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13.怖い時も太陽神は勇気をくれる
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音の出どころを探すため耳を澄ませているとどうやら裏口らへんから聞こえているといいことが分かりました。これはいよいよ盗人の線が濃くなってきたかもしれません。
僕は父と兄に疎まれているとはいえ一応公爵令息。
ふたりとは別のタウンハウスに暮らしています。タウンハウスというのは貴族が王都で暮らす際に住む別宅みたいなもので、自身の領以外の家を指します。
ベガ公爵家は何軒かそういう家を持っていてそのうちのひとつで主に生活をしています。
ただ、僕の住んでいるタウンハウスは一番古いものでちょっとしたお化け屋敷みがあると思ってます。
そして、一番古いタウンハウスで嫡男でもない僕に従いたい使用人があまりいないため、広い邸宅の割に警備は手薄になっています。
警備の人くらいもう少し雇ってほしい気がしますが、残念ながらほとんど通いの人ばかりなので今の時間はメイド長さんと住み込みの管理人さんはいますが、警備の人は異常がないと来ないのです。つまりセコ〇に入っている家みたいな感じのイメージが近いかもしれません。
ただ、セコ〇みたいにセンサーで感知してすぐ来てくれるとかではないので、こういう小さな問題があった場合は確認する必要があります。
今まではそういう時は、片手に武器になるものを持って確認にいきました。
今回は武器になるものはありませんが小辺境伯であるヴァンさんが代わり、つまり肉盾です。鍛えている人なのでなんとか盗人くらいなら耐えるはずです。
「……安心しろ。俺がお前を守る」
すごくキリっとした顔でそう言いながら、どさくさに紛れて手を何故か恋人繋ぎしてきましたが肉盾になってもらうのでそのくらいは許します。
音の出どころは、予想通り裏口でした。
シャカシャ
相変わらず何かを引っかいています。
「誰だ??返事をしろ」
ヴァンさんが、裏口の扉に叫びました。しかし、
シャカシャカ
音はやみません。まるで言葉が通じないようにドアの裏側を引っかくいています。
つまり何者かが今、ドアの裏側を引っかいているようです。
想像するとすごく怖い光景です。だっていくら僕でも人の家の扉を引っ掻いたりはしませんから、気持ちがわかりません。
首コロリ10回でも分からない得体の知れない恐怖です。
(扉を開けた瞬間に襲い掛かるタイプの人とかだったらどうしょう、いやそもそも人外だったら??)
脳内に会うと死ぬタイプのとてもスレンダーな男性を想像して、ガタガタと体が震えてしまいます。僕としては首コロリで死ぬのは嫌ですが、スレンダーな男性に殺されるのも同じベクトルで嫌です。
「……返事はなしか、よし開けよう」
ヴァンさんが、しれっと扉を開こうとしています。それはいけません。
「だめです、ヴァンさん。もしスレンダーな男性だったら僕らは死んでしまいます」
「なんだ、スレンダーな男性って??」
「スレンダーな男性はスレンダーな男性です。具体的には細身で異常に背が高く、黒い背広を着ていて……」
「心配するな。そんなヤツは俺ひとりでたおしてやるから」
なんか死亡フラグっぽい台詞を言いながらヴァンさんが扉を開きました。これはいけません。
「だめです!!ああ、スレンダーな男性……ん??」
解き放たれた扉の先には誰もいません。そう、文字通り誰もいないのです。
「……どういうことだ??」
そう言ってヴァンさんは外に出て扉の裏側を見ているようです。そして、何故か急に笑い出したのです。
(もしかしたら……これはあの目が合うと気が狂う系の怪異確かふにゃふにゃ、いやくにゃくにゃでしたっけ??……)
僕の頭の中が恐怖で埋め尽くされた、その時です。
何かが僕の足先に触れたのは。
「ひぃっ!!」
それが何かはわかりませんが、明らかに先ほどのシャカシャカの正体です。あまりの恐怖にそれを見れずにいる中で僕は大切なことを思い出していました。
(トイレ、トイレいってません!!)
恐怖に尿意が刺激されて、今にも漏らしそうです。どうしましょう。そう考えている間にも僕の足先からそれは足首の方に移動してしがみついているのが分かります。
(どうしょう……怖すぎて漏れる……)
「おい、ルドルフ」
そんな僕の葛藤を知らないのかヴァンさんが明るい声で話しかけてきました。そして、
「足元を見て見ろ」
といきなり「悪魔に魂を売れ」とか「首を差し出せ」くらい酷い文言を言ってきました。
僕は必死に首をふります。もし足元になんか死んだ人っぽい人がいて足を持っていたら積みます。無理です。
「嫌です、怖いです」
「安心しろ、そいつは無害だ」
ヴァンさんって霊能力者だったのでしょうか。しかし、だからと言ってとても怖いのです。
それでも、頑張らないと前に進めません。心の太陽神の言葉を借りましょう。
「今の僕には勢いがある!!お米食べろ!!」
勇気を出して見た足元、そこには……。
僕は父と兄に疎まれているとはいえ一応公爵令息。
ふたりとは別のタウンハウスに暮らしています。タウンハウスというのは貴族が王都で暮らす際に住む別宅みたいなもので、自身の領以外の家を指します。
ベガ公爵家は何軒かそういう家を持っていてそのうちのひとつで主に生活をしています。
ただ、僕の住んでいるタウンハウスは一番古いものでちょっとしたお化け屋敷みがあると思ってます。
そして、一番古いタウンハウスで嫡男でもない僕に従いたい使用人があまりいないため、広い邸宅の割に警備は手薄になっています。
警備の人くらいもう少し雇ってほしい気がしますが、残念ながらほとんど通いの人ばかりなので今の時間はメイド長さんと住み込みの管理人さんはいますが、警備の人は異常がないと来ないのです。つまりセコ〇に入っている家みたいな感じのイメージが近いかもしれません。
ただ、セコ〇みたいにセンサーで感知してすぐ来てくれるとかではないので、こういう小さな問題があった場合は確認する必要があります。
今まではそういう時は、片手に武器になるものを持って確認にいきました。
今回は武器になるものはありませんが小辺境伯であるヴァンさんが代わり、つまり肉盾です。鍛えている人なのでなんとか盗人くらいなら耐えるはずです。
「……安心しろ。俺がお前を守る」
すごくキリっとした顔でそう言いながら、どさくさに紛れて手を何故か恋人繋ぎしてきましたが肉盾になってもらうのでそのくらいは許します。
音の出どころは、予想通り裏口でした。
シャカシャ
相変わらず何かを引っかいています。
「誰だ??返事をしろ」
ヴァンさんが、裏口の扉に叫びました。しかし、
シャカシャカ
音はやみません。まるで言葉が通じないようにドアの裏側を引っかくいています。
つまり何者かが今、ドアの裏側を引っかいているようです。
想像するとすごく怖い光景です。だっていくら僕でも人の家の扉を引っ掻いたりはしませんから、気持ちがわかりません。
首コロリ10回でも分からない得体の知れない恐怖です。
(扉を開けた瞬間に襲い掛かるタイプの人とかだったらどうしょう、いやそもそも人外だったら??)
脳内に会うと死ぬタイプのとてもスレンダーな男性を想像して、ガタガタと体が震えてしまいます。僕としては首コロリで死ぬのは嫌ですが、スレンダーな男性に殺されるのも同じベクトルで嫌です。
「……返事はなしか、よし開けよう」
ヴァンさんが、しれっと扉を開こうとしています。それはいけません。
「だめです、ヴァンさん。もしスレンダーな男性だったら僕らは死んでしまいます」
「なんだ、スレンダーな男性って??」
「スレンダーな男性はスレンダーな男性です。具体的には細身で異常に背が高く、黒い背広を着ていて……」
「心配するな。そんなヤツは俺ひとりでたおしてやるから」
なんか死亡フラグっぽい台詞を言いながらヴァンさんが扉を開きました。これはいけません。
「だめです!!ああ、スレンダーな男性……ん??」
解き放たれた扉の先には誰もいません。そう、文字通り誰もいないのです。
「……どういうことだ??」
そう言ってヴァンさんは外に出て扉の裏側を見ているようです。そして、何故か急に笑い出したのです。
(もしかしたら……これはあの目が合うと気が狂う系の怪異確かふにゃふにゃ、いやくにゃくにゃでしたっけ??……)
僕の頭の中が恐怖で埋め尽くされた、その時です。
何かが僕の足先に触れたのは。
「ひぃっ!!」
それが何かはわかりませんが、明らかに先ほどのシャカシャカの正体です。あまりの恐怖にそれを見れずにいる中で僕は大切なことを思い出していました。
(トイレ、トイレいってません!!)
恐怖に尿意が刺激されて、今にも漏らしそうです。どうしましょう。そう考えている間にも僕の足先からそれは足首の方に移動してしがみついているのが分かります。
(どうしょう……怖すぎて漏れる……)
「おい、ルドルフ」
そんな僕の葛藤を知らないのかヴァンさんが明るい声で話しかけてきました。そして、
「足元を見て見ろ」
といきなり「悪魔に魂を売れ」とか「首を差し出せ」くらい酷い文言を言ってきました。
僕は必死に首をふります。もし足元になんか死んだ人っぽい人がいて足を持っていたら積みます。無理です。
「嫌です、怖いです」
「安心しろ、そいつは無害だ」
ヴァンさんって霊能力者だったのでしょうか。しかし、だからと言ってとても怖いのです。
それでも、頑張らないと前に進めません。心の太陽神の言葉を借りましょう。
「今の僕には勢いがある!!お米食べろ!!」
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