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第三十一章 ラノベ・マンガ・BL! 三つ巴の戦い!
漫画家、現る
しおりを挟む既に完成してしまったヒロインのイラストを見て、俺は絶句していた。
取材に協力してくれたアンナに、なんて言い訳をすればいいのだろう。
これはもう俺のヒロインではない。
絵師であるトマトさんが描いた全く別物のヒロイン
、彼が好きなギャル。
花鶴 ここあに酷似している。
違うところと言えば、髪の色が金髪で瞳がグリーンアイズぐらい。
ほぼほぼ、ギャルの花鶴じゃねーか!
「お、おい! 白金! このイラスト……俺の作品のヒロインに全然似てないぞ! 小説ではちゃんと貧乳、低身長と書いていたはずだ。それこそ、お前に渡したプロットやキャラ設定にも書いていたのに……どうしてこうなった!?」
うろたえる俺を見て、白金は特に悪びれる様子もなく、当然のように答える。
「え? ああ、そう言えば……そんな表現でヒロインを書かれていましたね。アンナちゃんでしょ? でも、トマトさんがモデルにしたギャルの子? の方が、ウケが良くてそのまま採用しました♪」
「ふざけるな! こんなの、アンナじゃない! クソビッチじゃねーか!」
「そうですか? 巨乳でモデル体型のアンナちゃんは、もう大人気で抱き枕も作成中ですよ?」
「マ、マジで……?」
「はい。もう編集部で色んなグッズも展開中です♪」
なんでコレで決定する前に、作者である俺に一声かけないんだ! このロリババア!
俺は怒りを通り越し、落胆していた。
今までやってきたことは、何だったんだ。
※
とりあえず、「予定通り、打ち合わせをしましょう」と白金に促された。
編集部の中央に、薄い仕切りで覆われた一つの区画がある。
白くて大きなテーブルだ。
4人ほど座れる。
俺と白金は、向い合せに座り、仕事の話を始めた。
まずは、『気にヤン』の単行本。
その見本を渡される。
数年ぶりの書籍化は確かに嬉しいのだが、表紙や挿絵が全く別物になっていて、感情移入ができない。
誰なんだ? このハーフギャルは……。
「どうですか。特に問題ないですよね?」
なんて白金が訊ねてきた。
大有りだよ、バカヤロー!
しかし、もうここまで完成してしまったのならば、後戻りはできない。
「ああ……コレでいいよ」
力なく答える。
「あれ? なんか嬉しそうじゃないですね? 数年ぶりの書籍化ですよ?」
「う、うん……うれしいな。わぁい」(棒読み)
「変なDOセンセイ。あ、そうだ。今日はもう一つ、見て欲しいものがあるんですよ」
そう言って、奥にある自身のデスクに向かう白金。
戻ってくる際、小さな本を一冊持ってきた。
先ほど見せてくれたライトノベルよりも少し大きなサイズだ。
青年向けのコミックか?
「これ、以前に話していた『気にヤン』のコミック版です」
そう言って差し出されたのは……。
繊細に描かれたハーフ美人。
透き通るような白い肌。宝石のように光るグリーンアイズ。
低身長。絶壁に近い貧相な胸。
どこからどう見ても、俺の知っているメインヒロイン、アンナが優しく微笑んでいた。
「アンナだ……」
思わず、口からその名がこぼれる。
まるで俺が撮った写真のようだ。
モデルであるアンナの写真なんて、一切提供してないのに、どうやってここまで彼女を再現したというのだ。
コミックの表紙を一枚めくり、本編も試しに読んでみたが、原作者である俺の体験を忠実に絵としてしっかり描いている。
そして、アンナがとにかくカワイイ。
これこそ、俺の求めているメインヒロインだ。
原作、DO・助兵衛。作画、ピーチ。
この可愛らしいペンネームの漫画家が仕上げてくれたのか。
俺は感動して、涙が溢れそうになる。
「白金……これを描いた先生は誰だ? 是非会ってみたい! というか、お礼を言いたいのだ!」
興奮して前のめりになる。
「え、ピーチ先生のことですか? それなら、さっきからDOセンセイの隣りにいますよ?」
「へ……?」
白金が指差す方向を目で辿る。
気がつくと、俺の左隣りに、ちっこい女が座っていた。
頭上でピースして俺に軽く挨拶。
「ちっす。DOセンセイ、自分、漫画担当のピーチっす。以後、よろぴく」
「よ、よろぴく……」
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