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第三十六章 二学期はっじまるよ~☆

肩こりにはコレが一番!

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 やっとのことで、坂道を登り終えると、六角形の大きな武道館が見えてきた。
 三ツ橋高校の名物だ。
 武道館の横を通り過ぎる際、中から「セイッ」「ヤッ!」など叫び声が聞こえる。
 多分、体育会系のガチムチマッチョ共が部活と称して、ナニかをヤリ合っているのだろう……。

 そんなことを妄想しながら、歩いていると、一ツ橋高校の校舎が見えてきた。
 Y字型で3つに分けられた構造で、本来なら正面玄関から入るべきなのだが……。
 俺たち通信制の生徒は、陽の当たらない裏口へと向かう。
 あくまでも、全日制コースの校舎をお情けで借りているに過ぎないからな。

 相変わらずのボロい引き戸だ。
 汚れたガラスはひびが入っており、所々ガムテープで補強してある。
 持ち手を掴み、横に開こうとした瞬間、何か違和感を感じた。
「開かない……」
 どうやら鍵がかけられているようだ。

 後ろにいたミハイルが不思議そうに声をかける。
「タクト、どうしたの?」
「いや……なんか鍵がかかっているようだ」
 俺がそう答えると、花鶴が嬉しそうに手を叩く。
「あれじゃね? 台風とかの休校とか♪」
「いや、台風はきてないし、全日制コースの奴らが普通に部活してたろ」
 そう的確に突っ込んでやると、納得する花鶴。
「あ、そうだった。オタッキー。頭良いじゃ~ん!」
 お前がバカなだけだ!


 俺たちはその後も、
「宗像先生が遅刻した」とか。
「スクリーングの日にちを間違えた」とか。
 都合の良い事ばかり、勝手に喋っていると……。
 近くの駐車場のから1つの人影が近づいてくるのを感じた。

 ツカツカとハイヒールの音が鳴り響く。
 振り返れば、中洲に立っているピンク系の商売を生業としている女性が一人。(あくまでも見た目が)
 宗像先生だ。
 本日も環境破壊型セクハラなファッションだ。
 カーキ色のシンプルなニットのワンピースなのだが、超ミニ丈。
 秋を先取りしているように見えるけど、肩だしで胸元も穴あきの童貞殺し。
 つまり、無駄にデカくて、キモい爆乳が丸見え。
 ブラジャーまではみ出ている。
 しんどっ……。

「くぉらっ! お前ら、今日は校舎ではやらんと言ったろうが!」

 鬼のようなしかめっ面でこちらに向かってくる。
 思わず、後退りしてしまうほどだ。
「ひっ!」
 考えたら、夏休みに宗像先生と大人のデートとして、取材したけど。
 最後はアンナとひなたがスタンガンで襲撃したから……。
 その後、救急車も呼ばずに放っておいたから、説教されると思っていた。

 殴られると思った俺は、恐怖から目を閉じる。
 だが、予想とは反して何やらプニプニと柔らかい感触が頬に伝わってきた。
「お前ら~ 始業式に良く来たな~」
 瞼を開くと、俺たち三人は抱きしめられていた。
「ぐ、ぐるしい……」
「宗像センセ、苦しいよ」
「ひゃはは! 先生、乳首立ってね? ウケるんですけど」
 花鶴さん。要らない情報を教えないでください。


 宗像先生は久しぶりに生徒で再会出来たことを喜んでいるようだ。
 さすがに前回のスタンガン攻撃が心配だった俺は、先生に尋ねる。

「あの……宗像先生。この前は、すみませんでした」
 謝る俺に対して、犯人であるミハイルは隣りで口笛を吹いてごまかす。
「なんのことだ?」
 先生は相変わらず、元気そうだった。
「いや、この前なんか変な黒づくめの奴らに痛いことされたでしょ?」
 俺がそう指摘すると、ミハイルはそっぽを向く。
「あぁ~ あの日のことか! 確かに突然ビリビリされて驚きはしたけどな、ダハハハッ!」
 なんて口を大きく開いて豪快に笑い出す。
「え? 痛くなかったんですか?」
「全然。むしろあれ以来、肩こりが良くなってな。あの健康器具、どこに売ってるんだろうな」
 ファッ!?
 さすがは元伝説のヤンキーだ、ということにしておくか。

  ※

 俺は先生に入口のことを尋ねた。

 宗像先生が言うには「今日はオープンキャンパスだから、三ツ橋高校の校舎は使えない」らしい。
 だから、この前各自宅に郵送した封筒に、『食堂で始業式を行う』と書いていたそうな。
 食堂は校舎の反対側にある建物だ。本来は全日制コースの生徒たちが昼食を取る場所だ。
 以前、宗像先生が運動場でパーティをした時。
 誤って生徒たちに酒を飲ませてしまい、親にバレたくないとみんなを一泊させた……嫌な過去がある。
 
 
 それにしても、式なのに食堂って……。
 マジで金がないんだね、この高校。
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