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第三十二章 女装のヤンキーと片想いのヤンキー
勝利を確信したリキ
しおりを挟むその後、ばーちゃんはアンナに振袖を持ってくると。
「赤色なんだけど好きかしら?」
なんて彼女の身体に当ててみる。
「あ、好きです! 大好きです!」
「そうなのぉ。じゃあ、これ。アンナちゃんにあげるわ。タッちゃんのお母さん、琴音にはもう会ったかしら? あの子が成人式で着たものなのよぉ~ 私も若い時に着たけどねぇ」
聞けば、かなりの年代ものだ。
というか、血こそ繋がってないとはいえ、孫娘のかなでにやらなくていいのか?
「え、タッくんのお母さまが着られたものなんですか? それをアンナに……」
頬を赤くして、モジモジし出す。
「もちろんよぉ。アンナちゃんはもう、私の孫と同じ! いつでも中洲に遊びにおいでね! この店の浴衣でも振袖でもなんでも着せてあげるわ!」
「そ、そんなぁ……悪いです」
だが、決して嫌そうな顔ではない。
むしろニヤニヤが止まらないように見える。
※
リキが目を覚ましたところで、俺たちは中洲から帰るとばーちゃんに告げる。
それを聞いたばーちゃんが
「振袖は重たいから、あとでアンナちゃんの自宅に送るわね」
と彼女に住所を聞く始末。
アンナもちゃっかり教えちゃう。もちろん、席内市の古賀家だが。
ばーちゃんの前では、緊張しっぱなしだったが。
店から出るといつものアンナに戻る。
「タッくんのおばあちゃんから、振袖もらっちゃった☆ いつ着ようかな? あ、来年のお正月に二人で初詣に行こうよ☆ タッくんは毎年、初詣とか行かないもんね。しっかり取材しておかないと☆」
あの、勝手に決めつけないでくれますか?
初詣ぐらい行ったことあるわ! あ、でも何年も行っていないような……。
アンナは随分浮かれているようだ。
三人で地下鉄に乗り込み、電車の中で今回の取材を振り返る。
リキの方も手ごたえを感じていたようで、かなり興奮気味だ。
「見ろよ! タクオ! ほのかちゃんから返事いっぱい届いたぜ!」
そう言ってスマホの画面を見せてくれた。
「ほう。どれどれ……」
二人のL●NEのやり取りを確認してみると。
『ほのかちゃん、中洲の映画館でたくさんのおじさんと仲良くなれたぜ! 50人も!』
『え!? ホント!? あの伝説の社交場に行ったの? しかも50人と仲良しに!?』
かなり誤解されているようだが、まあ興味を持っているので良しとしよう。
『ネコ好きなおじさんと超仲良くなれたよ。L●NEも交換したから、これからも色々と教わろうと思うわ!』
『プギャー! 文章だけじゃ情報量足りない! 千鳥くん。来週、直接会ってお話聞かせて! は、鼻血が出てきた……』
「……」
結果的に釣れちゃったよ。
「なっ! これって取材の効果だよな!? デートの誘いだろ、これって!」
「ま、まあデートちゃデートかもな……」
それを聞いたリキは、感動のあまり泣き出す。
「うぐっ……マジでサンキューな。タクオ、アンナちゃん。二人のおかげだよ…」
あなた本人の努力だと思います。
だが、無慈悲なアンナは更に追い打ちをかける。
「気にしないで、リキくん。これで第一歩だね☆ でも、これで満足しちゃダメだよ。まだ、ほのかちゃんに興味を持ってもらえただけ。だからデートのあと、またおじさん達としっかり仲良くならないと☆」
なんて優しく微笑む。
悪魔に見えてきたよ、この人。
「アンナちゃん! これからもいっぱいアドバイスしてくれ!」
真に受けるなよ。
「うん☆ たくさん相談してね☆」
「……」
もう俺のダチはどこか遠くへと旅立ってしまうようだ……。
でも、難攻不落の腐女子とデートするきっかけは、できたから良かったのか?
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