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26:何を言っても聞かない人達と気遣いの出来る玄関マット
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「そう」
思った以上に冷たい声が出てしまった。その私の様子に何を感じたかはわからないがリアムが心配そうな顔をしている。キラキラが半減しているのとやつれているのも有り、いつもみたいに玄関マットとしてではなくひとりの人間として向き合えた。
それに、夢の中で助けようとした人の声が少しリアムっぽい気もした。人は声から忘れ、香りを最後まで覚えいると聞いたことがある。夢で聞いた声だから全くあてにはならないのだけれど。
「マイ・クイーン。正直、何度も君を不幸にしてきたカスティアリャ子爵家への罰としては軽すぎると僕は思っている。しかし、隣国の貴族である以上、親戚筋でも手出しが表立ってできないということが浮き彫りになったね」
ずっと凹んで見えた、リアムのキラキラが割と復活している。そして妙に『表立って』の部分に力がこもっているようだった。逆に言えば裏からなら手を回せるということだろう。
「なるほど。では裏から手を回すということかしら??」
「一応、今回の件があったから、カスティアリャ子爵家への当家からの援助は全てなしになったし、慰謝料を要求しているところだよ。後は、この件で君の伯父様である公爵様もご立腹でね。カスティアリャ子爵家への情けで貸していたお金について全額返済を求めたようだよ。こうなってくると貴族でもなく、平民となった彼らがどうやってそれだけの大金を払うのかは見物だね」
すごく良い笑顔をしている。いつも足を踏まれた時に見せるタイプの性的なのではなく、すごくさわやかにキラキラしながら言っている。その姿だけ見れば王子様っぽくもある。断罪はされそう感は拭えないけれど。
「それなら、もうカスティアリャ子爵家自体が我々を害することはできないわね。でもどうして、そんな嫌がらせをしたのかしら……」
そもそも、カスティアリャ子爵家というか叔母は母の婚約者を奪ってその報いで国外へ追放されて平民になるところをカスティアリャ子爵に見初められて結婚したと聞いている。
つまり、そもそも身から出た錆なのに嫌がらせを受ける意味が分からない。それについてリアムが大きくため息をついた。
「あのね、この世界には話が通じない、全て人のせいに平気でする人種というのが少なからず存在する。君の叔母さんはそういう人だったんだよ。元々、現陛下の兄と君の母上は婚約者だったのに、君の叔母が彼を誘惑してね、婚約を破談にしたのに、何も悪かったなんて思っていなかった。むしろ婚約者を繋ぎ留められないのが悪いを言っていたそうだ。けれど当然そんなことをして許されることはなかった。罪の報いを受けただけなのにそれについて全て君の母上のせいにするような人なんだよ。表向きは和解したように見えただろうけれど、ずっと君の母上を彼女は逆恨みしていたし、君にも危害を加えようとしていた」
「やっぱり。私もそうだとは思っていたのよ」
エリザベスの母親である叔母。私の私物を盗んだり泣いて欲しがるような娘の歪んだ性格を諫めることのないその姿に私も違和感を感じていたし、常に張り付けたような笑顔がとても気持ち悪いから嫌いな人だった。
だから、父は叔母への援助を拒絶したし、伯父も最低限の援助以外は拒んだのだろう。それでも妹に援助を続けたお人良しの姉である母をずっと裏切りながらせせら笑っていたのかと思うと寒気がした。
そしてその叔母の行いと、自身を番と偽りヤンデル殿下を凋落して私を殺そうとした前の時間軸のエリザベスが重なった気がした。
叔母が駒とした現皇帝陛下の兄上、現侯爵様は、評判を聞く限りあまり賢い人ではないらしい。しかし、これがもしヤンデル殿下のように賢い人物だったなら、私は生まれてすらいなかったかもしれない。
「ただ、彼らはとても執念深いから今後も注意は必要だし、放免後どうなったかについてはヤンデル殿下にも進言したけど監視は怠らないようにしてもらうつもりだよ」
「手際が良いわね。リアム、私は……」
マクシム・ガルマショフ公爵に会いたいと話そうとした時、再び頭痛が襲ってきて思わず蹲る。
「まだ、目が覚めたばかりだから無理をしてはいけないね」
時計の音と共にまた、時が動き出したらしい。
「お嬢様、お水をお持ちいたしました」
「ありがとう」
相変わらず頭は痛かったが、喉が渇いていたのでそれを一気に流し込むように飲んだ。すると不思議と痛みが緩和された。もしかしたら脱水症状もあったのかもしれない。
「喉が渇かれていたのですね、まだありますので」
メイは空になったコップに水差しから水を注いでくれたので、今度はゆっくりと飲み干した。すると不思議と今まで感じなかった空腹まで思い出したようでお腹が音を立てた。
「マイ・プリンセスはお腹を空かせているようだね。何か食べたいものはあるかな??」
「桃缶……あ、えっとシャーベットが食べたいわ」
うっかり前世の記憶から、口にした言葉を急いで訂正する。この世界には桃缶はもちろんない。
「うーん、桃缶は準備できないけれど、桃のゼリーは実はあるんだよ。メイ、持ってきておくれ」
てきぱきと指示する姿にはリアムのくせに妙に気品をあり腹が立つ。
けれど、彼のおかげで今まで見えなかったものが徐々に本来の姿を現しているのだから素直に感謝しよう。
「ありがとう」
思った以上に冷たい声が出てしまった。その私の様子に何を感じたかはわからないがリアムが心配そうな顔をしている。キラキラが半減しているのとやつれているのも有り、いつもみたいに玄関マットとしてではなくひとりの人間として向き合えた。
それに、夢の中で助けようとした人の声が少しリアムっぽい気もした。人は声から忘れ、香りを最後まで覚えいると聞いたことがある。夢で聞いた声だから全くあてにはならないのだけれど。
「マイ・クイーン。正直、何度も君を不幸にしてきたカスティアリャ子爵家への罰としては軽すぎると僕は思っている。しかし、隣国の貴族である以上、親戚筋でも手出しが表立ってできないということが浮き彫りになったね」
ずっと凹んで見えた、リアムのキラキラが割と復活している。そして妙に『表立って』の部分に力がこもっているようだった。逆に言えば裏からなら手を回せるということだろう。
「なるほど。では裏から手を回すということかしら??」
「一応、今回の件があったから、カスティアリャ子爵家への当家からの援助は全てなしになったし、慰謝料を要求しているところだよ。後は、この件で君の伯父様である公爵様もご立腹でね。カスティアリャ子爵家への情けで貸していたお金について全額返済を求めたようだよ。こうなってくると貴族でもなく、平民となった彼らがどうやってそれだけの大金を払うのかは見物だね」
すごく良い笑顔をしている。いつも足を踏まれた時に見せるタイプの性的なのではなく、すごくさわやかにキラキラしながら言っている。その姿だけ見れば王子様っぽくもある。断罪はされそう感は拭えないけれど。
「それなら、もうカスティアリャ子爵家自体が我々を害することはできないわね。でもどうして、そんな嫌がらせをしたのかしら……」
そもそも、カスティアリャ子爵家というか叔母は母の婚約者を奪ってその報いで国外へ追放されて平民になるところをカスティアリャ子爵に見初められて結婚したと聞いている。
つまり、そもそも身から出た錆なのに嫌がらせを受ける意味が分からない。それについてリアムが大きくため息をついた。
「あのね、この世界には話が通じない、全て人のせいに平気でする人種というのが少なからず存在する。君の叔母さんはそういう人だったんだよ。元々、現陛下の兄と君の母上は婚約者だったのに、君の叔母が彼を誘惑してね、婚約を破談にしたのに、何も悪かったなんて思っていなかった。むしろ婚約者を繋ぎ留められないのが悪いを言っていたそうだ。けれど当然そんなことをして許されることはなかった。罪の報いを受けただけなのにそれについて全て君の母上のせいにするような人なんだよ。表向きは和解したように見えただろうけれど、ずっと君の母上を彼女は逆恨みしていたし、君にも危害を加えようとしていた」
「やっぱり。私もそうだとは思っていたのよ」
エリザベスの母親である叔母。私の私物を盗んだり泣いて欲しがるような娘の歪んだ性格を諫めることのないその姿に私も違和感を感じていたし、常に張り付けたような笑顔がとても気持ち悪いから嫌いな人だった。
だから、父は叔母への援助を拒絶したし、伯父も最低限の援助以外は拒んだのだろう。それでも妹に援助を続けたお人良しの姉である母をずっと裏切りながらせせら笑っていたのかと思うと寒気がした。
そしてその叔母の行いと、自身を番と偽りヤンデル殿下を凋落して私を殺そうとした前の時間軸のエリザベスが重なった気がした。
叔母が駒とした現皇帝陛下の兄上、現侯爵様は、評判を聞く限りあまり賢い人ではないらしい。しかし、これがもしヤンデル殿下のように賢い人物だったなら、私は生まれてすらいなかったかもしれない。
「ただ、彼らはとても執念深いから今後も注意は必要だし、放免後どうなったかについてはヤンデル殿下にも進言したけど監視は怠らないようにしてもらうつもりだよ」
「手際が良いわね。リアム、私は……」
マクシム・ガルマショフ公爵に会いたいと話そうとした時、再び頭痛が襲ってきて思わず蹲る。
「まだ、目が覚めたばかりだから無理をしてはいけないね」
時計の音と共にまた、時が動き出したらしい。
「お嬢様、お水をお持ちいたしました」
「ありがとう」
相変わらず頭は痛かったが、喉が渇いていたのでそれを一気に流し込むように飲んだ。すると不思議と痛みが緩和された。もしかしたら脱水症状もあったのかもしれない。
「喉が渇かれていたのですね、まだありますので」
メイは空になったコップに水差しから水を注いでくれたので、今度はゆっくりと飲み干した。すると不思議と今まで感じなかった空腹まで思い出したようでお腹が音を立てた。
「マイ・プリンセスはお腹を空かせているようだね。何か食べたいものはあるかな??」
「桃缶……あ、えっとシャーベットが食べたいわ」
うっかり前世の記憶から、口にした言葉を急いで訂正する。この世界には桃缶はもちろんない。
「うーん、桃缶は準備できないけれど、桃のゼリーは実はあるんだよ。メイ、持ってきておくれ」
てきぱきと指示する姿にはリアムのくせに妙に気品をあり腹が立つ。
けれど、彼のおかげで今まで見えなかったものが徐々に本来の姿を現しているのだから素直に感謝しよう。
「ありがとう」
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