推しを見守る壁になると誓ったやり直し悪役令息は、急にヤンデレ王太子に溺愛されて困ります!!

ひよこ麺

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16.トイレの神様からなんかすごいことをよくわからないけど聞きました

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「しかし、いざ考えるとなると難しいですね」

ポツリとひとり呟いた。首コロリ10回も経験していますが、その大きな原因は自身の頭脳であるということは把握済みです。

残念なことによくある転生モノの賢い主人公のような知恵や機転は僕にはありません。

しかし、僕は太陽神を信じる者。故にネバーギブアップの精神、ささやかなことでは諦めない熱い魂をもっているということを自負しています。

頭は良くなくても体が覚えるまで自身が分かるまで頑張り乗り越えようの精神で今までもやってきました。

(なるほど、だからお前のチートは『時間遡行』だったのだな)

「えっ!!誰です??」

思わず叫んでしまった。それもそうだろう。いきなり脳内に声が響いたのだから。

驚いて辺りを見るが狭いトイレの個室に当然誰かが居る訳がない。

「どうした!!ルドルフ大丈夫か!!今すぐ助けにいくぞ!!くそ、この腐れドアノブめ。俺とルドルフを引き裂くな!!」

僕の叫び声を聞いたヴァンさんがなんかトイレのドアノブをガシャガシャして壊そうとしてます。怖いです。

というか今ドアを破壊されると下半身丸出しの僕とヴァンさんが相まみれてしまいます。絶対無理です。

「違います!!ちょっと勘違いです。妄想していたらなんかこう脳内に太陽神の偉大なるお声が聞こえた気がしたのでびっくりしました」

自分でも明らかに嘘だと分かるようなことを叫んでいました。

いくら僕がアホの子と思われていてもこれはアホというより毒電波が過ぎます。そう思ったのですが……。

「そうか。分かった。ただ、そのトイレから出たら悩みとかあれば俺が相談に乗るからあまり脳内の太陽神とやらにだけ相談するのはやめてくれ。だいじょ……いや、無理はするな」

なんでしょうか、心なしかものすごく気を遣っている感じの言葉が返ってきてしまいました。明らかに腫れ物に触れる感じのその言葉にちょっとムカつきましたが、あまり追及されるとまずいので今は好都合でもあります。

「ありがとうございます。それについては後ほど」

とりあえず当たり障りなく返して、僕はなんとなく脳内に話しかけてみました。

(あの、どなたですか??)

(俺はこの世界の神だ)

「な、なんと!!」

また思わず声が出てしまいましたが、ヴァンさんは沈黙していますのでそのまま脳内に話しかけました。

(この世界の神様、何故いきなり話しかけてきたのですか??)

その問いかけに神様は答えました。

(ずっと話しかけていたが、お前にはこの場所でしか声が聞こえないらしい。他の者も夢とか話しかけられる場所は人それぞれみたいだからそこは気にしないでいい)

そう答えた、男性とも女性とも言い難い声にかなりびっくりしましたが、気になることがあったのでそのまま話を続けました。

(僕の能力が『時間遡行』といいましたが、この首コロリ10回の件もそれが原因なんですか??)

(そうだ。お前が異世界転生モノとか言っている設定のように別の世界からこちらへ転生する時、前の世界の神が餞別に1つ能力を与える。大体はその人間が望んだものが与えられるようだがお前のように自身が把握していない能力を与えられるものもいるようだ)

なんかすごいことになってきました。いきなりトイレで神様に話しかけるなんて。しかもこの場所でしか話かけられないそうなので、これこそが本当のトイレの神様ですね。

この脳内の方のことは偉大なる太陽神と区別すべくトイレの神様と呼ぶことにしました。

(……俺はトイレの神様でなく世界の神だ。まぁいい。本来ならチート能力は転生1回限りで次に同じ世界で転生した時は消えるものだが、お前は既にこの世界で複数回生まれ変わっているので本来なら能力は使えないはずだ。しかし、この世界に転生してから、その能力を使用しなかったので、そのまま繰り越し繰り越しされて今の生ではじめて発動したというイレギュラーな存在だ)

全くわかりませんが、トイレの神様は僕になんか一方的にすごいことを話しています。どうすべきがよくわかりませんがとりあえず聞いていましょう。

(だからこそ、その想定外の力でアレとお前は戦うことができるし、アレを滅ぼすことができるかもしれない)

(アレってなんですか??)

アレとかコレって言われると僕はとても気になります。なんでしょう、僕、気になります。

(アレ、それはこの世界でジョバンニと呼ばれている転生者だ。あいつが……)

神様が、何か言いかけた時でした。突然、さっきまで静かだったヴァンさんがトイレの扉をノックしたのです。

「その、大きな方をしている最中にすまない。どうやらあいつ、サドル子爵令息が来たようだ。どうする??追い返すか??」

生き生きと追い返したがっているヴァンさん。

先ほどの血文字は気になりますが僕としては彼に会ってから見定めたいと思ったので、このままヴァンさんに任せるわけにはいきませんし、大きな誤解があるのでそこも解決しないとです。

「いえ、僕は直接ミゲルに会います。後、大きい方はしてません」

そう大切な誤解を解きながらトイレから出た僕は手を洗って、ミゲルと会うために彼を待たせているらしい来客用の部屋へずっとついてくるヴァンさんと向かいました。
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