推しを見守る壁になると誓ったやり直し悪役令息は、急にヤンデレ王太子に溺愛されて困ります!!

ひよこ麺

文字の大きさ
上 下
36 / 41

35.会いたくなかった婚約者との迎合

しおりを挟む
「……イヴァン殿下」

目の前に僕の首コロスイッチもとい、死亡フラグもとい、一応婚約者であるイヴァン殿下が立っていました。

その表情は、僕が知るかの人のイメージ通りあたたかさよりは冷たい感じがしました。ほんの1ミリ、いえ1ミリミクロンくらいはもしかしたら今回のイヴァン殿下が優しいという可能性も考えていましたが違いそうです。

今回はヴァンさんやシューゾーというイレギュラーが起きたので、ほんの少しだけ期待してたいのかもしれません。けれど、このイヴァン殿下と向き合ったことでそのイレギュラーにはやはり僕の幸せは含まれていない可能性が高いことを理解しました。

こういう時、太陽神なら『崖っぷちありがとう!! 最高だぁぁぁぁぁぁぁ!!!!お米食べろ!!』とこの崖っぷちにも向かうべきだとおっしゃると思います。実際僕もそうするべきだと思うべきなのですが、この部分について首コロリ10回、この人を慕い続け裏切られ続けた記憶がどうしてもそれを邪魔してしまいます。

あの目を、僕を婚約者にしてもそれが本心ではなかったことが分かってしまう表情に忘れたはずの痛みが胸にズキリと痛みが走ってしまいます。

「どうした、顔色が悪い。無理はするな」

そんな僕に、ヴァンさんがすかさず肩をかしてくださいました。ヴァンさんは距離も近いしトイレの天井に張り付いてるようなストーカー気質なアレな人ですが、その肩から伝わってくるあたたかさが今は有難いです。

しかし、流石に婚約者の前でヴァンさんに頼るのは、僕だけではなくヴァンさんの命まで危険に晒しかねません。なんせ、僕が邪魔になり冤罪で首を平気でコロリ出来るイヴァン殿下の前なのですから。

「ありがとうございます、少し馬車で移動したので酔ったのかもしれません。イヴァン殿下、ご挨拶をちゃんとできず申し訳ございません」

「いや。気にするな。君は俺の婚約者だ。もう少し、その……」

何かを言いかけたイヴァン殿下が何故か黙ってしまいました。原因が全く分からないがこれはチャンスかもしれません。

「イヴァン殿下、ルドルフは具合が悪いようなのでこれで失礼いたします」

そう言って、無理やり腕を引いて立ち去ろうとする。

「ヴァンさん、流石に殿下に失礼です!!」

首コロリを平気でしちゃうイヴァン殿下の前で、ヴァンさんがまるで地雷原でタップダンスするくらい危険な発言をしています。このままだと、最悪僕だけでなくヴァンさんともども不貞の疑いとかでふたり仲良死してしまう可能性があります。

ダブル首コロリは絶対ダメです。

「……いや、構わない。その代わり明日にでも湖でふたりで会う時間がほしい。湖でカヌーにふたりきりで乗りたいんだが……」

(ええええええ!!それは見える死亡フラグでは、何としても断らないと!!)

そう思ったのに、何故か先ほどまですごい強く殿下から守ってくれたはずのヴァンさんが、ニッコリと笑い。

「そうですね。仲良くした方が良いですね」

と突如180度態度を変えたのだ。あまりの出来事に目を見開いて呆然とする僕にヴァンさんは小声で囁きました。

「心配するな。俺もちゃんと監視しているから」

いや、監視うんぬんではなく殿下とふたりきりとか見える死亡フラグを折りたい、そう思いましたが……。

「よかった。では、また明日迎えに行こう」

そう言うなりそそくさと去って行く殿下。違和感が半端ないです。だってイヴァン殿下は僕に全く興味のない様子だったのに何故あのような誘いをしてきたのでしようか。

あまりのことに固まる僕でしたが、マイキーがニカッと笑って言いました。

「明日予定入ったけど、その分、今日遊びまくろう」

「うん、ありがとう……」

湖では何泊掠る予定でしたが、とりあえず明日の面倒ごとは一旦忘れることにしましょう。僕は太陽神の信者。とりあえず今を一生懸命生きるのです。

そう切り替えたおかげで、僕は久々に親友とストーカーもといヴァンさんとなんやかんや楽しい1日目を湖で送ることができました。それにより、太陽神の偉大さを再確認しました。
しおりを挟む
感想 40

あなたにおすすめの小説

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

堕とされた悪役令息

SEKISUI
BL
 転生したら恋い焦がれたあの人がいるゲームの世界だった  王子ルートのシナリオを成立させてあの人を確実手に入れる  それまであの人との関係を楽しむ主人公  

生まれ変わりは嫌われ者

青ムギ
BL
無数の矢が俺の体に突き刺さる。 「ケイラ…っ!!」 王子(グレン)の悲痛な声に胸が痛む。口から大量の血が噴きその場に倒れ込む。意識が朦朧とする中、王子に最後の別れを告げる。 「グレン……。愛してる。」 「あぁ。俺も愛してるケイラ。」 壊れ物を大切に包み込むような動作のキス。 ━━━━━━━━━━━━━━━ あの時のグレン王子はとても優しく、名前を持たなかった俺にかっこいい名前をつけてくれた。いっぱい話しをしてくれた。一緒に寝たりもした。 なのにー、 運命というのは時に残酷なものだ。 俺は王子を……グレンを愛しているのに、貴方は俺を嫌い他の人を見ている。 一途に慕い続けてきたこの気持ちは諦めきれない。 ★表紙のイラストは、Picrew様の[見上げる男子]ぐんま様からお借りしました。ありがとうございます!

博愛主義の成れの果て

135
BL
子宮持ちで子供が産める侯爵家嫡男の俺の婚約者は、博愛主義者だ。 俺と同じように子宮持ちの令息にだって優しくしてしまう男。 そんな婚約を白紙にしたところ、元婚約者がおかしくなりはじめた……。

変なαとΩに両脇を包囲されたβが、色々奪われながら頑張る話

ベポ田
BL
ヒトの性別が、雄と雌、さらにα、β、Ωの三種類のバース性に分類される世界。総人口の僅か5%しか存在しないαとΩは、フェロモンの分泌器官・受容体の発達度合いで、さらにI型、II型、Ⅲ型に分類される。 βである主人公・九条博人の通う私立帝高校高校は、αやΩ、さらにI型、II型が多く所属する伝統ある名門校だった。 そんな魔境のなかで、変なI型αとII型Ωに理不尽に執着されては、色々な物を奪われ、手に入れながら頑張る不憫なβの話。 イベントにて頒布予定の合同誌サンプルです。 3部構成のうち、1部まで公開予定です。 イラストは、漫画・イラスト担当のいぽいぽさんが描いたものです。 最新はTwitterに掲載しています。

いじめっこ令息に転生したけど、いじめなかったのに義弟が酷い。

えっしゃー(エミリオ猫)
BL
オレはデニス=アッカー伯爵令息(18才)。成績が悪くて跡継ぎから外された一人息子だ。跡継ぎに養子に来た義弟アルフ(15才)を、グレていじめる令息…の予定だったが、ここが物語の中で、義弟いじめの途中に事故で亡くなる事を思いだした。死にたくないので、優しい兄を目指してるのに、義弟はなかなか義兄上大好き!と言ってくれません。反抗期?思春期かな? そして今日も何故かオレの服が脱げそうです? そんなある日、義弟の親友と出会って…。

普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。

山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。 お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。 サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。 ※(3/14)ストック更新終わりました!幕間を挟みます。また本筋練り終わりましたら再開します。待っててくださいね♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

処理中です...