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40:天使たち(マクシム・ガルマショフ公爵視点)
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そんなことを考えていることが見透かされたらしく、それからしばらくして姉である正妃から呼び出された。
僕の母は、僕を生んですぐに、亡くなった。そのため父は僕を嫌い遠ざけるようにしていた。そんな僕にとって、姉は母親のような存在だった。
年が離れていたこともあるが、姉が居なければ僕は愛情に飢えた子供になってしまったかもしれないし、ルキヤンをちゃんと愛してあげることもできない叔父になっていたかもしれない。
そのこともあり、姉には頭が上がらない。僕が姉の呼び出しに答えて王城へ行くと、以前より少しやつれた様子の姉がそれでも王妃として凛とした姿で座っているのが分かった。
「よくぞ参られましたね、ガルマショフ公爵」
「お久しぶりでございます、王妃様」
僕が臣下の礼をとると、姉は首を左右に振る。
「いいのです、今日は臣下として呼んだのではなく、弟として呼んだのです」
澄んだ蒼い瞳が慈愛に満ちた色を称えている。姉は黒い髪に青い瞳をした美しい人だ。そして、陛下は赤い瞳をされていた。そのため、ルキヤンは間違いなくふたりの息子であり、忌子などと言われることは本来ならおかしい。
「わかりました、レイカ姉様」
「マックス、貴方がルキヤンのために動いていることはわかっております」
姉はそう言って、手元にあった鮮やかな紫色のお茶を口にした。異国のお茶らしく最近姉が気に入っているという話は聞いていた。
「しかし、今動くのは得策ではないのです。陛下は貴方を警戒しております」
「義兄上が……そうでしょう。しかし側妃様はルキヤンを、貴方の息子で私の甥っ子に惨たらしい仕打ちをしております」
普段はあまり感情的にはならないがその時は抑えるのが困難なほど、感情が溢れてしまっていた。しかし、姉は左右に首を振るととても辛そうにこう告げた。
「わかっております、ルキヤン、私がお腹を痛めて生んだ愛しい我が子、本当はそんなこと見過ごしたくはありません。しかし、忌子の伝承に符合している以上、覆すことができないのです。それを覆してしまうと、陛下が私を番として唯一無二に扱う根拠も薄れてしまうのですから……」
姉は、現陛下の番であり正妃になった。しかし、陛下は姉が番であると知るまで婚約者でありながら冷遇していたことは裏では有名な話だった。
しかし、姉が番であるということが判明してからは、今までの態度が嘘のように、陛下は姉を大切にするようになった。陛下にとってそれほどまでに伝承やしきたりは大切なのだと知った瞬間だった。
子宝に恵まれなかったため、側妃を設けた時から姉はまた自身がないがしろにされるのではないかと恐れた。無理もない、番だと分かるまでの間、姉は散々陛下にないがしろにされて学生時代にいたってはエスコートさぇされなかったのだから。
その度に傷つく姉を見て来た僕としては、姉が陛下を愛していなければクーデターでも起こしてやりたい気分である。
「分かりました……もう少し出方を考えます」
何とかそう答えたものの、正直1秒でも早くルキヤンを救いたかった。
そんな時に、この粘着ストーカーみたいな不審な手紙が届いた。
(正直、不審でしかないが、むしろ不審すぎて何が起こるか知りたくなるな)
それに何かあっても、大半のことはどうにかひとりで出来るので、久しぶりに少しわくわくしながら、部屋で待っていた。
すると、少し奇妙なことが起きた。時計が止まったのだ。
魔導式時計は、持ち主の魔力に反応して動くので供給者の僕が居る以上は常に動くはずなのだけれど。そう考えて首を傾げていると、子供ふたりの声が聞こえてきた。
「いや、絶対に居ないわよ」
「むしろ、あんな面白い手紙貰ったら興味本位で居るかもしれないよ」
「はっ??あの気持ち悪いストーカーみたいな手紙もらって??私ならあの手紙を燃やした上で部屋中に護衛を配備するレベルよ」
「ええ、まぁ護衛が居ても僕の魔法の影響で動けないけどね」
「ははは、そこだけはすごいわよね。認めてあげるわ」
(なんだろう、婚約者かなにかなのかな??とても親し気に話しているが……)
その声の主が、部屋の扉を開けた。そこには、金色の髪に青い瞳の少年と、それより幼い銀髪に紫の瞳の少女が手を繋いで入ってきた。
「「うわぁあああ、いた!!」」
何故かとても驚いているようだった。
(この子たちは……確か、あの女の子はアレクサンドル殿下の婚約者だったか……)
その髪の色と瞳の色は現在、この国では彼女とその母親くらいしかいないのですぐにわかった。では、この少年は誰だろう。
僕は彼の顔を見た。その瞬間……何故か涙が零れた。
「ええええ。僕ら公爵様泣かせたの!!えっ、嘘、なんかすごいね」
「いや、あれよ絶対ゴミが目にはいっただけよ」
(知らないはずだ、けれどこの子はまるで……)
姉はルキヤンの前にひとり身ごもっていたが、その子は流産してしまった。そのショックもありしばらく子供ができなかった。
生きていたら15歳のその子。どんな髪の色や目の色をしていたかは分からない。けれど、この目の前の少年は姉と僕のように美しい蒼い瞳と、陛下のような黄金を切り出したような髪をしていた。そして、顔立ちは姉上に生き写しのように似ている。
(時計も止まっているし、もしかしてこの子たちは……)
「あ、あの、えっとですね。僕は怪しいものではありません。フフフフフ、イタッ!!もっと踏んでください、マイ・クイーン」
「嫌よ。不審者。笑うのはやめなさい」
「君たちは……天使なのか??」
僕の母は、僕を生んですぐに、亡くなった。そのため父は僕を嫌い遠ざけるようにしていた。そんな僕にとって、姉は母親のような存在だった。
年が離れていたこともあるが、姉が居なければ僕は愛情に飢えた子供になってしまったかもしれないし、ルキヤンをちゃんと愛してあげることもできない叔父になっていたかもしれない。
そのこともあり、姉には頭が上がらない。僕が姉の呼び出しに答えて王城へ行くと、以前より少しやつれた様子の姉がそれでも王妃として凛とした姿で座っているのが分かった。
「よくぞ参られましたね、ガルマショフ公爵」
「お久しぶりでございます、王妃様」
僕が臣下の礼をとると、姉は首を左右に振る。
「いいのです、今日は臣下として呼んだのではなく、弟として呼んだのです」
澄んだ蒼い瞳が慈愛に満ちた色を称えている。姉は黒い髪に青い瞳をした美しい人だ。そして、陛下は赤い瞳をされていた。そのため、ルキヤンは間違いなくふたりの息子であり、忌子などと言われることは本来ならおかしい。
「わかりました、レイカ姉様」
「マックス、貴方がルキヤンのために動いていることはわかっております」
姉はそう言って、手元にあった鮮やかな紫色のお茶を口にした。異国のお茶らしく最近姉が気に入っているという話は聞いていた。
「しかし、今動くのは得策ではないのです。陛下は貴方を警戒しております」
「義兄上が……そうでしょう。しかし側妃様はルキヤンを、貴方の息子で私の甥っ子に惨たらしい仕打ちをしております」
普段はあまり感情的にはならないがその時は抑えるのが困難なほど、感情が溢れてしまっていた。しかし、姉は左右に首を振るととても辛そうにこう告げた。
「わかっております、ルキヤン、私がお腹を痛めて生んだ愛しい我が子、本当はそんなこと見過ごしたくはありません。しかし、忌子の伝承に符合している以上、覆すことができないのです。それを覆してしまうと、陛下が私を番として唯一無二に扱う根拠も薄れてしまうのですから……」
姉は、現陛下の番であり正妃になった。しかし、陛下は姉が番であると知るまで婚約者でありながら冷遇していたことは裏では有名な話だった。
しかし、姉が番であるということが判明してからは、今までの態度が嘘のように、陛下は姉を大切にするようになった。陛下にとってそれほどまでに伝承やしきたりは大切なのだと知った瞬間だった。
子宝に恵まれなかったため、側妃を設けた時から姉はまた自身がないがしろにされるのではないかと恐れた。無理もない、番だと分かるまでの間、姉は散々陛下にないがしろにされて学生時代にいたってはエスコートさぇされなかったのだから。
その度に傷つく姉を見て来た僕としては、姉が陛下を愛していなければクーデターでも起こしてやりたい気分である。
「分かりました……もう少し出方を考えます」
何とかそう答えたものの、正直1秒でも早くルキヤンを救いたかった。
そんな時に、この粘着ストーカーみたいな不審な手紙が届いた。
(正直、不審でしかないが、むしろ不審すぎて何が起こるか知りたくなるな)
それに何かあっても、大半のことはどうにかひとりで出来るので、久しぶりに少しわくわくしながら、部屋で待っていた。
すると、少し奇妙なことが起きた。時計が止まったのだ。
魔導式時計は、持ち主の魔力に反応して動くので供給者の僕が居る以上は常に動くはずなのだけれど。そう考えて首を傾げていると、子供ふたりの声が聞こえてきた。
「いや、絶対に居ないわよ」
「むしろ、あんな面白い手紙貰ったら興味本位で居るかもしれないよ」
「はっ??あの気持ち悪いストーカーみたいな手紙もらって??私ならあの手紙を燃やした上で部屋中に護衛を配備するレベルよ」
「ええ、まぁ護衛が居ても僕の魔法の影響で動けないけどね」
「ははは、そこだけはすごいわよね。認めてあげるわ」
(なんだろう、婚約者かなにかなのかな??とても親し気に話しているが……)
その声の主が、部屋の扉を開けた。そこには、金色の髪に青い瞳の少年と、それより幼い銀髪に紫の瞳の少女が手を繋いで入ってきた。
「「うわぁあああ、いた!!」」
何故かとても驚いているようだった。
(この子たちは……確か、あの女の子はアレクサンドル殿下の婚約者だったか……)
その髪の色と瞳の色は現在、この国では彼女とその母親くらいしかいないのですぐにわかった。では、この少年は誰だろう。
僕は彼の顔を見た。その瞬間……何故か涙が零れた。
「ええええ。僕ら公爵様泣かせたの!!えっ、嘘、なんかすごいね」
「いや、あれよ絶対ゴミが目にはいっただけよ」
(知らないはずだ、けれどこの子はまるで……)
姉はルキヤンの前にひとり身ごもっていたが、その子は流産してしまった。そのショックもありしばらく子供ができなかった。
生きていたら15歳のその子。どんな髪の色や目の色をしていたかは分からない。けれど、この目の前の少年は姉と僕のように美しい蒼い瞳と、陛下のような黄金を切り出したような髪をしていた。そして、顔立ちは姉上に生き写しのように似ている。
(時計も止まっているし、もしかしてこの子たちは……)
「あ、あの、えっとですね。僕は怪しいものではありません。フフフフフ、イタッ!!もっと踏んでください、マイ・クイーン」
「嫌よ。不審者。笑うのはやめなさい」
「君たちは……天使なのか??」
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