墓穴を掘った。そう思った時だった。
「ははは、バレてしまったら仕方ない。僕とマイ・プリンセスは、婚約者ふたりより仲良しだからね。それ故にフルネームでふたりの時は呼び合っていたんだよ。素敵だろう」
また、ブラコン設定を生やされたが今回は、一応助けてくれているので黙っていることにする。しかし、ルキヤンはそれに対して嘲笑するような笑みを作った。
「確かにふたりは仲良しです。けれどそれは兄妹としてでしょうか??僕は別に構わないのですよ。ふたりがどんな関係でも。リアム殿の正体は既に分かっているので。ただ、それとリアム殿を嫌悪剤の件で、疑っているのは別問題なんです。もしリアム殿がこの国を巻き込んで悪いことをするようなことがあるならば、僕は大切な人のために貴方を止める必要がありますから」
「……ルキヤン殿下、僕はイグニスとある契約をしているのです。ただどのような契約をしているかについてはここでは話せませんし、死んでも話すつもりはありません。けれど僕がマイ・プリンセスを陥れることだけはない。そう断言しましょう」
真っすぐにルキヤンを見つめている顔には普段のおちゃらけた雰囲気はない。
「わかりました。一旦は信じます。よく考えたらリアム殿にも影はついているのでそう滅多なことはできないはずですからね。それより……」
ルキヤンが何かを伝えようとした時、今まで寝ていたアレクサンドル殿下が起き上がったのが分かった。
「……何かとても重要な話をしているようだね」
「はい。兄上が寝ている間に色々ありましたから」
冷たい空気を背負いながらも微笑んでいるルキヤン。ヤンデル殿下は真顔でそれをしばらく見てからため息をついた。
「だろうな。僕はベベを庇えたことだけで誇らしいが、あの魔法を使った女は捕まらないのだろう??」
「ええ。隣国の蛇神の獣人の一族、「呪い」を使う一族の女と判明しましたが、足取りが追えません」
その言葉に、ヤンデル殿下は深く頷いた。そして、何気なしに言葉を続けた。
「しかし、「呪い」が使えるのになぜわざわざ禁止魔法を使ったのだろう。「呪い」を使った方がどう考えても効率がよさそうだと思うが……」
「確かに。何故いちいち禁止魔法を使ったのか??そこに何らかの思惑があったのかもしれない」
難しい顔になる、ヤンデル殿下とルキヤンに、リアムが復活してとても軽い調子で言った。
「単純に「呪い」が使えなかったのかなと僕は思いました。あの女は養子なのでしょう??ならば蛇の獣人の力の一部しか使えない、または全くの部外者である可能性もあると思うんです」
完全に猫を被っていた口調ですべてを打ち切ろうとしたリアム。そんなリアムの耳元にイグニスは何は小さく囁いていた。残念ながらそれはリアムにしか聞こえなかったのだろう。その顔がみるみる青ざめていく。
「そうだね。今回はここくらいにしておこうか。裏切り者も可愛い子もまたすぐ会える」
意味深な言葉を残すとそのまま砂になり消えてしまった、まるでこの間の女、イザベラのように……。
「リアム殿のいう通り、一旦解散しましょう。私は、アレクサンドル殿下のことがございますので伝令だけでも飛ばしてまいります」
クリスはそう言って、その場を離れた。その後に、ファハド殿下も立ち去り部屋の中は眠っているヤンデル殿下、ルキヤン、そしてリアムと私の4人になった。
「……リアム殿、あのイグニスという獣人とは初めて会ったのではないようですね」
ルキヤンが相変わらず微笑みながらけれど断定的な口調で言った。私の知っているルキヤンはもっと晴れやかな子だったのに何が変えてしまったのかずっと最近闇が深い。
「ええ。彼とは知り合いです」
「どんな知り合いなのかな??」
ルキヤンの質問に、リアムは黙り込んでしまった。その様子にルキヤンの黒さが増していく。
「答えないつもりですか??リアム殿、先ほどの話を聞くとリアム殿は嫌悪剤の件で一番怪しいと個人的に感じたのです」
「違います!!リアムが嫌悪剤に関わる訳ありません!!」
思わず声を張り上げて否定していた。けれど、私は自身の失態を悟る。
「ベアトリーチェ嬢、何故兄であるリアム殿を呼びつけにしたのですか、もしかしてリアム殿、実の兄上でないと知っているのですか??」
墓穴を掘った。そう思った時だった。
「ははは、バレてしまったら仕方ない。僕とマイ・プリンセスは、婚約者ふたりより仲良しだからね。それ故にフルネームでふたりの時は呼び合っていたんだよ。素敵だろう」
また、ブラコン設定を生やされたが今回は、一応助けてくれているので黙っていることにする。しかし、ルキヤンはそれに対して嘲笑するような笑みを作った。
「確かにふたりは仲良しです。けれどそれは兄妹としてでしょうか??僕は別に構わないのですよ。ふたりがどんな関係でも。リアム殿の正体は既に分かっているので。ただ、それとリアム殿を嫌悪剤の件で、疑っているのは別問題なんです。もしリアム殿がこの国を巻き込んで悪いことをするようなことがあるならば、僕は大切な人のために貴方を止める必要がありますから」
「……ルキヤン殿下、僕はイグニスとある契約をしているのです。ただどのような契約をしているかについてはここでは話せませんし、死んでも話すつもりはありません。けれど僕がマイ・プリンセスを陥れることだけはない。そう断言しましょう」
真っすぐにルキヤンを見つめている顔には普段のおちゃらけた雰囲気はない。
「わかりました。一旦は信じます。よく考えたらリアム殿にも影はついているのでそう滅多なことはできないはずですからね。それより……」
ルキヤンが何かを伝えようとした時、今まで寝ていたアレクサンドル殿下が起き上がったのが分かった。
「……何かとても重要な話をしているようだね」
「はい。兄上が寝ている間に色々ありましたから」
冷たい空気を背負いながらも微笑んでいるルキヤン。ヤンデル殿下は真顔でそれをしばらく見てからため息をついた。
「だろうな。僕はベベを庇えたことだけで誇らしいが、あの魔法を使った女は捕まらないのだろう??」
「ええ。隣国の蛇神の獣人の一族、「呪い」を使う一族の女と判明しましたが、足取りが追えません」
その言葉に、ヤンデル殿下は深く頷いた。そして、何気なしに言葉を続けた。
「しかし、「呪い」が使えるのになぜわざわざ禁止魔法を使ったのだろう。「呪い」を使った方がどう考えても効率がよさそうだと思うが……」
「確かに。何故いちいち禁止魔法を使ったのか??そこに何らかの思惑があったのかもしれない」
難しい顔になる、ヤンデル殿下とルキヤンに、リアムが復活してとても軽い調子で言った。
「単純に「呪い」が使えなかったのかなと僕は思いました。あの女は養子なのでしょう??ならば蛇の獣人の力の一部しか使えない、または全くの部外者である可能性もあると思うんです」
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