上 下
453 / 490
第五十二章 怒涛の2年生編

女体化すると、世界が変わる。

しおりを挟む

 女の子として、初めての授業を受けることになったアンナ。
 なぜか単位が認められて……2年生という扱い。
 全部、宗像先生が仕組んだものだ。

「どうせ、中身は一緒なんだから、単位も一緒でいい」

 すごく適当なやり方。
 じゃあ、十年以上も通っている妻子持ちでアラフォーの夜臼先輩にも、単位をあげて欲しいものだ。

 そんなことを考えていると、一時限目の教師が入ってきた。

「は~い。じゃあ数学Ⅰを始めますよぉ~」

 若い男性教師で、前年度に受けていた教科と同じ人だ。
 ちなみに、今年度から『数学Ⅰ』になる。
 動物園レベルの高校なので、去年受けていた教科は『数学Ⅰ入門編』だ。
 Ⅰの前があることに、驚きはしたが……。

「なんかドキドキしてきたよ。アンナ、お勉強が苦手だし……」
 と弱音を吐くアンナ。
 中身は、あのミハイルだからな。苦労するだろう。
「まあ、そんなに構えなくて良いと思うぞ? この高校はレベルが低いし」
「それはタッくんが頭良いからでしょ。アンナには無理だよ」

 あの……褒められているのに、全然嬉しくないんですけど。

  ※

 男性教師がマジックを使って、ホワイトボードに数式を書いてみせる。
 そして「この問題をノートに書いて。解けたら僕のところまで持って来て」と生徒たちに指示する。
 自力で問題を解き、教師のところまで持って行く……という行為は、一ツ橋高校の生徒からすると、ハードルが高いらしい。
 みんな困惑していた。
 
 アンナも同様だ。
「え、えぇ……どうしよう? あんな問題、解けないよぉ~」
「別に間違えても良いから、提出すればいい。怒られることはないさ」
「でもぉ~」
 と頬を膨らませるアンナ。
 カワイイ……俺が教えてあげたい。

 ~20分後~

 数学Ⅰと言っても、昨年習った入門編の延長だ。
 小学生レベルが、中学生へ進級したようなもの。
 天才の俺はサクッと問題を解いて、教師に提出。

 全問正解したので、あとはのんびりと授業が終わるのを待つ。

 俺以外に問題を解けたのは、おかっぱ頭の双子。日田兄弟。
 それと床で、勉強するトマトさんぐらいだ。

 あとの生徒たちは、みんなノートと睨めっこ。
 唸り声をあげてフリーズしている。

「ダメだよ……わかんない」
 アンナのノートを覗いたが、まだ一問も解けていない。
 俺が教えるわけにもいかないし、ここは黙って見守ろう。

 そう考えていると……。

 何やら辺りから、女子の笑い声が聞こえてくる。

「あ、そっか~♪ 簡単だぁ!」
「でしょ? 次の問題もね、こうして……」

 教師が生徒にヒントでも教えている。と思ったのだが。
 鼻の下を伸ばして、嬉しそうに女子生徒の肩に触れる。

「ここはこう」
「すご~い、先生!」

 忘れていた。
 この教師、昨年の期末試験で女子にだけ、堂々と解答を教えていたゲス野郎だ。
 男子は放っておいて、女子限定で答えを教えまくる。

 当然、アンナの番になると……。

「あ、きみ。全然解けてないじゃ~ん。ハーフで可愛いのにねぇ~」

 いやらしい目つきで、アンナを上から下まで眺める。
 舌なめずりをしながら。

「す、すみません……私、数学とか英語は苦手で」
 別に意識していないと思うが。アンナは座っているため、自ずと上目遣いになる。
 あの美しいエメラルドグリーンの瞳で。
 これには、教師も興奮してしまう。

「ふふ……そんなに気にしなくてもいいよ。僕は君みたいな子に教えるのが楽しいから、教師をやっているんだ♪」
 何を思ったのか、アンナの頭を撫で回す。

「ぐっ!」

 怒りのあまり、シャーペンの芯を折ってしまった。
 このまま立ち上がって、ゲス野郎を殴ろうかと思ったが。
 後ろの席にいた、ここあに感づかれ、肩を掴まれる。

(オタッキー。気持ちはわかるけど、ダメだよ。正体がバレちゃう)
(りょ、了解……)


「アンナちゃんって言うんだぁ。きみ2年生なの? こんな可愛い子なら、覚えているけどなぁ♪」

 左手で彼女の頭を撫で回し、右手で一緒にペンを持つ。
 完全に、密着状態。

 あ~、ぶっ殺してやりてぇ!
 しかし、アンナの単位がかかっている。ここは堪えよう……。

  ※

 結局、その後も数学の教師は、終始アンナにべったりで。
 他の女子生徒でさえ、放置。
 完全にえこひいきした状態で、授業は終わってしまった。

 アンナ自身は、答えを教えてくれたことに感謝していたが。
 俺は今からでもあのゲス野郎を、窓から突き落としてやりたかった。


 それから午前中の授業を、色々と受けたが。
 やはり、アンナだけ異常に優しく。特別な待遇を受けていた。
 特に男性の教師からは……。

 ミハイルが女装しただけなのに、こんなにも態度が変わるもんかね?
 なんか、とても複雑な気分だった……。
 
 俺のカノジョ役が可愛いのは知っているし、たくさんの生徒や教師から、優しくされるのも嫌ではない。
 でも……それだけの人たちから、視線を集めるということは。常に俺が気を張っていないとダメだ。
 男のミハイルだったら、こんなことはなかったのに。
 
 そうか。アイツなら、俺だけを見ていてくれて。
 他の人間が、寄ってくることもなかったのか……。


 昼休みに入り、アンナへ「お昼を一緒に食べないか?」と誘ったが。

「ちょ、ちょっと……お手洗いに」

 と3階へ行ってしまった。
 
 そうか。宗像先生がアンナ用に、3階の職員用トイレを貸してくれたんだ。
 なるほどね。というか、女装している時は、個室なのだろうか?
 座ってするのかな……。
 いかん、想像したら興奮してきた。

  ※

 20分経っても、教室に戻ってこない。
 これはさすがにおかしいだろうと、俺は心配になって、3階へと上がる。
 職員用トイレの前で、数人の男子生徒が誰かを囲んでいた。
 制服を着ているから全日制コース、三ツ橋高校の生徒だろう。

「ねぇ~ いいじゃ~ん。L●NEぐらい教えてよ~」
「そんなフリフリの服って、どこで売ってんの?」
「ハァハァ……きみさ。モデルのMALIAに似てない? だとしとら、許せないんだぶ~! よくも男とラブホテルへ行ったな! 貢いだ金を返せだぶ~!」

 最後の奴、色んな意味でヤバいよ。
 しかもマリアに貢いだって……レディースファッションを購入したのか?

「イヤッ!? 離して! アンナはタッくんとしか、L●NEしないの!」

 よく見れば、捕まっているのは伝説のヤンキーこと、金色のミハイルじゃないか。
 本当に女装したら、みんなから女の子として見られるんだね……。

 設定が悪いんだよな……。
 俺のために、非力な女子を演じているため、自慢の馬鹿力で対応できない。

 体重が激減した俺ひとりで、あの3人相手に勝てるかな……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

男子中学生から女子校生になった僕

大衆娯楽
僕はある日突然、母と姉に強制的に女の子として育てられる事になった。 普通に男の子として過ごしていた主人公がJKで過ごした高校3年間のお話し。 強制女装、女性と性行為、男性と性行為、羞恥、屈辱などが好きな方は是非読んでみてください!

女子に虐められる僕

大衆娯楽
主人公が女子校生にいじめられて堕ちていく話です。恥辱、強制女装、女性からのいじめなど好きな方どうぞ

トリビアのイズミ 「小学6年生の男児は、女児用のパンツをはくと100%勃起する」

九拾七
大衆娯楽
かつての人気テレビ番組をオマージュしたものです。 現代ではありえない倫理観なのでご注意を。

転職してOLになった僕。

大衆娯楽
転職した会社で無理矢理女装させられてる男の子の話しです。 強制女装、恥辱、女性からの責めが好きな方にオススメです!

女装とメス調教をさせられ、担任だった教師の亡くなった奥さんの代わりをさせられる元教え子の男

湊戸アサギリ
BL
また女装メス調教です。見ていただきありがとうございます。 何も知らない息子視点です。今回はエロ無しです。他の作品もよろしくお願いします。

二十歳の同人女子と十七歳の女装男子

クナリ
恋愛
同人誌でマンガを描いている三織は、二十歳の大学生。 ある日、一人の男子高校生と出会い、危ないところを助けられる。 後日、友人と一緒にある女装コンカフェに行ってみると、そこにはあの男子高校生、壮弥が女装して働いていた。 しかも彼は、三織のマンガのファンだという。 思わぬ出会いをした同人作家と読者だったが、三織を大切にしながら世話を焼いてくれる壮弥に、「女装していても男は男。安全のため、警戒を緩めてはいけません」と忠告されつつも、だんだんと三織は心を惹かれていく。 自己評価の低い三織は、壮弥の迷惑になるからと具体的な行動まではなかなか起こせずにいたが、やがて二人の関係はただの作家と読者のものとは変わっていった。

入社した会社でぼくがあたしになる話

青春
父の残した借金返済のためがむしゃらに就活をした結果入社した会社で主人公[山名ユウ]が徐々に変わっていく物語

処理中です...