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13.兄妹の確執~ショタじじいを添えて
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「王家は我が公爵家が親類だからといって侮りすぎだ。しかし、今の段階では白い粉を持っていたメイドは我が家で雇っていたメイド。エミリーがそれを渡しているところを偶然見たメイドも我が家のメイドだ。だから今の証拠では弱く、婚約解消は難しいと思うのだが……」
「それなら問題ありません。毒を盛ったから婚約解消をするのではなく、私の病を原因として婚約を解消するのですから」
私ではなくフアナがシレっと言い切る。確かにこの体は『眠り姫』におかされている。これについて私の前世の知識により今はフアナも知っている。
けれど、だからこそ私はこの発言に驚いていた。フアナは物語の中では最期まで王太子を愛していた。だからこそ自らの残り少ない命を犠牲にしてでも幸せになってほしいと願った。
そう考えた時、何故かある光景が脳裏に浮かぶ。それはフアナが、王妃教育で虐待された時と同じように生々しい感覚ではっきりと私に伝わった。
まちがいなく王城の一室だが、酷く簡素で飾り気のないその部屋はまるで窓のない牢獄のようだと感じる。ただ、牢獄との違いはそこに鉄格子はない。
すぐにその部屋が『告解』のための部屋だと私にもわかった。本来は神へ自身の罪を懺悔する部屋に似つかわしくない黄金のような髪と、青い瞳、そして美しい顔なのにそれ以上に傲慢さがにじみ出ているフアナの婚約者で初恋の人のはずのジュリアス王太子が冷たい床に座らされているフアナの前にまるで神父でもあるように立っている。
「フアナ、僕は絶対にお前を愛することはない。僕はいつかあの少女と出会い幸せになるからな。けれど婚約者としての義務は最低限果たしてやるけれどそれ以上を望むことは許さん」
「……はい」
ジュリアス王太子の言葉に答えたフアナの声には、私が想像していたような恋情はなくあるのは無関心さだけだった。
その光景を見た後に、私はなぜ前世のゲームでフアナはこんな人物のために死ぬことを選んだのか疑問に思った。もしかしたら前世のゲームと現実はちがうのではないかと。
私の意識がフアナの記憶から戻った時、何故かカールの顔色が真っ青であることに気付いた。
「病って、どういうことだ!?王家は、フアナが病に侵されているのにそのまま放置していたのか??」
(それをずっと私を避けて義妹と仲良くしていたお兄様が言うのですか)
心の中にフアナの怨嗟の言葉が浮かぶ。けれど、私はちがう感想を持っていたので熱い想いをカールにぶつけることにした。
「ええ、そうです。話は変わりますがお兄様は私がなぜ嫌いなのですか??」
「嫌いなわけないだろう!!むしろずっと心配していた。でも……」
勢いよく返した割には最後は妙に尻つぼみになるカールに、さらに畳みかけた。
「てっきり義妹の方が可愛いからとずっと思っておりました。けれど、そうでないならなぜ助けてくれなかったのですか??」
「……フアナ、ひとつ教えてほしい。お前は俺の顔を見てどう思う??」
質問に答えず質問で返すという最悪の返しをしてきたカールの性根に気合を入れたくなる衝動を抑えながら、率直に答える。
「キンパツヘキガンダナーっと思います」
「はっ??お前ふざけてるのか??」
何故かキレ気味に返されたので余計にムカついて再度答える。
「そうですね、まぁ整っている方だとは思いますが上には上がいますからね」
と絶世の美少年じじいであるアインハルトを見つめて答える。確かにカールはそこそこ良い顔ではあるが前世風に言うなれば廃嫡される貴族の子みたいな顔をしている。
つまり残念なイケメンタイプだ。
「……いんじゃないのかよ??」
「聞こえないのでもう一度言ってください」
蚊の鳴くような声で囁かれたので少しキレ気味に返す。すると今度はありえないくらいの大声で、
「俺の顔を見ると母親のことを思い出すから辛いんじゃないのかよ!!」
と思ってもいないことを返された。
「それなら問題ありません。毒を盛ったから婚約解消をするのではなく、私の病を原因として婚約を解消するのですから」
私ではなくフアナがシレっと言い切る。確かにこの体は『眠り姫』におかされている。これについて私の前世の知識により今はフアナも知っている。
けれど、だからこそ私はこの発言に驚いていた。フアナは物語の中では最期まで王太子を愛していた。だからこそ自らの残り少ない命を犠牲にしてでも幸せになってほしいと願った。
そう考えた時、何故かある光景が脳裏に浮かぶ。それはフアナが、王妃教育で虐待された時と同じように生々しい感覚ではっきりと私に伝わった。
まちがいなく王城の一室だが、酷く簡素で飾り気のないその部屋はまるで窓のない牢獄のようだと感じる。ただ、牢獄との違いはそこに鉄格子はない。
すぐにその部屋が『告解』のための部屋だと私にもわかった。本来は神へ自身の罪を懺悔する部屋に似つかわしくない黄金のような髪と、青い瞳、そして美しい顔なのにそれ以上に傲慢さがにじみ出ているフアナの婚約者で初恋の人のはずのジュリアス王太子が冷たい床に座らされているフアナの前にまるで神父でもあるように立っている。
「フアナ、僕は絶対にお前を愛することはない。僕はいつかあの少女と出会い幸せになるからな。けれど婚約者としての義務は最低限果たしてやるけれどそれ以上を望むことは許さん」
「……はい」
ジュリアス王太子の言葉に答えたフアナの声には、私が想像していたような恋情はなくあるのは無関心さだけだった。
その光景を見た後に、私はなぜ前世のゲームでフアナはこんな人物のために死ぬことを選んだのか疑問に思った。もしかしたら前世のゲームと現実はちがうのではないかと。
私の意識がフアナの記憶から戻った時、何故かカールの顔色が真っ青であることに気付いた。
「病って、どういうことだ!?王家は、フアナが病に侵されているのにそのまま放置していたのか??」
(それをずっと私を避けて義妹と仲良くしていたお兄様が言うのですか)
心の中にフアナの怨嗟の言葉が浮かぶ。けれど、私はちがう感想を持っていたので熱い想いをカールにぶつけることにした。
「ええ、そうです。話は変わりますがお兄様は私がなぜ嫌いなのですか??」
「嫌いなわけないだろう!!むしろずっと心配していた。でも……」
勢いよく返した割には最後は妙に尻つぼみになるカールに、さらに畳みかけた。
「てっきり義妹の方が可愛いからとずっと思っておりました。けれど、そうでないならなぜ助けてくれなかったのですか??」
「……フアナ、ひとつ教えてほしい。お前は俺の顔を見てどう思う??」
質問に答えず質問で返すという最悪の返しをしてきたカールの性根に気合を入れたくなる衝動を抑えながら、率直に答える。
「キンパツヘキガンダナーっと思います」
「はっ??お前ふざけてるのか??」
何故かキレ気味に返されたので余計にムカついて再度答える。
「そうですね、まぁ整っている方だとは思いますが上には上がいますからね」
と絶世の美少年じじいであるアインハルトを見つめて答える。確かにカールはそこそこ良い顔ではあるが前世風に言うなれば廃嫡される貴族の子みたいな顔をしている。
つまり残念なイケメンタイプだ。
「……いんじゃないのかよ??」
「聞こえないのでもう一度言ってください」
蚊の鳴くような声で囁かれたので少しキレ気味に返す。すると今度はありえないくらいの大声で、
「俺の顔を見ると母親のことを思い出すから辛いんじゃないのかよ!!」
と思ってもいないことを返された。
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