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第三十三章 こいつ、カワイイか!?(ブチギレ)

バズる法則

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 正直、もつ鍋水炊きガールズは悪いところだらけだ。
 トーク下手。歌が下手。ダンスも下手。
 良いところと言えば……特にない。

 俺が黙って唸り込んでいると、痺れを切らしたかのように、長浜がテーブルを叩いて叫ぶ。
「アタシたちのどこが悪いっていうのよ! 福岡のトップアイドルよ!」
 いや、福岡でも認知されてないだろ。
「……」
 どうしたものか。正論を叩きつけても自信過剰な長浜には通用しない。
 右子ちゃんと左子ちゃんなら……ちゃんと話を聞いてくれそうだが。
 ん? この二人ならば、双子の大人しいシンクロアイドルっててことで売れそうだ。
 脚を引っ張っているのは、リーダーの長浜かもな。
 しかし、三人で売れたいというのが本音だろう。
 確かにルックスだけ言うならば、長浜 あすかは可愛い部類だろうな。
 黙っていればの話だが……。

「……そうか。黙っていればいいのか!」
 閃いたぞ。
 ダンスも下手。歌も下手。トークも緊張してダメ。
 なら、何もさせなければ良いんだ!
 俺はあまり触らないが、聞いたことがある。
 若者の間で流行っているアプリ。
『トックトック』だ。
 あれならば、多少踊りが下手でもルックスさえ良ければ、売れる可能性がある。
 トックトックのフォロワー数が多ければ、面接にも有利とギャルが豪語していたしな。
 よし、これで行こう。
 確かあれだ。
 あの動画サイトは承認欲求の塊ばかりだろう。
 つまり、ミニスカや露出度が高い衣装でも着て、パンチラとかパイチラがあれば、再生回数上がるだろう。知らんけど。

 俺は椅子に座り直して、3人にプレゼンを始める。
「おほん! 君たちの良いところを俺なりに考えてみた。それはルックスと若さだ!」
「「ルックスと若さ?」」
 声を揃えて驚く左右コンビ。
 対して長浜は当然だと言わんばかりに、鼻で笑う。
「フンッ! アタシが美人だって福岡市民は全員知っているわよ!」
 クソが。
「まあ話を聞け。言っちゃ悪いが、長浜はテレビ慣れしていないように見える。以前もテレビに出演した時、緊張してちゃんとトークできていなかったな」
「な、なによ! ガチオタのくせして!」
 顔を真っ赤にさせる。どうやら正論を言われて動揺しているようだ。
「本当のことだろ? どんな人間でも緊張するのは仕方ない。慣れだからな」
「うう……」
 なにか言いたそうな顔をしているが、俺は無視して話を続ける。
「ならダンスはどうだ? 本業だろ? トックトックという動画アプリを知っているか? 」
 長浜の代わりに左右コンビが反応する。
「「知ってます」」
 良い子たちだ。
「あれならば、この事務所でもどこでも撮影できる。また喋りも必要ない。スマホ一台でやれるから緊張することもないだろう。グループでやるのもいいが、ソロでやってみるのもいいかもな」
 俺がそう説明すると、長浜を除く二人は「うんうん」と頷いて見せる。
「あと、撮影する時は衣装を着た方がいいだろう。特にミニスカとか、あと女子高の制服とかもあれば、もっとバズれるだろう」
 デジタルタトゥーになりがちだけど。
 それまで黙っていた長浜が大きな声で叫ぶ。
「わかったわよ! 素人と芸能人の格を見せてやるわ! 右子、左子! あなたたち、高校の制服持ってる?」
 おいおい、乗っちゃったよ。
「あ、私お姉ちゃんのがあるよ」
「ちゅ、中学生の時のでもいいかな? ブルマもあるけど」
 ファッ!? どこか別の変な動画サイトに転載されそう。

「いいわね! 全部持って来て! 色んなコスプレを事務所に持って来て撮影しましょ!」
 し、知らねっと……。
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