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第三十二章 女装のヤンキーと片想いのヤンキー
アンナの恋愛相談室
しおりを挟む束の間のイチャイチャタイムは、20分程度で終わりを迎える。
目的地である博多駅に着いたからだ。
二人で仲良く改札口を出ると、待ち合わせの相手がすぐ目に入る。
身長が高くガタイの良いアロハシャツを着たスキンヘッドのおっさん……じゃなかった千鳥 力だ。
今回の取材対象である。
俺とアンナを見るや否や、顔をぱぁっと明るくして、手をブンブンと振って見せる。
「おーい! タクオ、アンナちゃん~!」
これから地獄を見るかもしれない彼だ。優しく接してあげよう。
「おお、リキ。久しぶりだな」
マブダチとの再会を祝して固い握手を交わす。
アンナもその光景を見て、嬉しそうに微笑む。
「リキくん。別府以来だね☆」
嘘をつけ! お前らガキんちょの頃からの仲のくせして。
まさか親友が女装しているとも知らずに、リキはどこか恥ずかしそうに頭をかいてみせる。
「ア、アンナちゃん……前はダセェところ見せて悪かったね。きょ、今日も可愛いじゃん。タクトには勿体ないぐらい女の子だぜ」
「やだぁ~ リキくんったら! こんな人目のつくところで、タッくんとアンナのことを褒めてくれるなんてぇ~☆」
なんてツインテールをブンブンと左右に振り回す。
照れているのだろうが、男三人で何やってんだよって感じだな。
※
俺たちは中洲に向かうため、博多駅の地下街へと向かった。
市営の地下鉄に乗りたかったから。
倉石さんが紹介してくれた映画館は、ちょうど地下鉄の中洲川端駅が一番近く、初見のアンナやリキでも分かりやすいためだ。
バスでも良いが、今回は電車一本で行ける地下鉄を選ぶ。
地下鉄に乗り込み、三人でつり革に掴まって立ったまま、恋愛の相談が始まった。
「さっそくなんだけどさ。行きながらでいいからさ。アンナちゃんに聞きたいことがあるんだよ」
リキは珍しく弱気だった。
「うん。なんでも言って☆ アンナにできることなら、なんでもするよ☆」
本当に何でもさせる気だよ、この人。恐ろしい。
「あのさ。ほのかちゃんに告ってからさ。怖くて連絡が出来ないんだよ……」
随分とショックを受けているようだ。
やんわりと断られたとは言え、想いが伝わらなかったことは、彼に取ってさぞ辛かったのだろうな。
肩を落として、暗い顔をするリキを見て、アンナはニコッと優しく微笑む。
「アンナ。女の子だからほのかちゃんの気持ち分かるよ☆」
いや、お前は正真正銘の男だろうが。
「マジで? 俺、ほのかちゃんのL●NE交換してるんだけどさ。今一歩勇気出なくて……」
それを聞いたアンナは、彼の肩をポンポンと叩きこう言った。
「怖がってたら何も始まらないよ? アンナだったら、10分間に100通は送るかな☆」
ファッ!?
その特殊なスキルはあなただけの独占でしょ。
リキがやったら絶対に嫌われるし、ストーカーとして、怖がられるよ。
「え、マジ? アンナちゃんって、いつもそれぐらいメッセ交換するの?」
「うん。フツーフツー☆ むしろ相手が既読スルーしたら、ずっと通知画面と睨めっこしているぐらい☆」
怖っ!
「そっかぁ……女の子って、それぐらいL●NEしても余裕なんだ。知らなかったぜ。教えてくれてありがとな、アンナちゃん」
「ううん。なんだったら、今からほのかちゃんに送ってみたらいいよ☆」
マジでこの人、恋愛を応援しているんだよね?
なんかどんどん裏目になっている気がします……。
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