7 / 70
05:ブラコン設定を生やされて私は激怒した
しおりを挟む
「君が、ベアトリーチェ嬢か」
そう声を掛けてきた、私の憎き敵、もとい前世で散々地獄へ叩き落としてくれた男、今はまだ14歳の少年であるアレクサンドル殿下を私は見つめる。
沸き立つ様々な感情を全て殺して私は微笑む。
「はい、お目に掛かれて光栄でございます」
内心では「こいつから逃げられれば私は、幸せになる道もあるかもしれない」という本音を必死に隠しながら完璧な淑女の笑みを浮かべた。その顔をジッと見つめられているのが分かる。
(以前はこの辺りで微妙な顔されたんだよね。今回はどんな顔するんだ……)
軽い気持ちでその顔を見たことを後悔した。その顔は、なんだろう微妙だなというものではない、しかしなんかこう好感を持っているというものでもない。
一番近いのは「困惑」というような表情だった。
(これまた、パターン入ったかな……)
そんなことを考えていた時、前回全く盛り上がらなかったイベント開催の一声が掛かる。
「どうせならふたりでお茶でも飲んできなさい」
そう言って、庭にエスコートされてお茶を飲むというだけのミッションだが前回ここで全くと言って良いほど何ひとつ弾まなかったし、なんなら目も合わせてくれなかった。
「あの、ふたりきりでないとだめですか、その……」
そう口に出してから、特に何も考え無しだったので焦る。
「それは、僕とふたりが不満ということか」
不機嫌に返す、アレクサンドル殿下。それがどのような感情かはあまり分からないが不快そうなのは伝わる。誰が好き好んで針の筵お茶会をしないといけないのか、ましてや前世自身を殺そうとした相手と……。しかしそんなこと言えないのでわざとらしく恥ずかしそうな雰囲気で俯く。ここは恥ずかしいからとかゴネてお母様と一緒に行くなどしたい。そう考えていたのだけれど……。
「申し訳ありません、アレクサンドル殿下。僕の可愛い妹は、大好きな僕と片時でも離れると情緒不安定になってしまうのです、まだ幼いのでどうかお許しを」
危なくすごい顔で「はぁ??」っと言いかけた。なぜ私は、ブラコンキャラの設定を生やされたのか、私は激怒した。必ず、かのドM変態魔術師を痛めつけねばならぬと決意した。
思い立ったが吉日、見えないように強めにリアムの足を踏みつけた。しかし、何故か小声で「あっ」という妙に甘い声の後に「ありがとうございます、マイ・クイーン」と聞こえた気がするが悪い夢だろう。
「……なるほど、人見知りなのか。君は僕の番として王妃になるのだ、けれどまだ王妃教育もはじまっていないから今回は大目に見よう」
思わず「空耳かな」と思うワードが飛び出した。『君は僕の番として王妃になる』だと??前世この瞬間には間違いなく絶対口にしなかった台詞だった。
「ありがとうございます、アレクサンドル殿下」
無難にそう答えたのに、また少し困惑した顔になるアレクサンドル殿下。彼は一体私に何を感じているのかよく分からない。ただ、ひとつ言えるのは前回より幾分かマシということだろう。
そのまま、私は、アレクサンドル殿下にエスコートされながら、リアムも一緒について中庭に移動した。道中では何故か、アレクサンドル殿下はずっと兄を見つめていた。
もしかしたら新しい恋でもしたのかしらと腐ったことを考えてみたが、多分違う。それにドM変態魔術師×地獄への切符を送るマンな皇子のカップリングとか私は解釈違いなのでご勘弁願いたい。
しばらくして、庭園のテラスについた。私と向かい合わせでアレクサンドル殿下が座り、私の隣にリアムは座った。前もリアムが居ないだけでこんな感じで座った記憶がある。
椅子に座るなり、アレクサンドル殿下は私に話しかけた。
「その、ベアトリーチェ嬢は、報告とだいぶ違う印象なのだが、そのずっと愛らしく思う……」
「報告ですか??」
明かなアレクサンドル殿下の失言だった。それに気づいた途端、アレクサンドル殿下は俯いた。
どうやら私の様子を報告させているらしい。だとすれば私の身近に皇族と繋がり密告している人間が居るということだろう。
いくら『予言の書』に記載がされている疑惑のある人間だからといって、伯爵令嬢に対して色々やり過ぎだと思ってしまうのは平和ボケした日本人としての記憶があるからだろうか。
「殿下、報告とは妹について王家の影を動かされているということでしょうか」
柔和な声でリアムが聞いた。その響きとは裏腹に決して逃がさないという類のものだと私にもすぐにわかった。
「ああ。ベアトリーチェ嬢、君が本当に番かしっかり見極める必要があった。知っていると思うが番を間違えた場合、この世界が滅ぶからな」
「この世界が滅ぶ」その言葉の意味をこの場で一番理解しているのは間違いなく私だ。なんせその「世界が滅んだ」時間軸から嫌々やり直し中なのだから。
だから、私は意趣返しと自由のために、きっと前世なら絶対に口にしなかった発言をした。
「……アレクサンドル殿下、私は貴方の番と思えないのですが……」
解放してほしい。
諸々の問題も、番であるからという婚約さえどうにかできればなんとかなるはずだ。しかし、その言葉に何故かアレクサンドル殿下の顔色が真っ青になる。
「どうして、そんなことを言う。君と今日、直接会って確信した。君は僕の間違いなく番だ」
それは、妙に確信を帯びた言葉だった。しかし、その言葉は私が聞きたいものではなかった。
そう声を掛けてきた、私の憎き敵、もとい前世で散々地獄へ叩き落としてくれた男、今はまだ14歳の少年であるアレクサンドル殿下を私は見つめる。
沸き立つ様々な感情を全て殺して私は微笑む。
「はい、お目に掛かれて光栄でございます」
内心では「こいつから逃げられれば私は、幸せになる道もあるかもしれない」という本音を必死に隠しながら完璧な淑女の笑みを浮かべた。その顔をジッと見つめられているのが分かる。
(以前はこの辺りで微妙な顔されたんだよね。今回はどんな顔するんだ……)
軽い気持ちでその顔を見たことを後悔した。その顔は、なんだろう微妙だなというものではない、しかしなんかこう好感を持っているというものでもない。
一番近いのは「困惑」というような表情だった。
(これまた、パターン入ったかな……)
そんなことを考えていた時、前回全く盛り上がらなかったイベント開催の一声が掛かる。
「どうせならふたりでお茶でも飲んできなさい」
そう言って、庭にエスコートされてお茶を飲むというだけのミッションだが前回ここで全くと言って良いほど何ひとつ弾まなかったし、なんなら目も合わせてくれなかった。
「あの、ふたりきりでないとだめですか、その……」
そう口に出してから、特に何も考え無しだったので焦る。
「それは、僕とふたりが不満ということか」
不機嫌に返す、アレクサンドル殿下。それがどのような感情かはあまり分からないが不快そうなのは伝わる。誰が好き好んで針の筵お茶会をしないといけないのか、ましてや前世自身を殺そうとした相手と……。しかしそんなこと言えないのでわざとらしく恥ずかしそうな雰囲気で俯く。ここは恥ずかしいからとかゴネてお母様と一緒に行くなどしたい。そう考えていたのだけれど……。
「申し訳ありません、アレクサンドル殿下。僕の可愛い妹は、大好きな僕と片時でも離れると情緒不安定になってしまうのです、まだ幼いのでどうかお許しを」
危なくすごい顔で「はぁ??」っと言いかけた。なぜ私は、ブラコンキャラの設定を生やされたのか、私は激怒した。必ず、かのドM変態魔術師を痛めつけねばならぬと決意した。
思い立ったが吉日、見えないように強めにリアムの足を踏みつけた。しかし、何故か小声で「あっ」という妙に甘い声の後に「ありがとうございます、マイ・クイーン」と聞こえた気がするが悪い夢だろう。
「……なるほど、人見知りなのか。君は僕の番として王妃になるのだ、けれどまだ王妃教育もはじまっていないから今回は大目に見よう」
思わず「空耳かな」と思うワードが飛び出した。『君は僕の番として王妃になる』だと??前世この瞬間には間違いなく絶対口にしなかった台詞だった。
「ありがとうございます、アレクサンドル殿下」
無難にそう答えたのに、また少し困惑した顔になるアレクサンドル殿下。彼は一体私に何を感じているのかよく分からない。ただ、ひとつ言えるのは前回より幾分かマシということだろう。
そのまま、私は、アレクサンドル殿下にエスコートされながら、リアムも一緒について中庭に移動した。道中では何故か、アレクサンドル殿下はずっと兄を見つめていた。
もしかしたら新しい恋でもしたのかしらと腐ったことを考えてみたが、多分違う。それにドM変態魔術師×地獄への切符を送るマンな皇子のカップリングとか私は解釈違いなのでご勘弁願いたい。
しばらくして、庭園のテラスについた。私と向かい合わせでアレクサンドル殿下が座り、私の隣にリアムは座った。前もリアムが居ないだけでこんな感じで座った記憶がある。
椅子に座るなり、アレクサンドル殿下は私に話しかけた。
「その、ベアトリーチェ嬢は、報告とだいぶ違う印象なのだが、そのずっと愛らしく思う……」
「報告ですか??」
明かなアレクサンドル殿下の失言だった。それに気づいた途端、アレクサンドル殿下は俯いた。
どうやら私の様子を報告させているらしい。だとすれば私の身近に皇族と繋がり密告している人間が居るということだろう。
いくら『予言の書』に記載がされている疑惑のある人間だからといって、伯爵令嬢に対して色々やり過ぎだと思ってしまうのは平和ボケした日本人としての記憶があるからだろうか。
「殿下、報告とは妹について王家の影を動かされているということでしょうか」
柔和な声でリアムが聞いた。その響きとは裏腹に決して逃がさないという類のものだと私にもすぐにわかった。
「ああ。ベアトリーチェ嬢、君が本当に番かしっかり見極める必要があった。知っていると思うが番を間違えた場合、この世界が滅ぶからな」
「この世界が滅ぶ」その言葉の意味をこの場で一番理解しているのは間違いなく私だ。なんせその「世界が滅んだ」時間軸から嫌々やり直し中なのだから。
だから、私は意趣返しと自由のために、きっと前世なら絶対に口にしなかった発言をした。
「……アレクサンドル殿下、私は貴方の番と思えないのですが……」
解放してほしい。
諸々の問題も、番であるからという婚約さえどうにかできればなんとかなるはずだ。しかし、その言葉に何故かアレクサンドル殿下の顔色が真っ青になる。
「どうして、そんなことを言う。君と今日、直接会って確信した。君は僕の間違いなく番だ」
それは、妙に確信を帯びた言葉だった。しかし、その言葉は私が聞きたいものではなかった。
10
お気に入りに追加
1,101
あなたにおすすめの小説
私は貴方を許さない
白湯子
恋愛
甘やかされて育ってきたエリザベータは皇太子殿下を見た瞬間、前世の記憶を思い出す。無実の罪を着させられ、最期には断頭台で処刑されたことを。
前世の記憶に酷く混乱するも、優しい義弟に支えられ今世では自分のために生きようとするが…。
愛人をつくればと夫に言われたので。
まめまめ
恋愛
"氷の宝石”と呼ばれる美しい侯爵家嫡男シルヴェスターに嫁いだメルヴィーナは3年間夫と寝室が別なことに悩んでいる。
初夜で彼女の背中の傷跡に触れた夫は、それ以降別室で寝ているのだ。
仮面夫婦として過ごす中、ついには夫の愛人が選んだ宝石を誕生日プレゼントに渡される始末。
傷つきながらも何とか気丈に振る舞う彼女に、シルヴェスターはとどめの一言を突き刺す。
「君も愛人をつくればいい。」
…ええ!もう分かりました!私だって愛人の一人や二人!
あなたのことなんてちっとも愛しておりません!
横暴で冷たい夫と結婚して以降散々な目に遭うメルヴィーナは素敵な愛人をゲットできるのか!?それとも…?なすれ違い恋愛小説です。
公爵夫人アリアの華麗なるダブルワーク〜秘密の隠し部屋からお届けいたします〜
白猫
恋愛
主人公アリアとディカルト公爵家の当主であるルドルフは、政略結婚により結ばれた典型的な貴族の夫婦だった。 がしかし、5年ぶりに戦地から戻ったルドルフは敗戦国である隣国の平民イザベラを連れ帰る。城に戻ったルドルフからは目すら合わせてもらえないまま、本邸と別邸にわかれた別居生活が始まる。愛人なのかすら教えてもらえない女性の存在、そのイザベラから無駄に意識されるうちに、アリアは面倒臭さに頭を抱えるようになる。ある日、侍女から語られたイザベラに関する「推測」をきっかけに物語は大きく動き出す。 暗闇しかないトンネルのような現状から抜け出すには、ルドルフと離婚し公爵令嬢に戻るしかないと思っていたアリアだが、その「推測」にひと握りの可能性を見出したのだ。そして公爵邸にいながら自分を磨き、リスキリングに挑戦する。とにかく今あるものを使って、できるだけ抵抗しよう!そんなアリアを待っていたのは、思わぬ新しい人生と想像を上回る幸福であった。公爵夫人の反撃と挑戦の狼煙、いまここに高く打ち上げます!
➡️登場人物、国、背景など全て架空の100%フィクションです。
急に運命の番と言われても。夜会で永遠の愛を誓われ駆け落ちし、数年後ぽい捨てされた母を持つ平民娘は、氷の騎士の甘い求婚を冷たく拒む。
石河 翠
恋愛
ルビーの花屋に、隣国の氷の騎士ディランが現れた。
雪豹の獣人である彼は番の匂いを追いかけていたらしい。ところが花屋に着いたとたんに、手がかりを失ってしまったというのだ。
一時的に鼻が詰まった人間並みの嗅覚になったディランだが、番が見つかるまでは帰らないと言い張る始末。ルビーは彼の世話をする羽目に。
ルビーと喧嘩をしつつ、人間についての理解を深めていくディラン。
その後嗅覚を取り戻したディランは番の正体に歓喜し、公衆の面前で結婚を申し込むが冷たく拒まれる。ルビーが求婚を断ったのには理由があって……。
愛されることが怖い臆病なヒロインと、彼女のためならすべてを捨てる一途でだだ甘なヒーローの恋物語。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
扉絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(ID25481643)をお借りしています。
【完結】身を引いたつもりが逆効果でした
風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。
一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。
平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません!
というか、婚約者にされそうです!
番?呪いの別名でしょうか?私には不要ですわ
紅子
恋愛
私は充分に幸せだったの。私はあなたの幸せをずっと祈っていたのに、あなたは幸せではなかったというの?もしそうだとしても、あなたと私の縁は、あのとき終わっているのよ。あなたのエゴにいつまで私を縛り付けるつもりですか?
何の因果か私は10歳~のときを何度も何度も繰り返す。いつ終わるとも知れない死に戻りの中で、あなたへの想いは消えてなくなった。あなたとの出会いは最早恐怖でしかない。終わらない生に疲れ果てた私を救ってくれたのは、あの時、私を救ってくれたあの人だった。
12話完結済み。毎日00:00に更新予定です。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
性悪という理由で婚約破棄された嫌われ者の令嬢~心の綺麗な者しか好かれない精霊と友達になる~
黒塔真実
恋愛
公爵令嬢カリーナは幼い頃から後妻と義妹によって悪者にされ孤独に育ってきた。15歳になり入学した王立学園でも、悪知恵の働く義妹とカリーナの婚約者でありながら義妹に洗脳されている第二王子の働きにより、学園中の嫌われ者になってしまう。しかも再会した初恋の第一王子にまで軽蔑されてしまい、さらに止めの一撃のように第二王子に「性悪」を理由に婚約破棄を宣言されて……!? 恋愛&悪が報いを受ける「ざまぁ」もの!! ※※※主人公は最終的にチート能力に目覚めます※※※アルファポリスオンリー※※※皆様の応援のおかげで第14回恋愛大賞で奨励賞を頂きました。ありがとうございます※※※
すみません、すっきりざまぁ終了したのでいったん完結します→※書籍化予定部分=【本編】を引き下げます。【番外編】追加予定→ルシアン視点追加→最新のディー視点の番外編は書籍化関連のページにて、アンケートに答えると読めます!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる