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第三十一章 ラノベ・マンガ・BL! 三つ巴の戦い!

その名はピーチ

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 俺の隣りに座っていたのは、チャラい小ギャル。
 幼児体形の白金まではないが、かなり小柄な女だ。

 派手なピンク色に染め上げめた長い髪は、後頭部で一つに丸くまとめている。
 お団子ヘアスタイルというやつか。
 前髪は右側だけ、だらんと頬から顎下まで垂らしている。

 幼い顔つきだが、メイクはかなり濃いめ。
 アイラインやアイシャドウもバッチリ。
 瞳もピンクのカラコンで加工済み。ハートマークでデコしてあるよ♪
 つけまつげも、アホみたいに長いから、瞬きするたびに、バサバサと音が聞こえてくる。
 ファッションは、ヘソだしのキャミソールに、チェック柄のミニスカ、厚底ブーツ。
 
 こんな時代遅れの汚いギャルが、俺のヒロインを、アンナを……忠実に漫画として、描いたというのか?

「ちょりっす。スケベ先生」
「ちょ、ちょりっす……」
 ついつい、話し方を合わせてしまう。
 困惑している俺を見て、白金が汚ギャルに自己紹介を促す。

「あ、DOセンセイはお会いしたことなかったですよね。今回『気にヤン』のコミカライズを担当してくれたピーチ先生ですよ。今後も続刊を担当してくれるので、是非とも今日を機会に仲良くされてください♪」
 えぇ……こんなギャルとどうやって仲良くするんだ。
「改めて、自分ピーチっす。スケベ先生のこと、マジリスペクトしてるっす。ダディやマミーよりも、ゴッドっす」
 偉く尊敬されているようだ。神よりグッドな存在なのか。
 ならば、スケベという呼ぶのはやめて欲しい。
 視線はずっと俺に向けられている。
 あまり感情を表に出さないタイプのようだ。
 無表情、ジト目で淡々と話し出す。

「自分、スケベ先生のこと、ウェブ時代からの大ファンっす。『ヤクザの華』も初版で全巻揃えているっす。自分的には、今のスケベという名前より、以前のペンネームの方がしっくりきたっす」
「え……前の?」
 初対面の女性に、スケベと言われるのも、充分恥なのだけど。
「ちっす。絶対最強戦士、ダークナイト先生の方が古参ファン的には、鬼カッコイイっす」
 久しぶりに聞いたわ。小学生時代の黒歴史。
「いや……それは、もう過去のペンネームだから……」
 掘り返さないで欲しいです。
「そっすか? 自分的には超カッコイイ名前だと思うっすけど。でも、今回あの硬派なスケベ先生が初めてラブコメを書くと聞いて、居ても立っても居られなくて……。博多社に原稿を持ち込みしたら、見事デビューさせてもらったっす。スケベ先生のおかげっす、マジリスペクトっす!」
 ずいっと身を乗り出してくる。
「そ、それはこちらこそ、お礼を言いたいところですよ。俺の書いた小説の世界をここまで忠実に絵として再現してくれて……。でも、何故ヒロインであるアンナというキャラをあそこまで可愛く、仕上げられたんですか? まるで写真のようでした」
 まさか、俺とアンナのデートをストーキングしたのではないよな。

「それは……自分がスケベ先生の大ファンだからっす。白金さんに渡された原稿を何度も何度も読み直して。頭の中で想像を膨らませて、スケベ先生の性癖をとことん! 突き詰めたら、あのヒロインが浮かび上がって、スラスラと描けたっす!」
 俺の性癖がダダ漏れになってしまったのか。
 恥ずかしすぎるので、死んでもいいですか?
「そ、そうでしたか……」
「ていうか、敬語はノーサンキュっす。自分、スケベ先生より年下っす。今16歳の女子高生なんで」
 ファッ!?
 こんな汚い奴が現役JKだと……よく入学できたな。
 年下ということで、俺は態度を変える。

「そ、そうか。じゃあタメ口で話させてもらおう。今後タッグを組むなら本名も名乗っておきたい。俺は新宮 琢人だ」
「あ、それなら知ってるっす。『にぃに』から噂は聞いてたんで」
「え? にぃに?」
「ちっす。自分のにぃには、スケベ先生のイラスト担当してるトマトっす」
 あの豚の妹だったのか!?
 全然似てない……。
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