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第三十一章 ラノベ・マンガ・BL! 三つ巴の戦い!
絵師さんにはお任せしよう!
しおりを挟むエレベーターのチンという音が、エントランスに鳴り響く。
白金のご登場だ。
本日もお子ちゃまファッションで、コーディネートしている。
ツインテールの頭は、左右にさくらんぼのヘアゴムで束ねて。
アイスクリーム柄のワンピースを着ている。
多分、子供サイズ。
「DOセンセイ! お待たせいたしました!」
「ああ。ところで、この新しい受付嬢? 住吉はまだ未成年なんだろ? なんで働いているんだ?」
俺が隣りに座っている彼を親指で示すと、また「ひっ」と悲鳴をあげる。
「一ちゃんのことですか? この子、コミケでレイヤーしていて。私がスカウトしたんです。聞けば、無職だって言うし。BL編集部も出来たから、新人の女性作家さんたちが気持ち良く、我が社に入れるよう、特別に受付をしてもらっているんですよ。このおどおどしている姿が、腐女子の方にはたまらないそうで。雇って本当に良かったです♪」
「え……そんな理由でか?」
「はい! 創作活動に力が入るそうですよ」
白金が彼にウインクしてみると、またもや悲鳴をあげる。
「ひ、ひぃ! 白金さん、僕はもうあんな恥ずかしいコスプレしませんからね!」
顔を真っ赤にして、泣き叫ぶ。
対して、白金は至って冷静だ。
「一ちゃ~ん。そのことはナイショでしょ? 今夜も居酒屋で脱いでもらうからね♪」
「ひぃ! そ、それは上司としての命令ですか?」
「うん。断ったら、この前のコス写真、ネットにバラまくから♪」
怖すぎ!
住吉がちょっと可哀そうになってきた。
「わ、わかりました……終電までには帰してください……」
肩を落として項垂れる。どうやら、観念したようだ。
「へへへ。コミケであんな卑猥なコスプレを着る一ちゃんが悪いのよ」
これ、児童ポルノ法違反では?
まあでも、俺も住吉は嫌いなタイプじゃないから、しばらく放置しておこっと。
※
エレベーターで編集部と上がる。
久しぶりのゲゲゲ文庫は、かなり忙しそうに社員たちが動き回っていた。
「挿絵、間に合ったか!?」
「はい! もう『気にヤン』のポスターも仕上がってます!」
「よし。次、コミックの帯を作成するぞ!」
「わかりました!」
俺の知らない間に、編集部はピンク色のイラストやポスターで彩られていた。
タンクトップ、デニムのショートパンツ姿のヤンキーぽいヒロイン。
その隣りには、対照的なヒロインが立っている。
大きなリボンを胸につけたフリル多めのワンピース。頭にも同じくらい大きなリボン。
とてもガーリーなヒロイン。
ミハイルとアンナだ。
そうか。トマトさんがここまで仕上げてくれたのか……。
思わず目頭が熱くなる。
俺は感動していた。
ここまで来るのに、どれだけの困難、苦労を乗り越えてきたか。
しかし……このイラスト、どこか違和感を感じる。
それは、体つきだ。
モデルになったミハイルとアンナは、低身長で貧乳……いや、絶壁という設定なのに。
このイラストのヒロイン。
身長がかなり高いモデル並みだ。
そして、胸もかなりデカい。
巨乳ギャル? といったイメージだ。
「どうですか!? DOセンセイ? 今やゲゲゲ文庫は、『気にヤン』で大盛り上がり! これで狙いに行きますよ! 博多社の全てをこの作品に賭けます!」
白金はまだ発売前だというのに、勝ち誇った顔でガッツポーズをとる。
だが、そんなことはどうでもいい。
それよりも、俺の……俺たちが命がけで取材して、作り上げた小説の表紙が……ヒロインが全然違う!
別人ってレベルじゃねー!。
もう既に販促ポスターまで仕上がっている段階だ。
後戻り、修正はできないのだろう。
その光景を目にして、血の気が引く。
「おい、白金……このイラストで、もう決まりなのか? 今から差し替えはできないのか……」
「へ? 無理に決まってじゃないですか。もう単行本の見本も出来ているし、来月には書店に並びますからね。このヒロイン、超人気なんですよ~ 編集部の男性陣も大のお気に入りで、可愛いからって二次創作やって、夜のおかずにするファンまでいるんですから。ハハハ!」
「……」
俺の思い描いたヒロインじゃない!
これ、全く違うキャラじゃん……。
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