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第三十四章 Wヒロイン
ダーティワーク
しおりを挟むミハイルからもらったお中元。木の実のケーキをフォークで食べながら、もう片方の手でマウスを動かす。
アイドルのあすかに依頼された大巨編、自伝小説。
『おばあちゃんのアイドル』(ハードカバーの予定)
の執筆に取り掛かる。
タイトルは俺が勝手に決めた。ていうか、これで同情してもらうしか、ないだろう。
一週間で20万文字というダーティワーク。
納期に間に合わせるためには、一日に3万文字も書かないといけない。
だが、絶対にやらなければ、ならない時があるのだ。
アンナのパンティ。胸チラ動画のためなら、問題ない!
俺はこの日以来、四六時中パソコンと向き合うことになった。
朝夕の新聞配達と食事、トイレ以外はずーっとタイピング。
だから自ずと睡眠時間も削られる。
途中、何度も寝不足による偏頭痛。タイピングのやり過ぎで肩こり、腰痛などに悩まされたが、冷えピタや湿布を使い、身体がボロボロになっても、執念でどうにかやり過ごした。
~一週間後~
無事に作品は完成。
あすかの事務所へとデータをメールにて送信。
数日後、彼女から連絡があり、
「タクヒト! 最高の仕上がりよ!」
とお褒めの言葉を頂けた。
もうこの頃の俺は、死に体と化していたが。
また、事務所の社長も偉く気に入ったらしく、追加報酬として、更に10万円を頂けることに。
何でも当初は10万文字を想定していたけど、社長の気まぐれで20万文字を俺に要求したら、本当に書いてくれると思わなかったらしい。
なんて太っ腹な社長だ。
俺がアイドルになりたいわ。
総額にして20万円もお小遣いを手にした俺。
ハイスペックパソコンだけじゃ、物足りないってもんだぜ。
追加でモニターを二台注文しておいた。
デュアルディスプレイになれば、一体ナニができると思いますか?
アンナちゃんをたくさんのウィンドウで写真や動画を同時に楽しめるんですよ、奥さん。
なんだったら、右のモニターで執筆活動しながら、左のモニターでアンナちゃんをぬるぬる動かすことも余裕なんですねぇ……ごくり。
よくぞ、ここまで頑張ったな琢人。
そんなことで時間を費やしていると、8月も終わりに入った。
夏休みなんて言うけど、身体を休める日はほぼ少なかったな。
去年まで、新聞配達と自宅でこもって執筆活動するぐらいの日常。
たまに映画館巡りするぐらいだった。
女子と触れ合うな機会なんて皆無だったのに……。
※
9月に入り、注文した大型のデスクトップパソコンとモニターが二台届いた。
巨大なダンボールをウキウキしながら開封する。
設置したあと、ノートパソコンから新しいパソコンに秘蔵動画や高画質の写真を移動。
これで素晴らしい執筆活動とナニかが、サクサク楽しめるPCライフが送れるというものだ。
妹のかなでは相変わらず、母さんにきつく注意され、リビングで監視付きの受験勉強中。
俺は二台のモニターにて色んな姿のアンナちゃんにウットリ。
20人ぐらいにアンナを多重影分身させている。
もちろん、お色気な忍法でだ。
「ふぅ……」
余韻に浸っていると、机の上に置いていたスマホが鳴り響く。
着信名は、ロリババア。
「もしもし」
『あ、DOセンセイ! 今暇ですよね?』
ふざけんな! どいつこいつも俺が毎日予定なしだと思い込みやがって!
この前まで過労死するぐらい忙しかったわ!
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