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最終章『妖精世界』

Act.41:結界

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「結界と言うのは元々は私たち精霊が身を守るために使っていた魔法です。範囲の調節も自由に出来ます」
「魔法少女の魔力装甲みたいな?」

 お茶菓子を口にしながら、ティターニアは話を続ける。

「当たらずといえども遠からず、ですかね。ただ魔物に効果があったのは予想外でしたが」

 なるほど。
 魔力装甲に近いのだろうけど、違うと言う事かな。ちょっと良く分からないが、取り合えず、身を守るための魔法だって言うのは理解できたかな。
 それとやっぱり、魔物に効果があった事についてはティターニアも予想外だったようだ。結界と言う魔法……あって良かったと言うべきか。

「って、司!? 何でティタ様がこちらに居るんですか!?」
「あ、ラビ。いや、こっちに来たいって言ってたから……こっちはこっちで聞きたい事あったし」
「……」

 驚いた顔でわたしとティターニアを交互に見るラビに、説明する。
 まあ、正確には教えるからこっちの世界に来たいっていう交渉というか交換条件なのだが……。

 精霊たちにとって魔力のない場所や、薄い場所は有害でそれはティターニアにも言える事だ。地球は魔力が既に循環しているので、来る事自体は問題無かった。
 十分な量の魔力があるしね。精霊の森程ではないけど、それでも普通に居られるくらいはあるっぽい。ティターニアがこっちに来た時に言ってた。

「(大丈夫なのですか? 地球は一応魔力はあるとはいえ精霊の森程は無いですけど)」

 そう耳元でわたしにだけ聞こえる声でラビが話してくるが、多分それ意味ないよ。だってティターニアは心読めるみたいだし、多分この会話も聞こえてるんじゃないかな。

「問題ありませんよ。確かに精霊の森よりは少ないですけど、別に支障が出るレベルではありませんし、むしろ程良い感じですね」
「……そう言えば心が読めるんでしたね」
「読めない時もありますけどね」

 ほらね。

「精霊の森の魔力が正直な所、異常なだけですよ。精霊たちが住んでいますし、植物も元気なので」
「異常って、精霊王が言うの……」
「一応事実ですしね。あそこまでではなくても、普通に暮らせますよ。地球のこのくらいの魔力は丁度良い感じですね」
「そうなんだ」

 魔力が丁度良いとか、わたしには良く分からないけど、少なくとも精霊王のティターニアにとっては丁度良い感じらしい。

「話を戻しますが、結界は一度張ると、壊されるまではその場に残り続けます。ですが、定期的に手入れをしないと、自然と消えていってしまいます。結界の維持と言うのはこの手入れの事ですね。まあ、特に難しい事ではなく、魔力を注ぐ感じですけどね」
「へえ……」
「今回精霊たちが元気になったので、そう言った手入れについては彼女たちに任せられると言ったのもそう言う事です」
「結界については分かった。それで、その結界ってこっちでも使えるの?」

 結界については理解できた。定期的に魔力を注ぐことで、半永久的に張り続けられる。ただ魔力を注がずにおいておくと、自然消滅してしまうと言うのも分かった。
 そんな結界は、魔物を退ける効果がある……これはティターニアも言っていた通り、予想外ではあるものの魔法少女以外に魔物に対抗できる手段とも言える。
 魔石を動力にして、張ることも出来るかもしれない……それが本当であれば、地球の魔物への対抗手段が増える事になる。

 更に言えば、魔力を寄り付かせない。つまり結界を家とかに張っておく事で魔物の被害を防げるかもしれないというのもある。

 と言っても、問題なのが結界はわたしたちでも使えるのかと言う所。使えるのであれば、さっき言った事が実現するかもしれないが、使えないのであれば意味がない。
 ティターニアが張れるので、彼女に張ってもらってそれらをわたしたちが維持するって言うのも可能だろうけど、それだとティターニアに依存する形になってしまう。

「張れるとは思いますが、使えるかは別ですね」
「だろうね」

 何となく予想はしていた。
 張れるとしても、結界と言う魔法を使えるかはまた別の話になる。魔力があれば、一応誰でも使えるかもしれないが、魔法は現状魔法少女しか使えない。

「その魔法少女しか使えないって言うのが、こちらとしては不思議ですね」
「ん」
「魔法は本来、魔力さえあれば練習する事で使えるはずなんですけどね……妖精世界では誰もが普通に使ってましたし」

 妖精世界の魔法についてはラビとララに少し聞いた事がある。
 まず、大前提として魔力を持っている事が条件となる。妖精たちは全員魔力を持って生まれて来るので魔力がある=普通、というのは共通一般常識となっている。

 だが、それは妖精世界での話。
 別世界である地球には、魔法なんてなかったのでそんな常識があるはずもない。むしろ、魔法なんて迷信と言う感じだし。
 なので、まず魔法を使える大前提は”魔力を持っている”事にある。

 昔は魔力なんて存在してなかったが、今では地球全体に魔力が空気と共に回っている。そして空気と一体化しているので、その空気を吸う動植物は知らぬうちに体内に魔力を蓄積している。
 既に地球人は全員、魔力を持っていると言っても過言ではないと思う。だから一応、その大前提はクリアしているはずなのだが、現状魔法少女しか使えないと言う感じだ。

「地球人が魔法を使えないのは、魔法と言う存在を信じてない、使えないだろう、という意識が原因かもしれませんね」
「え?」
「魔法少女しか使えない。そんな認識があるから、使えないのだと思ってますよ。まあ、実際見た訳ではないので、先ほどまでの話から推測しただけですが」
「魔法少女しか使えない……」

 確かに。
 魔法と言うのは、魔法少女しか使えないというのが常識になっている。だから、一般人とかは魔法が使えないでいる。
 魔法少女も変身しない姿では、魔法が使えない。それだって、変身しないと魔法は使えないと言う常識があるから……ティターニアが言ってる事は一理あるのかもしれない。

「地球は科学という文明を築いてましたし、魔法なんていうのは信じてないでしょう。今では信じてると言うか実際存在しているので、違うでしょうが、それでも魔法を使えるのは魔法少女だけ、っていう共通認識があるのではないですか?」
「あるね」

 わたしもそうだ。
 魔法少女しか、魔法は使えない。変身しないと魔法は使えない……それらがもう常識として頭の中にある。

「でもまあ、それで良いのだと思いますよ?」
「?」
「もし、魔法が使えていたら……一般人がその力を使って国を襲うかもしれませんし、反対に国が国民たちを脅したりするかもしれません。そして戦争でも、恐らく魔法は使われるようになるでしょう」
「……」
「調べた限りでは、兵器というものがあるようですが魔法はそんなのは必要なく、魔力さえあれば使えます。それに中には広範囲を爆発させる魔法だってありますし、戦争自体も魔法メインになるかもしれません」
「それは確かにそうだね」

 と言うか何時調べたのだろうか。気にするだけ無駄かな?

 魔法少女の使える魔法が、一般人が使えたらどうなるか……回復系ならまだ良いが攻撃系のものだったら確かに大変なことになってるだろう。
 今はまだ魔物が居るから良いが、そのうち今度は魔法少女を利用して何かを起こす、なんてことを考える輩も出て来る可能性も考えられる。

 魔物が消えたら魔法少女の力も消えるとかなら、良いのだがそのまま残るとなると……うん。考えるのはやめよう。

「なので、魔法が普通に使える世の中にはならなくて良いと思います、地球は。今までの科学技術でここまで来たのですから」

 地球は科学を築き、ここまで発展してきた。
 確かにここまで折角来たのに、その文明が崩壊してしまうのは望ましくない。魔石とかだって、魔物からしか確認出来てない訳で、魔物が居なくなったら手に入らなくなる。
 ただ、地球は魔力を持つ惑星になっているので妖精世界みたいに、あっちこっちで魔石が手に入ると言う時代が来るかもしれないけどね。

 今後、地球はどうなるのかは分からない。
 仮に魔石が手に入るようになったら……それを科学を組み合わせてより便利な世界になるなら良いけどね。それ言うと魔導砲とかも普通に戦争で使われるようになるのかな。

 それを考えると、ちょっとばかし魔物はもうしばらく居て欲しいと思ってしまうのは、おかしいだろうか。



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