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最終章『妖精世界』

Act.17:ブラックリリーの真意

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「送信っと」

 今日もまたブラックリリーと会って話をして、家へと戻ってきている。
 今、何をしたのかと言えば、今度の土曜日の情報を二人に送信しただけである。今度の土曜日の15時頃と予定を立てていたので、それをブラックリリーに話した所、彼女も問題ないという事で日程が確定したのだ。
 それをホワイトリリーとブルーサファイアに伝えるためにCONNECTでメッセージを送った感じだ。

 これで、ほぼ決定したという事になるだろう。

「それにしても」

 ブラックリリーに渡された一枚の地図を見る。
 明日はここに来て欲しいと言われた。この場所は、特にお店とかの場所でもなければビルや、裏通りとかそう言う所でもない場所だ。

 ネットのマップを見ても同じで、一つの家がある場所だった。そんな家を集合場所にするという事は……ここは多分、恐らくブラックリリーの家なんじゃないかと思ってる。
 赤の他人の家の前っていうのは、考えられないし……そうなると、何故自分の家を場所にしたのか? まだ彼女の家だっていうのは決まってないが。

『分かりました』
『了解』

 そんな事を考えていると、二人から返信が来る。
 大丈夫だっていうのは前もって知っていたので、このメッセージは確認用というべきか。取り合えず、予定に変更はなく、二人も問題ない事を確認出来たので、この予定は決定となる。

 ただ集合場所っていうのが、魔法省のビルの屋上なんだよね。
 え、そんな場所使って良いの? と思ったんだけど、どうやらホワイトリリーが茜にお願いしたら、気を遣ってくれたのか、使ってOKとなったらしい。

 ホワイトリリーとブルーサファイアの二人が屋上を選んだ理由は分からないが、受付通って建物内に入ると以前のわたしのように目立つだろうし、それも踏まえてるのかな?
 当日は受付から入らなくても、直接屋上に行って大丈夫だそうだ。普通は屋上から入るとか、あり得ない話だが、魔法少女の身体能力は中々えぐいので、余裕で行けるだろう。

 それに、すぐ近くに丁度良い感じの建物があるからそこに登ってから、飛び移ることも可能だろう。

 ただ多分、わたしの場合は一回のジャンプで行けそうな気はする。というか、あの辺にあるビルなら全部一回で飛べるし。他の魔法少女は分からないけど、身体能力はラビが干渉してもしてなくても、同じくらいっぽいし余裕で行けるのかもしれない。

 まあ、ホワイトリリーとブルーサファイアの場合は魔法省内から普通にエレベーターと階段を使って登れるだろうけど。

 ブラックリリーについては、あの子テレポートというチートな魔法を使えるので、それで一瞬だろう。他にも空間を作って足場にして登るという事も出来るだろうし。

 そうなるとわたしだけ、何とも言えない手段だな……いやまあ、別に気にしてないけど。

「どうかしましたか? あ、司。そんな体勢で居ると見えますよ」
「ん……」

 あ、そうだった。
 今のわたしはスカートを履いているから、こんな体勢してると見える。何がとは言わないが。体勢を直して、スカートを手で押さえて整える。

「髪もちょっとぼさぼさになってますね。私がやりましょうか」
「別に……ん、よろしく」

 自分で出来るから断ろうと思ったらラビが何か悲しげな顔を見せたので、ついついOKを出してしまった。すると、ラビの顔が一転してパアッと明るくなった。そんなやりたかったの?
 いつの間にか手に持ってた櫛を使って、わたしの長い髪を整え始める。自分でやっていたときは何とも感じなかったけど、他人にやってもらうと何かくすぐったさがある。

「ん」
「やっぱりサラサラしてますね。手入れも慣れたみたいですし」
「あれだけみっちり言われたら、嫌でも慣れる」
「あははは。真白は、思ったよりスパルタでしたね」

 そうなのだ。
 真白の指導というか、教えというか……結構スパルタだった。日常の中でも常に真白が居たし、時には隠れていて、わたしが何かミスするとスッと出てきて注意してくるし……うん、気が抜けなかったよ。

 でもまあ、わたしを思っての事だったし、これを選んだのもわたしだったので何とか頑張ったけど。そうしているうちに、もう慣れた。慣れって怖いよね……知らぬうちに身についてるし。

「ちょっとくすぐったい」
「それは我慢してください」

 くすぐったいけど、別に嫌な感じではない。というか、他人にやってもらうと言うのが何処か心地良さがあって、ついついウトウトしてしまう。

「って、何やってるの」
「いえ、髪型変えたらどんな感じかなと思いましてついつい、好奇心が勝ってしまいまして」
「……」

 そう言いながら手で髪型を作るラビ。
 仕方がないな……ツインテールにしたり、ポニーテールにしたりとか色んな髪型を試しているようだ。というか、ラビってお姫様だよね? 何でそんなに上手なの?

 だってほら、王女とかってメイドさんにやってもらうようなイメージが強いし……偏見だけど。

「王女とは言え、私はどちらかと言うと変わってる方の王族ですからね。確かに大体はやってもらっていましたが自分でも出来るようにしてましたよ」
「自分で言っちゃうんだ」
「まあ、本当の事ですしね」

 確かに王族が自分で色々するのは変わっているのだろう。
 と言っても、そういった王国とか王様とかの話なんて地球ではないし、大体がライトノベルとかでの知識でしかない。後は昔あった絶対王政の事くらいか?

「うーん」
「どうかした?」

 髪を梳かしながら、何かに悩んでいるようなラビの声に首を傾げる。

「いえ、司の髪型、色々試してますけどどれもしっくり来ないですね」
「ん」
「何というかこれじゃない感というか……」
「ふーん?」
「どの髪型も似合ってるとは思いますけど、一番はやっぱりストレートですねえ」
「そう? まあ、ストレートが一番楽だし」

 髪型変えるのが面倒だし、考えるのもちょっと面倒。一番簡単なのはそのままのストレートだろう。まあ、長い髪なので時々邪魔と感じる事はあるけど、個人的にはストレートが一番好きである。
 魔法少女に変身したとしても、髪は結ばれずストレートのままだしね。そもそも、とんがり帽子なんだよなあ……とんがり帽子を被ってる状態で髪を結ぶのはありなのだろうか。

「自分の好みですからね、髪型なんて」
「ん」
「っと、終わりました」

 途中、髪型で遊ばれたが、ちゃんと梳いてくれていたので、さっきのボサボサした感じはなくなっている。自分でやる事も慣れたから出来るけど、たまに他人にやってもらうのも案外良いのかもしれないな。

「ありがとう、ラビ」
「いえいえ!」

 それで話を戻すけど、ブラックリリーがこの場所を選んだ理由が分からない。仮にここが彼女の家だとすると、わたしに正体をバラすつもりなのだろうか。

「どうかしましたか? ああ、彼女の事ですね」
「ん」
「何故、明日はこの場所にしたんでしょうね……」
「分からない」

 明日ここに行けば全て分かるだろうけど……ふと、ブラックリリーがわたしに友達になって欲しいと言っていた時の事を思い返す。あの時の彼女は何処かいつもとは違う感じだったな。
 今までの喋り方とかでついていたイメージが、崩壊したよ。いや、別に駄目という訳ではなく、あまりの変わり様にちょっと驚いていた。

 友達という存在に憧れていたとも言ってた。
 ……過去何か、あったんだろうか? ブラックリリーのリアル事情は分からないけど、もし何かあるのであれば……相談して欲しいな。折角友達になったんだから。

 烏滸がましいかもしれないけど、わたしとしてはブラックリリーも守るべき対象の一人だ。だからこそ、何かあるのであれば話して欲しいなとは思ってる。
 と言っても、こちらから無理に聞き出すような事はしないし、するつもりもないけど。

「明日行けば、分かりますか」
「だね」

 理由は分からないけど、彼女がこの場所を指定したのであればわたしはそれに従おう。別に拒否する必要もないしね……ここからは少し遠くなるけど、魔法少女になっていればあまり変わらない。

 気にはなるけど、明日本人から聞くまではこの疑問とかは仕舞っておこう。



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