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01.おそらく10回以上首が外れる地獄を体験してきた僕だ、面構えも違う
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誰かの声がした。
「ああ、どうしてこうなるんだ。あいつのせいか??」
苛立ちを含んだその声には性別がないように思えた。けれどその声ははっきりと僕の脳内に響いている。
「あちらからこちらへ来る場合、確かにあちらの神は召喚者に餞別に能力を与えるが、あの力はこの世界を壊しかねないし、正直協定に反している」
(何の話をしているのだろう??)
ただ、その会話がまるで前世?の世界で見たことある異世界転生、いや異世界召喚の話みたいだななどと思いながらぼんやりと声に耳を傾けていた。
「これは最早強制送還をと言いたいところだが、あまりにもアレは好き放題やり過ぎた。その業がこの世界との縁を強固にして、戻すこともできない。ただ……、あの神が行ったことは違反だ、だから目には目を歯には歯を……」
(ハンムラビ法典……)
そんなことを考えていた時、何かあたたかいものが体を包む。きっとほんのわずかな死のまどろみが終わるのだろう。
(次に目覚めたらまた……)
文字通り首をかけた戦いが始まる。けれど今度は、今度こそは僕は大切なものを見誤らず推しと首が外れないようにやり切ってみせる。
(待っていてね、マイキー、リオン殿下……、もう僕は僕を殺すイヴァン殿下にもジョバンニにも関わらないよ)
そうすれば、少なくともふたりを幸せにできるはずだから。
(もう恋なんてしない、むしろ僕にリア充は似合わない。今回は推しの恋を応援し見守る、つまり壁になるぞ!!……あれ、推しってなんだっけ……)
余計なことを考えた瞬間真っ白い光に包まれて僕の意識が完全に覚醒した。
「またここに戻ってきたんだな」
目覚めたそこは、見慣れた部屋だ。
調度品は高級なのに、家人の趣味で完全に黒一色という中二病の子の部屋みたいな僕の部屋だった。
しかし、この部屋ともしばらくお別れしていたので少し懐かしい気持ちになる。
僕が、冤罪で首がとれるといつもこのタイミング、イヴァン様との婚約前に行われたお茶会のタイミングに戻ってきてしまう。
今までは、ここで僕は全身全霊をかけてイヴァン殿下を落としにいった。けれど……、今回は違う。
むしろ僕は絶対にあの人に近付いたりしない。
いくら僕が、10回以上首がとれても「もっと熱くなれよ!!お米食べろ」とか心の太陽神に叱咤激励され泣きながら真っ直ぐに立ち向かい、同じ未来を何度も繰り返してしまったアホの子でも流石に学んだ。
リア充にはなれない、しかし、別の幸福は見出せる、「ネバーギブアップ!!お米食べろ」心の太陽神も叱咤激励してくれている。ちなみにこの世界の主食はパン。
(そう、どんなに繰り返してもイヴァン殿下は僕を好きにならないし、幸せな婚約者同士にもなれない。ついでに僕は恋愛も向いてない。好きになるとその人しか見えなくなって暴走しちゃうからよくない)
僕にはヤンデレ発作みたいなものがあるようで、好きになった相手に一途になりすぎてドン引きされるっぽいということを大体首が5回外れたくらいの時に悟った。
それでも、僕はイヴァン殿下が諦めきれずさらに5回くらい首がもげて、前回ついに親友の幸福を奪われるという惨劇に見舞われて僕は決意したのだ。
もう二度とイヴァン殿下には近づかない。そして、その恋路の邪魔もしないしヤンデレしないために婚約者には絶対ならないし。
今回僕が婚約者になる原因であるお茶会には、とても地味な瓶底眼鏡をかけた陰キャとして参加して、影で『神すら惑わす美貌』とか言われている顔を全力で隠してやる。
この段階なら、元々引きこもりで家族からも顧みられていない僕を誰も気にしないはずだ。
「坊ちゃん、王城でのお茶会の支度を……」
「いらない。僕は、この格好で行くから」
髪はわざとボサボサにした。そして、本当はイヴァン殿下をストーカーするにあたり人相を変えるために買っていた瓶底眼鏡をした。
「なぜ、そのような格好を……」
「絶対にイヴァン殿下に関わりたくないんだ」
しかし、今気づいたけど目の前の使用人、僕の専属らしい彼を見た記憶が何故かない。
僕の使用人は男爵家の五男のストロベリー君のはずだけど……、彼は小柄でそばかすだらけの顔が可愛いおっちょこさん。
僕はそんな彼を可愛がっていたけど、やはり冤罪首とれの際には裏切られたので、その辺りも加味してなるべく友好関係を築いて未来を回避しようと努力し始めたのが大体首ねじとれ3回目くらいから。
けれど、そこからいくら彼と親しくなっても最後には裏切られた。
だからといって僕としては使用人をいじめる気はなかったので、今回出会ったからといってなにかする気はない。
なんせ、推し活に使うために生きる人生だから打算で動く必要はないし、冤罪をかけられたりもしないはずだ。
しかし、そのストロベリー君じゃない彼は誰だろう。
わからない時は聞くのが基本、分からないことは恥ではない、分からないことを隠すのが恥だからね。
「君は誰?僕は君を知らないけど新しい使用人だよね??」
「……まさか、記憶は全員に植え付けたはずだ、それなのに……」
「ああ、どうしてこうなるんだ。あいつのせいか??」
苛立ちを含んだその声には性別がないように思えた。けれどその声ははっきりと僕の脳内に響いている。
「あちらからこちらへ来る場合、確かにあちらの神は召喚者に餞別に能力を与えるが、あの力はこの世界を壊しかねないし、正直協定に反している」
(何の話をしているのだろう??)
ただ、その会話がまるで前世?の世界で見たことある異世界転生、いや異世界召喚の話みたいだななどと思いながらぼんやりと声に耳を傾けていた。
「これは最早強制送還をと言いたいところだが、あまりにもアレは好き放題やり過ぎた。その業がこの世界との縁を強固にして、戻すこともできない。ただ……、あの神が行ったことは違反だ、だから目には目を歯には歯を……」
(ハンムラビ法典……)
そんなことを考えていた時、何かあたたかいものが体を包む。きっとほんのわずかな死のまどろみが終わるのだろう。
(次に目覚めたらまた……)
文字通り首をかけた戦いが始まる。けれど今度は、今度こそは僕は大切なものを見誤らず推しと首が外れないようにやり切ってみせる。
(待っていてね、マイキー、リオン殿下……、もう僕は僕を殺すイヴァン殿下にもジョバンニにも関わらないよ)
そうすれば、少なくともふたりを幸せにできるはずだから。
(もう恋なんてしない、むしろ僕にリア充は似合わない。今回は推しの恋を応援し見守る、つまり壁になるぞ!!……あれ、推しってなんだっけ……)
余計なことを考えた瞬間真っ白い光に包まれて僕の意識が完全に覚醒した。
「またここに戻ってきたんだな」
目覚めたそこは、見慣れた部屋だ。
調度品は高級なのに、家人の趣味で完全に黒一色という中二病の子の部屋みたいな僕の部屋だった。
しかし、この部屋ともしばらくお別れしていたので少し懐かしい気持ちになる。
僕が、冤罪で首がとれるといつもこのタイミング、イヴァン様との婚約前に行われたお茶会のタイミングに戻ってきてしまう。
今までは、ここで僕は全身全霊をかけてイヴァン殿下を落としにいった。けれど……、今回は違う。
むしろ僕は絶対にあの人に近付いたりしない。
いくら僕が、10回以上首がとれても「もっと熱くなれよ!!お米食べろ」とか心の太陽神に叱咤激励され泣きながら真っ直ぐに立ち向かい、同じ未来を何度も繰り返してしまったアホの子でも流石に学んだ。
リア充にはなれない、しかし、別の幸福は見出せる、「ネバーギブアップ!!お米食べろ」心の太陽神も叱咤激励してくれている。ちなみにこの世界の主食はパン。
(そう、どんなに繰り返してもイヴァン殿下は僕を好きにならないし、幸せな婚約者同士にもなれない。ついでに僕は恋愛も向いてない。好きになるとその人しか見えなくなって暴走しちゃうからよくない)
僕にはヤンデレ発作みたいなものがあるようで、好きになった相手に一途になりすぎてドン引きされるっぽいということを大体首が5回外れたくらいの時に悟った。
それでも、僕はイヴァン殿下が諦めきれずさらに5回くらい首がもげて、前回ついに親友の幸福を奪われるという惨劇に見舞われて僕は決意したのだ。
もう二度とイヴァン殿下には近づかない。そして、その恋路の邪魔もしないしヤンデレしないために婚約者には絶対ならないし。
今回僕が婚約者になる原因であるお茶会には、とても地味な瓶底眼鏡をかけた陰キャとして参加して、影で『神すら惑わす美貌』とか言われている顔を全力で隠してやる。
この段階なら、元々引きこもりで家族からも顧みられていない僕を誰も気にしないはずだ。
「坊ちゃん、王城でのお茶会の支度を……」
「いらない。僕は、この格好で行くから」
髪はわざとボサボサにした。そして、本当はイヴァン殿下をストーカーするにあたり人相を変えるために買っていた瓶底眼鏡をした。
「なぜ、そのような格好を……」
「絶対にイヴァン殿下に関わりたくないんだ」
しかし、今気づいたけど目の前の使用人、僕の専属らしい彼を見た記憶が何故かない。
僕の使用人は男爵家の五男のストロベリー君のはずだけど……、彼は小柄でそばかすだらけの顔が可愛いおっちょこさん。
僕はそんな彼を可愛がっていたけど、やはり冤罪首とれの際には裏切られたので、その辺りも加味してなるべく友好関係を築いて未来を回避しようと努力し始めたのが大体首ねじとれ3回目くらいから。
けれど、そこからいくら彼と親しくなっても最後には裏切られた。
だからといって僕としては使用人をいじめる気はなかったので、今回出会ったからといってなにかする気はない。
なんせ、推し活に使うために生きる人生だから打算で動く必要はないし、冤罪をかけられたりもしないはずだ。
しかし、そのストロベリー君じゃない彼は誰だろう。
わからない時は聞くのが基本、分からないことは恥ではない、分からないことを隠すのが恥だからね。
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