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22:変態竜神が語ったこの世界の繰り返しの話
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「滅びを繰り返す……何度も世界が滅んでいる??」
『そうだね、僕は時を司っているから今まで結構な回数を、美しい世界のために使ってきたのだけれど』
とそう言えばリアムもやり直しの前に言っていた。
私は前の時間軸の記憶しかないがどうやらこの世界は何度も失敗を繰り返しているらしい。
つまり私を含めてこの世界は何度も何度も繰り返しているということだ。
実感はないが、何度も同じことを繰り返しては、滅んでいるという事実を神のような存在に告げられてショックを受けた。
そんな私に「僕も一応、時を司る神寄りの魔術師なんだけど」と勝手に心を読んだらしい玄関マットが囁いているが聞こえない。アレはただの玄関マットであり魔術師かもしれないが神とは思えないから。
「ああ、けれど今度こそは未来を変えられるかもしれない。リアムもやっと力を使えるようになったから……。けれど、さっきのふざけた予言にもあったように獣には……」
ルキア様がとても心配そうに何かを告げようとした時だった。
眩い光が突然に生まれて人型を形成して、ルキア様の側に現れた。
「あああ、ティラもとい、僕の大切な奧さん。なんで何も言わないでこっちに来ちゃったの??」
そう言って、いきなりルキア様に光から現れた人が抱き着いた。完全なる痴漢行為である。
その痴漢は、行動こそ最低だが顔はルキア様にも負けないくらいに美しく黒髪に金色の瞳をしている。
どことなく顔立ちがヤンデル殿下に似ているような気がする痴漢にスリスリされてルキア様の周りの空気が冷たくなる。
「……ちっ」
聖母と言われているルキア様がすごい嫌そうな顔で舌打ちをした。物凄くよく響くタイプの舌打ちで思わず二度見したが、何故か痴漢は幸せそうにしている。
その幸せそうな顔は玄関マットの魔術師が足を踏まれた時にするのに似ているなと考えながら観察していると、はぁはぁしながら一旦ルキア様から離れた痴漢は、オロオロしているリアムと軽蔑の眼差しを向けている私の近くまでやってきた。
「竜神様、それはいくら夫婦でも痴漢行為なのでやめた方が良いかと」
リアムが信じがたいくらい、常識的な発言をした。多分これは自分より上の変態を見たせいで、冷静になり真人間化する現象だろう。
「ひよこたんだって、僕は大好きな奧さんから離れたくないんだもん。でもひよこたんの横にいる子、いいね。とても良い目をしている。僕を虫けらか何かを見るように見下すその感じ、はぁはぁ。うん。若き日の奧さんにそっくりだ彼女は良い女王様になるだろう」
外観が本当に綺麗でも気持ち悪いものは気持ち悪いんだなと、再確認したところでどうやら彼が、例の『予言の書』を書いた竜神様らしい。
そんな神話の住人があっさり目の前に現れたら本来は焦るのだろうけど、あまりに変態過ぎてドン引きしているのでそういう感情は一切消えていて、人間相手のように話かけることができた。
「竜神様、この世界は滅び続けているというのは、私が処刑されるような悪夢をずっと繰り返しているということですか??」
「うん。そうだよ。今まで一度もあの未来はこの状態になって覆ったことがないんだよね」
あっさりと、事実を明かすと私の隣のリアムを竜神様が意味深な笑顔で見ながらこう続けた。
「元々、この世界はもっと違う物語を持っていたんだ。けれどその物語の中で最愛の人を断罪したり傷付け続けないといけない役割を担っていた子がいた。けれど彼は、最愛の人を傷つけたくないと強く願い続けた結果、願いが叶い物語から消失した。正確にはメインキャラクターじゃなくなったんだ。自分がいなくなることでこの世界は平和になると思ったんだろうね。
けれど、その子の退場でより世界は混沌としてしまった。それがこの一度も成功していない世界だよ。世界は狂ったシナリオをどうにかするために、新しいシナリオを生んだけどそれにより不利益を被ることになった者が、何度も何度も世界を壊している、そう竜の花嫁を欲している獣がね」
先ほどまで痴漢およびに変態っぽいことをしていた存在と同じとは思えなかった。そして、その言葉を聞いた時に私はあの奇妙な夢を思い出していた。
「あの獣って……」
私が、竜神様にさらに聞こうとした瞬間、眩い光が竜神様とルキア様を包み込んだ。
「ああ、テイラノたんもう帰ろう。ねぇふたりのスィートタイムの途中で居なくなるのはダメだよ。もう僕耐えられないんだ、はぁはぁ」
「……チッ。可愛い末裔に力を少し貸してあげたかったのに、時間切れか。リアム、そしてベアトリーチェ嬢。獣に気をつけなさい」
ひとりははぁはぁ言いながら、もうひとりは心配げにとても美しい笑顔を最後に浮かべて消えてしまった。
慌ただしい退場した神様達の言葉を思い返しながら私にはリアムに聞くべきことがあった。
「……リアム、貴方はもしかしてこの世界が今の状態になる前のことも知っているのではないの??」
私の言葉にリアムは、いつものキラキラした笑顔ではなく、どこか悲し気な笑顔を浮かべた。
正直その表情の方が普段よりずっと良いのにと思ったが、今は心にとどめた。
『そうだね、僕は時を司っているから今まで結構な回数を、美しい世界のために使ってきたのだけれど』
とそう言えばリアムもやり直しの前に言っていた。
私は前の時間軸の記憶しかないがどうやらこの世界は何度も失敗を繰り返しているらしい。
つまり私を含めてこの世界は何度も何度も繰り返しているということだ。
実感はないが、何度も同じことを繰り返しては、滅んでいるという事実を神のような存在に告げられてショックを受けた。
そんな私に「僕も一応、時を司る神寄りの魔術師なんだけど」と勝手に心を読んだらしい玄関マットが囁いているが聞こえない。アレはただの玄関マットであり魔術師かもしれないが神とは思えないから。
「ああ、けれど今度こそは未来を変えられるかもしれない。リアムもやっと力を使えるようになったから……。けれど、さっきのふざけた予言にもあったように獣には……」
ルキア様がとても心配そうに何かを告げようとした時だった。
眩い光が突然に生まれて人型を形成して、ルキア様の側に現れた。
「あああ、ティラもとい、僕の大切な奧さん。なんで何も言わないでこっちに来ちゃったの??」
そう言って、いきなりルキア様に光から現れた人が抱き着いた。完全なる痴漢行為である。
その痴漢は、行動こそ最低だが顔はルキア様にも負けないくらいに美しく黒髪に金色の瞳をしている。
どことなく顔立ちがヤンデル殿下に似ているような気がする痴漢にスリスリされてルキア様の周りの空気が冷たくなる。
「……ちっ」
聖母と言われているルキア様がすごい嫌そうな顔で舌打ちをした。物凄くよく響くタイプの舌打ちで思わず二度見したが、何故か痴漢は幸せそうにしている。
その幸せそうな顔は玄関マットの魔術師が足を踏まれた時にするのに似ているなと考えながら観察していると、はぁはぁしながら一旦ルキア様から離れた痴漢は、オロオロしているリアムと軽蔑の眼差しを向けている私の近くまでやってきた。
「竜神様、それはいくら夫婦でも痴漢行為なのでやめた方が良いかと」
リアムが信じがたいくらい、常識的な発言をした。多分これは自分より上の変態を見たせいで、冷静になり真人間化する現象だろう。
「ひよこたんだって、僕は大好きな奧さんから離れたくないんだもん。でもひよこたんの横にいる子、いいね。とても良い目をしている。僕を虫けらか何かを見るように見下すその感じ、はぁはぁ。うん。若き日の奧さんにそっくりだ彼女は良い女王様になるだろう」
外観が本当に綺麗でも気持ち悪いものは気持ち悪いんだなと、再確認したところでどうやら彼が、例の『予言の書』を書いた竜神様らしい。
そんな神話の住人があっさり目の前に現れたら本来は焦るのだろうけど、あまりに変態過ぎてドン引きしているのでそういう感情は一切消えていて、人間相手のように話かけることができた。
「竜神様、この世界は滅び続けているというのは、私が処刑されるような悪夢をずっと繰り返しているということですか??」
「うん。そうだよ。今まで一度もあの未来はこの状態になって覆ったことがないんだよね」
あっさりと、事実を明かすと私の隣のリアムを竜神様が意味深な笑顔で見ながらこう続けた。
「元々、この世界はもっと違う物語を持っていたんだ。けれどその物語の中で最愛の人を断罪したり傷付け続けないといけない役割を担っていた子がいた。けれど彼は、最愛の人を傷つけたくないと強く願い続けた結果、願いが叶い物語から消失した。正確にはメインキャラクターじゃなくなったんだ。自分がいなくなることでこの世界は平和になると思ったんだろうね。
けれど、その子の退場でより世界は混沌としてしまった。それがこの一度も成功していない世界だよ。世界は狂ったシナリオをどうにかするために、新しいシナリオを生んだけどそれにより不利益を被ることになった者が、何度も何度も世界を壊している、そう竜の花嫁を欲している獣がね」
先ほどまで痴漢およびに変態っぽいことをしていた存在と同じとは思えなかった。そして、その言葉を聞いた時に私はあの奇妙な夢を思い出していた。
「あの獣って……」
私が、竜神様にさらに聞こうとした瞬間、眩い光が竜神様とルキア様を包み込んだ。
「ああ、テイラノたんもう帰ろう。ねぇふたりのスィートタイムの途中で居なくなるのはダメだよ。もう僕耐えられないんだ、はぁはぁ」
「……チッ。可愛い末裔に力を少し貸してあげたかったのに、時間切れか。リアム、そしてベアトリーチェ嬢。獣に気をつけなさい」
ひとりははぁはぁ言いながら、もうひとりは心配げにとても美しい笑顔を最後に浮かべて消えてしまった。
慌ただしい退場した神様達の言葉を思い返しながら私にはリアムに聞くべきことがあった。
「……リアム、貴方はもしかしてこの世界が今の状態になる前のことも知っているのではないの??」
私の言葉にリアムは、いつものキラキラした笑顔ではなく、どこか悲し気な笑顔を浮かべた。
正直その表情の方が普段よりずっと良いのにと思ったが、今は心にとどめた。
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