45 / 73
45.暗闇の悪夢と『狂った竜王』
しおりを挟む
僕の問いにレフは答えない。代わりに何故か後ろから強く抱きしめられた。
驚いて持っていたカンテラが手元から落ちてしまう。
カラン
と音を立てて落ちたそれは地面を転がりその衝撃で火が消えてしまった。
「レフ!!」
真っ暗な闇の中、抱きしめてきたその腕の主に叫ぶがさらに強く抱きしめられてしまう。
(やはり、レフじゃないのか??それなら逃げないと……)
そう思った時、抱きしめている腕の主が答えた。
「やっと、やっと貴方を手に入れた。もう邪魔なヤツらは居ない。ルティア殿下……いや、俺のルティア。この世界にはもう俺と貴方しか居ない。この暗闇の楽園でふたりっきりで愛し合いましょう」
熱い呼吸が首筋に当たり、その厚い舌が首筋に触れた。
その瞬間、何かが切れるのが分かった。
「嫌だ!!」
そう叫んで思いっきり蹴り飛ばしたところ、その腕から逃れられたので僕は走っていた。
間違いなく、あの腕の主はレフだったが、こんな暗闇の中で襲われるのは嫌だと素直に思ったし、何より『暗黒の森』のせいかレフは正気じゃない。
(そうでもないとあんなことをレフが口にする訳がない、いや、するかもしれないが、するかな??)
思考が予想外の事態に纏まらないが、僕は最早、唯一の光源に向けて走るよりほかなかった。
そうして光源に辿り着いた時、僕はその場所に立つ人と目があった。
その場所は、森の切れ目ではなく岩場であり光り輝いていたのは、その人の体が光り輝いていたからだ。
「国王陛下」
掠れた声でやっと吐き出した言葉。しかし、その顔に浮かんだ表情は苦悶だった。
よく見れば、国王陛下の手には鋭い鉤爪が生えていて、体には大小の傷が付いて背中には白い翼が生えていた。
そして、いつも整っていた服装もボロボロで髪型も乱れており、真っ赤な瞳から涙を流すその姿に、体が今更ガクガクと震えた。
「あっ……あああ!!」
叫びをあげながらその人はこちらに近づいてきた。
(……殺されるのか??)
死にたくはない、死にたくはないが殺したくもない。
僕はこの人に死を与えられたし、僕を愛してくれていた母を死に追いやった。
だから、許せないはずなのだ。
愛より憎しみが勝るはずだ、いつもいつも僕は愛されなかったのだから。
(けれど、やはり殺したくない!!)
そんな僕の気持ちなど分からないように、国王陛下、父上、いや、『狂った竜王』は僕の方へ鋭い爪を向けた。
僕は瞳を強く瞑り、死に至る痛みを受け入れようとした、その時……。
「ルティア!!」
聞き慣れた慟哭の後に、抱きしめられたのがわかった。
「グッ……」
『狂った竜王』の光に照らされた先に、口から血をこぼしているレフの顔がはっきりと見えた。
「レフ??」
微笑んだその顔は穏やかで優しいもので、先ほどまでの狂気は消えていた。
胸から血を流すその姿は、明らかに致命傷を負っていた。
しかし、それでも、レフは『狂った竜王』に向き直り叫ぶ。
「俺が、お前を倒す」
驚いて持っていたカンテラが手元から落ちてしまう。
カラン
と音を立てて落ちたそれは地面を転がりその衝撃で火が消えてしまった。
「レフ!!」
真っ暗な闇の中、抱きしめてきたその腕の主に叫ぶがさらに強く抱きしめられてしまう。
(やはり、レフじゃないのか??それなら逃げないと……)
そう思った時、抱きしめている腕の主が答えた。
「やっと、やっと貴方を手に入れた。もう邪魔なヤツらは居ない。ルティア殿下……いや、俺のルティア。この世界にはもう俺と貴方しか居ない。この暗闇の楽園でふたりっきりで愛し合いましょう」
熱い呼吸が首筋に当たり、その厚い舌が首筋に触れた。
その瞬間、何かが切れるのが分かった。
「嫌だ!!」
そう叫んで思いっきり蹴り飛ばしたところ、その腕から逃れられたので僕は走っていた。
間違いなく、あの腕の主はレフだったが、こんな暗闇の中で襲われるのは嫌だと素直に思ったし、何より『暗黒の森』のせいかレフは正気じゃない。
(そうでもないとあんなことをレフが口にする訳がない、いや、するかもしれないが、するかな??)
思考が予想外の事態に纏まらないが、僕は最早、唯一の光源に向けて走るよりほかなかった。
そうして光源に辿り着いた時、僕はその場所に立つ人と目があった。
その場所は、森の切れ目ではなく岩場であり光り輝いていたのは、その人の体が光り輝いていたからだ。
「国王陛下」
掠れた声でやっと吐き出した言葉。しかし、その顔に浮かんだ表情は苦悶だった。
よく見れば、国王陛下の手には鋭い鉤爪が生えていて、体には大小の傷が付いて背中には白い翼が生えていた。
そして、いつも整っていた服装もボロボロで髪型も乱れており、真っ赤な瞳から涙を流すその姿に、体が今更ガクガクと震えた。
「あっ……あああ!!」
叫びをあげながらその人はこちらに近づいてきた。
(……殺されるのか??)
死にたくはない、死にたくはないが殺したくもない。
僕はこの人に死を与えられたし、僕を愛してくれていた母を死に追いやった。
だから、許せないはずなのだ。
愛より憎しみが勝るはずだ、いつもいつも僕は愛されなかったのだから。
(けれど、やはり殺したくない!!)
そんな僕の気持ちなど分からないように、国王陛下、父上、いや、『狂った竜王』は僕の方へ鋭い爪を向けた。
僕は瞳を強く瞑り、死に至る痛みを受け入れようとした、その時……。
「ルティア!!」
聞き慣れた慟哭の後に、抱きしめられたのがわかった。
「グッ……」
『狂った竜王』の光に照らされた先に、口から血をこぼしているレフの顔がはっきりと見えた。
「レフ??」
微笑んだその顔は穏やかで優しいもので、先ほどまでの狂気は消えていた。
胸から血を流すその姿は、明らかに致命傷を負っていた。
しかし、それでも、レフは『狂った竜王』に向き直り叫ぶ。
「俺が、お前を倒す」
7
お気に入りに追加
893
あなたにおすすめの小説

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。
勇者パーティーハーレム!…の荷物番の俺の話
バナナ男さん
BL
突然異世界に召喚された普通の平凡アラサーおじさん< 山野 石郎 >改め【 イシ 】
世界を救う勇者とそれを支えし美少女戦士達の勇者パーティーの中・・俺の能力、ゼロ!あるのは訳の分からない< 覗く >という能力だけ。
これは、ちょっとしたおじさんイジメを受けながらもマイペースに旅に同行する荷物番のおじさんと、世界最強の力を持った勇者様のお話。
無気力、性格破綻勇者様 ✕ 平凡荷物番のおじさんのBLです。
不憫受けが書きたくて書いてみたのですが、少々意地悪な場面がありますので、どうかそういった表現が苦手なお方はご注意ください_○/|_ 土下座!

アルファな俺が最推しを救う話〜どうして俺が受けなんだ?!〜
車不
BL
5歳の誕生日に階段から落ちて頭を打った主人公は、自身がオメガバースの世界を舞台にしたBLゲームに転生したことに気づく。「よりにもよってレオンハルトに転生なんて…悪役じゃねぇか!!待てよ、もしかしたらゲームで死んだ最推しの異母兄を助けられるかもしれない…」これは第2の性により人々の人生や生活が左右される世界に疑問を持った主人公が、最推しの死を阻止するために奮闘する物語である。
その男、有能につき……
大和撫子
BL
俺はその日最高に落ち込んでいた。このまま死んで異世界に転生。チート能力を手に入れて最高にリア充な人生を……なんてことが現実に起こる筈もなく。奇しくもその日は俺の二十歳の誕生日だった。初めて飲む酒はヤケ酒で。簡単に酒に呑まれちまった俺はフラフラと渋谷の繁華街を彷徨い歩いた。ふと気づいたら、全く知らない路地(?)に立っていたんだ。そうだな、辺りの建物や雰囲気でいったら……ビクトリア調時代風? て、まさかなぁ。俺、さっきいつもの道を歩いていた筈だよな? どこだよ、ここ。酔いつぶれて寝ちまったのか?
「君、どうかしたのかい?」
その時、背後にフルートみたいに澄んだ柔らかい声が響いた。突然、そう話しかけてくる声に振り向いた。そこにいたのは……。
黄金の髪、真珠の肌、ピンクサファイアの唇、そして光の加減によって深紅からロイヤルブルーに変化する瞳を持った、まるで全身が宝石で出来ているような超絶美形男子だった。えーと、確か電気の光と太陽光で色が変わって見える宝石、あったような……。後で聞いたら、そんな風に光によって赤から青に変化する宝石は『ベキリーブルーガーネット』と言うらしい。何でも、翠から赤に変化するアレキサンドライトよりも非常に希少な代物だそうだ。
彼は|Radius《ラディウス》~ラテン語で「光源」の意味を持つ、|Eternal《エターナル》王家の次男らしい。何だか分からない内に彼に気に入られた俺は、エターナル王家第二王子の専属侍従として仕える事になっちまったんだ! しかもゆくゆくは執事になって欲しいんだとか。
だけど彼は第二王子。専属についている秘書を始め護衛役や美容師、マッサージ師などなど。数多く王子と密に接する男たちは沢山いる。そんな訳で、まずは見習いから、と彼らの指導のもと、仕事を覚えていく訳だけど……。皆、王子の寵愛を独占しようと日々蹴落としあって熾烈な争いは日常茶飯事だった。そんな中、得体の知れない俺が王子直々で専属侍従にする、なんていうもんだから、そいつらから様々な嫌がらせを受けたりするようになっちまって。それは日増しにエスカレートしていく。
大丈夫か? こんな「ムササビの五能」な俺……果たしてこのまま皇子の寵愛を受け続ける事が出来るんだろうか?
更には、第一王子も登場。まるで第二王子に対抗するかのように俺を引き抜こうとしてみたり、波乱の予感しかしない。どうなる? 俺?!

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。
※(3/14)ストック更新終わりました!幕間を挟みます。また本筋練り終わりましたら再開します。待っててくださいね♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる