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第三十二章 女装のヤンキーと片想いのヤンキー
映画の二本立て、最近見ませんね
しおりを挟む「えっと、どの映画を見ればいいんだ?」
無知なリキはスナック感覚で作品を探している。
「今、リバイバルで“アルゼンチン愛レス”という作品が上映されているはずだ。それを見て欲しい。必ずほのかが感想を聞きたがるものだ」
それを聞いたリキは目を輝かせて喜ぶ。
「マジか!? よっしゃ! ちょっくらチケット買ってくる!」
メンタル、強すぎぃ~!
※
チケットを手に持ったリキが嬉しそうにこちらへと戻ってきた。
「なんか二本立てらしくて、“アルゼンチン愛レス”と“サンとムーンをバックにして”を見れるらしいぜ! 古い映画とは言え、安くで見れてお得だよな」
「うっ!」
思わず、声に出してしまった。タイトルを聞いて……。
これまた名作だ。
かなり昔の作品だが、当時女の子のような美少年として国内外から脚光を浴び、その後ハリウッドスターの殿堂入りするような名優の初期作品だ。
もちろん、同性愛をテーマにした作品。
二本立てだから、4時間ぐらいは時間が空く。
俺はアンナにどこか近くの喫茶店で暇を潰そうと提案。
何故か彼女は、嬉しそうに笑っていた。
「いいよ。でもちょっとリキくんにアドバイスしたいから、待っててね☆」
そう言うと、背の高い彼を手招きし、頭を下げるように指示する。
リキの耳に手を当てて、なにやら話している。
「?」
俺が首を傾げて、その光景を眺めていると。
「わかったよ、アンナちゃん! できるだけ、やってみる!」
「うん☆ これも大好きなほのかちゃんのためだから、死ぬ気で頑張ってね☆」
リキは
「サンキューな、二人とも! あとで会おうぜ!」
と手を振って劇場へと脚を運ぶ。
アンナもそれに応えるように、ニッコリ笑って手を振る。
「がんばってねぇ~! リキくんなら絶対にやれるよ! アンナ信じてるから~!」
一体何を吹き込んだのだ……。
※
俺たちは再度、明治通りに戻ってきた。
重苦しい裏通りとは違い、人もたくさん歩いていて、みな笑っていた。
子供を連れた家族連れもたくさんいるし、ホッとする。
アンナに
「どこか喫茶店を探そう」
提案するが、彼女は「う~ん」と唸り声をあげる。
唇を尖がらせて、どこか不満そうだ。
「あのね、タッくん。せっかく中洲に来たんだし、もっと楽しい所に行こうよ☆」
「楽しいところ?」
「うん☆ だってリキくんも4時間近く映画見るんでしょ? なら喫茶店で半日を潰すのはもったいないよ。私たちだって取材してもいいと思うの☆」
「それもそうだな……。で、どこに行くんだ? 中洲サンシャインで映画でも見るか?」
だが、彼女は首を横に振る。
「もっともっと楽しいところにしようよ☆」
「中洲に俺たちみたいな若者が遊ぶ所なんてあったか?」
「あるじゃん☆ パンパンマンミュージアム!」
「……」
そう言えば、ミハイルくんが行きたがってましたね。(白目)
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