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第三章『真白襲来!?』

Act.12:シスター✕クリスマス②

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 ファミレスにてお昼をとった後、俺たちは再び車へと乗る。運転席には俺が、助手席には真白が座る形だ。特に目的地もないが、ドライブだしそんなもんだろう。

「お兄、何処に行くの?」
「ドライブだしな、行き先なんて無いさ」
「それもそうだねー」

 車を走らせ、道路を進んでいく。特に向かう目的地はないが、ひたすら進んでいくだけ。同じ道路でも、ずっと進めば景色も変わってくるし、そういうのも良いだろう。

「ふふ」
「何だ、真白楽しそうだな」
「うん! お兄と二人で出掛けるのは久しぶりだなって思って、ついつい」

 確かにそうだな。
 真白は大学に行ってしまったから、あまり会えないしこうやってのんびり出掛けるのは久し振りかもしれない。対する俺はニートであるのは突っ込まないでくれ。

「取り敢えず北の外れまで行ってみるかー」
「北の外れって言うと、北茨城市?」
「だな。中に入れば他にも外れはいくつもあるけどな」

 特に理由はないが、まあ、ドライブだしこういうのも良いよな。国道を走り抜け、見慣れた景色が続く。やっぱり国道なので、混んでいるのは仕方がないか。クリスマスだしな……。

「この辺はあまり変わらないね」
「まあ、国道沿いだしなー。でも潰れた店や新しく出来た店も一応はあるな」

 昔はやっていた店が気が付けば、閉まっていたり、新しいお店になっていたりとか良くあるよな。仕方がない事とは言え、実際行ったことある所とかだと、何か寂しくなる。

「……」

 しばらく道なりに進んで行けば、周りの風景も変わっていき、数時間ほど走らせた所で茨城県の北の外れ、北茨城市へと入る。そこで一度、近くにあったコンビニへと入る。
 ちょっと疲れたしな……それに、喉も少し乾いたし。

 しっかし、長距離を車で移動するなんていつ振りだろうか? 車は良く乗るけどそんな遠くには行ったりしてなかったし、結構久し振りかもしれない。
 まあ、一人でドライブなんてちょっと寂しいしな。いや、そういうのが好きな人も居るし、これは俺の感覚か。

「真白、喉乾いただろ。ここで一旦休憩しよう」
「うん!」

 駐車場に車を止めて、降りる。

「うぅ、寒っ」
「だな。すっかり冷え込んじゃってな」

 真冬、と言えば良いだろうか。
 何か喋ったり、口を開けたりすると白い息が出る。これもまた冬の風物詩だよな……流石にずっと外にいるのは寒いので、そのまま真白と一緒にコンビニの中へと入るのだった。



□□□



 コンビニの中に入ると、暖房が効いていてさっきまでの寒さは無くなる。と言っても、外に出ればまた寒くなるんだけどね。
 私のちょっと前を進むお兄を見る。いつ見てもぱっとしない服装を好むなあと思う。でもそれがお兄には似合っているんだけどね。

 お兄は昔からあまり変わってない。
 何ていうのかな……自己評価が低いとかそういう感じ。お兄は自分の事今じゃ冴えないおっさんとか言ってるけど、流石にそれは言い過ぎだと思う。

 ぱっと見では、おっさんではなくまだ十分青年と言えると思う。顔も普通よりは上だしね。そして何より、誰に対しても優しい。

 これはお兄の良い所でもあるけど、反対に悪い所でもある。実際、お兄って何人かに学生時代に告白されたって聞いてる。その中に同級生の子も居たらしい。
 ……本当にお兄は。

 今も、私の歩幅に合わせて歩いてくれているし、無自覚なんだろうなぁ。お兄はそういう人だもんね……でもだから私はお兄を好きになった。

 ゲームだって、私が負けてばっかりで泣きそうになった時とか、しっかり見ておかないとわからない感じでわざと負けてくれてた。それを適度にやって如何にも良い勝負してますという雰囲気を出していたし。
 昔、私が迷子になった時だって真っ先に私を見つけてくれて……他にもナンパにあっていた時とかも、いつも助けてくれていた。
 ナンパくらい、よくされてたから対応は出来たと思う。でもお兄が助けてくれた時は嬉しいって思った。

 小さい頃からずっと、そばに居てくれたお兄。勿論、今はもう居ないけど……お父さんやお母さんも好きだったけど、いつの間にか私の中でお兄という存在が大きくなっていた。

 お父さんとお母さんが亡くなった日だって、お兄は自分も悲しいはずなのに私の事を心配してくれてた。でも知ってる、お兄もこっそり部屋で泣いていたという事を。

 そう言えばお兄の学生時代の話って、あまり聞かないな。
 告白されたって事とかは、聞いてたけど……。

「真白は何にする? 買ってやるよ」
「いやお兄、私も一応それなりのお金はあるからね?」
「知ってるけど、兄としてな? それに久し振りに会ったんだから飲み物くらいは買わさせてくれ」
「ふふ。ありがとうお兄」

 本当にお兄は優しい。
 まあ、だから魔法少女の二人にも好意を抱かれたんだよね。やっぱり、予想通りというか……それでちょっと苦労してるみたいだね。

 でも、お兄を好きになる気持ちは分からなくない。私も好きだった……いや、まだ好きなんだから。

 リュネール・エトワールの時は無口キャラを演じてるみたいだけど、お兄本来の性格は全然変わってない。だから二人も恋に落とさせちゃったんだろうな、罪なお兄だよ。

「じゃあ、私もこれで」
「俺と同じ物で良いのか?」
「うん」

 私が選んだのは無糖のカフェラテである。お兄も同じのを選んでたみたい。別に、お兄が選んでたから私も選んだという訳じゃないよ? 私も無糖のラテ結構好きなんだよね。

「コンビニもクリスマスだねー」
「だなー」

 商品をカゴに入れて、私たちはレジへと向かう。思ったよりお客さんが多く、並んでいてレジも二台稼働しており、更に二人ずつ店員が着いているというフル稼働状態。
 コンビニの中は賑やかで、クリスマスソングやクリスマスのBGMとかが絶え間なく流れている。商品棚とかにも邪魔にならない程度に飾り付けもされている。

「帰りに残ってたらクリスマスケーキでも買おうか」
「いいねそれ! でも、当日って残ってるのかな?」
「むしろ当日の方が残ってそうな気がする」
「あー確かに」

 確かに当日よりも、前日の方が結構売れてるよね、ケーキって。勿論、当日も売れてるけどさ。

「他に買うものとかはないか?」
「大丈夫!」
「そうか。それならレジに行くか」

 私とお兄の飲み物以外にも、いくつかの商品をカゴに入れたお兄は、並んでいる列の後ろに続けて並ぶ。二人も並ぶと邪魔になりそうだから私は出入り口近くでお兄を待つ。

 しばらくして、レジ袋を持ったお兄が戻ってきた所でコンビニを後にする。

「うー寒い!」
「暖房が効いているところから出るとこうなるよな。とっとと車に行くか」
「うん」

 と言っても、車はすぐ近くなのでもう目の前にあるけどね。

「ん?」
「お兄?」
「真白、見てみろ」
「え?」

 車のドア近くに来た所で、お兄が足を止める。
 空を見上げていたので、私もお兄に促されるまま空を見上げれるとさっきまで太陽が出てた気がするのに、いつの間にか太陽が見えなくなっていて、代わりに厚い雲に覆われていた。さっきまで晴れてた気がするけど……あれ?

 ふと、空から何かが振っているのに気づく。雨……ではないね。これは……雪?

「雪……」
「おう。お前雪とか好きだっただろ?」
「うん」

 雪が積もった日は、お兄と一緒にいつものように雪だるまを作ったり、雪合戦したりしてたのを思い出す。でも、この辺でクリスマスに雪が降るって珍しい。

「この時期に雪が降るとはなー。いつも、2月くらいなのに」
「そうだね……って事は今年のクリスマスはホワイトクリスマスって事になるのかな?」
「まだ降り始めたばかりだから、今日中には流石に積もらないだろうけどな」

 積もらなくても取り敢えず、雪が降ったんだからホワイトクリスマスでいいよね?
 ふふっ……お兄と二人で出掛けたクリスマスがホワイトクリスマスになるって、ちょっと嬉しいかも。滅多に見られないよねこう言うのは。

「それっ!」
「って、真白!?」
「ふふっ、お兄大好き!」

 お兄の腕をがっしり掴んで私は、そう言ったのだった。


 来年も……良い事ありますように。

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