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第四十三章 野郎ばかりのラブストーリー?
スキと言う気持ちさえ、あれば大丈夫!
しおりを挟むリキがほのかに片想いをしていると知って、一は今にも自殺しそうな顔で落ち込んでいた。
見兼ねた俺は、優しく彼の肩に触れる。
「なあ。お前が気になっているリキは多分、ノン気だ。それでも、お前はあいつに想いを伝えたい……というか。ズバリ、付き合いたいのか?」
言っていて、なんだか自分と境遇が似ている……気がするのは、勘違いですよね?
「た、例え! 僕の想いがリキ様に届かなくても良いんです! あの人のそばにいたい……それだけなんです!」
「ふむ。じゃあ、一はリキが変態女先生と付き合っている姿を見ても、受け入れられるってことか?」
「もちろんです!」
こりゃ、重症だな……。
一はかなり興奮している様子で、まだまだ喋り足りないようだ。
「リキ様が変態女先生と結婚しても、お子様を作られても……僕は良いんです。たまに求めてくれるなら……」
「え?」
耳を疑った。
「ぼ、僕はリキ様に呼ばれたら、すぐにイキます!」
「は? どこに?」
「それ以上は……言えません」
と頬を赤くして、俯いてしまった。
これ以上、関わりたくなかった俺は、すぐにこの場を去りたくなった。
でも、興奮した一を落ち着かせるため、リキの電話番号とメールアドレスを教えてあげた。
ついでに、俺のも。
憧れのリキ様の連絡先を知った一は、元気を取り戻し、笑顔で業務へと戻っていった。
なんか、一を見て思ったのだが、俺の周りって……。
性が曖昧……な人間が、多くないか?
※
博多社から逃げるように、飛び出して、俺は天神から博多方面へと向かう。
アンナとミハイルへのプレゼントを選びに、渡辺通りを軽く歩いてみたが……。
どうにも一人でショッピングをするのは、難易度が高すぎる。
ちょっとでも、アクセサリーショップに近づけば、化粧をバッチリ決めたお姉さんが寄ってくるからな。
店さえ探すのも億劫になった俺は、いつも通う商業施設。カナルシティ博多へとたどり着く。
映画しか見ない場所だが、何回か店は覗いたことがあるから、配置だけはなんとなく分かる。
地下一階にある噴水広場の近くに、アクセサリーや小物などを扱っている店が数件、並んでいた。
何人かの若い女性が群がっている店が、目に入る。
聞いたことのあるアクセサリーショップだ。
その名も『パワーーー! ストーンマーケット』
有名なチェーン店。
ここなら、ぼっちの俺でも選びやすいかもな。
店員もあまりグイグイこないだろうし……。
なるべく、女性の客とは近づかないように、品物を選ぶ。
痴漢に間違われたら、嫌だからね!
「……」
数十分、商品を一生懸命、眺めていたが……。
どれも全部、同じに見える。
一体、なにが良いんだ? これ、ただの石だろ。
そう思っていると、近くにいた若い女性店員が話しかけてきた。
「あのぉ~ ひょっとして……カノジョさんとかにクリスマスプレゼントとか、ですか?」
言われて、俺は反射的にビクッと身体を震わせてしまう。
カノジョという名前にだ。
まるで、彼氏みたいじゃないか!
「ち、違います。相手は女の子でして……。誕生日が近いんですが、どれがいいのか。さっぱりわからないんです」
ついつい弱音を吐いてしまう。
だが、お姉さんはニッコリと優しく笑ってくれた。
「大丈夫ですよ。男性のみなさん、結構そういう方が多いんです。良かったら、ご一緒にお探ししましょうか?」
「良いんですか……」
「もちろんです♪」
※
お姉さんが言うには、こだわりさえ無ければ、何でも良いとのこと。
しかし、その……何でも良いってのが一番困る。
黙り込む俺を見兼ねて、お姉さんがアドバイスをくれた。
「じゃあ、誕生石とか、どうでしょう?」
「なんです、それ?」
お姉さんに連れられて、たくさんの煌びやかな宝石が並ぶコーナーに来た。
天然石らしいが、正直これも俺には価値が分からない。
「12月がお誕生日なんですよね?」
「あ、そうです……」
「じゃあ、これなんて、どうです? タンザナイト」
そう言って、お姉さんが手に取ったのは、透き通るようなキレイなブルー。
光りの当て方によって、紫色にも見える。
とても不思議な宝石だ。
「あ、きれいですね……」
「でしょ? このタンザナイトを加工して、ネックレスやリング、ピアスにも出来ますよ♪」
「なるほど」
考え疲れた俺は、もうこの宝石に決めていた。
だが、問題が残っている。
どのアクセサリーにするかだ……。
「そう言えば……」
この前、スクリーングでミハイルとあった時、耳にピアスの穴を開けたと言っていたな。
なら、実用性も考えて、ピアスにしとくか。
相手は、アンナだけど。
やっとプレゼントが決まったことで、安心した俺は、すぐに店員のお姉さんへ注文と会計を頼む……が、すぐに加工できるわけではないらしい。
出来上がるのに、一週間ほどかかるようだ。
また、ここに来るのか……めんどくせ。
彼氏やってる奴らって、無駄に時間を浪費すんのか。
仕事じゃなかったら、ごめんだぜ。
※
アンナのプレゼントは決まったが、ミハイルがまだだ。
最初こそ、キッチン系のグッズにしようと思っていたが……。
そういう店を覗いても、宝石以上に訳が分からない。
結局、あいつの好きそうなキャラクターショップへと向かう。
男がネッキーの可愛らしいぬいぐるみを買うのは、恥ずかしいし、嫌だ。
なんて、ひとりで店の中をうろうろと歩いていると……気になるコーナーを見つけた。
それは“夢の国”のキャラクターが、デザインされたアクセサリーだ。
「これなら、間違いはないかもな……」
右がネッキー。左がネニーの顔をしたピアス。
ただ、値段がべらぼうに高い。4万越え。
よく見たら、ダイヤが入っているからか。
しかし、あいつもバイトして、俺に高価な万年筆をプレゼントしてくれたんだ。
ま、いっか。
あれ……なんで、男のミハイルがアンナより高級なんだ?
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