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第三十章 おっしょい! 百万人のショタ祭り!

ほのかのタイプ

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 俺たち三人が今いるカフェ、バローチェは静まり返っていた。
 先ほどまで、店内はお祭り気分で他の客もワイワイと話で盛り上がっていたのに。
 その原因は俺の目の前にいる、一人の少女のせいだ。

「んとね、私のタイプは幅が広くてね……受けやっている時は、そうだな。自分より身長が高くて身を委ねても大丈夫そうな屈強な人って感じ♪ めちゃくちゃにしてくる野性的な人っていうか、肉食系だよね」
「……」
 この話のモデルってどっちなんだ?
 同性なのか、それとも異性なのか……。
 わからない、この人の感覚がサッパリわからない。
 そもそも受けってどういうことだよ。

 隣りにいるミハイルは、首を傾げていた。
「つまり、ほのかが好きな男のタイプって強そうな奴ってこと? 例えば、オレのダチで言えば、リキとか?」
 気の早いやつだ。しれっとリキをアピールしている。
 つい、この前振られたばかりだというのに。

 ほのかは、また難しい顔で答える。
「うーん。千鳥くんか……確かに男らしい人って感じで、嫌いじゃないんだけど」
 お、意外とまだ脈ありか?
 ミハイルも鼻を息荒くして。
「うんうん☆ リキと付き合うのは、あり? なし?」
 なんて攻めに入る。

「でもなぁ。好みに当てはまらないのも事実かな。だって、紙の世界が一番なんだもん。私の好みがたっくさんいるもの!」
 俺はガタンとテーブルに頭をぶつけてしまう。
 やっぱ、そうだよな。
 腐女子って基本、二次元に恋しちゃって、三次元に対するハードルが高すぎなんだよな。

 だが、ミハイルはそれを認めたくないようだ。
「紙って……それってマンガとかアニメの話じゃん。そのキャラ達と一生片思いして死んじゃうの?  それ、寂しくないの?」
 ぐはっ! オタクや腐女子に一番ズシンとくるやつ。

「なにを言っているの、ミハイルくん……。一生、片思いじゃないわ! 生涯、脳内で相思相愛になれるのが二次元の魅力なんじゃない! 自分の理想通りの男性であり、女性であり、好きなパートナーよ!」
 やっぱり、同性も入ってた!

「ほのか。そんな人生、寂しくないの?」
 ちょっと同情した感じで、話しかけるミハイルお母さん。
『あなたをそんな為に生んだじゃないのよ』
 みたいな感じ。
 だが、そんなママンの言葉に、一切のダメージを負わないのが、北神 ほのかである。
「全ッ然! ちょー楽しいわ! 今日だって生モノ狙いに来たし!」

「ブフーッ!」
 飲んでいたアイスコーヒーを吹き出す。

 こいつ、そのために山笠を狙いに来たのか!
 信じた俺がバカだった……。

 意味が理解できていない、ミハイルが問いかける。
「生モノ? なんかお刺身とか食べたいの?」
「そうよ! サラッと新鮮な奴。活きの良いおっさんやショタがふんどし姿で走り回る伝統芸能、マジ最高! 合法的に絡めること不可避!」
 お前は神に捧げる伝統芸能をなんだと思っているんだ!
 ちょっと、全ての福岡市民、県民に土下座してこい!

「ふーん。山笠ってお刺身をみんなで楽しむお祭りなんだぁ。オレ、今日が初めてだから知らなかった」
 なんて小さな唇に人差し指を当てて、天井を見上げるミハイル。
 きっと言葉にした通り、可愛らしい想像をしているのだろう。


 俺はもう一つ気になったことがあった。
 それはほのかが言った、攻めのタイプの方だ。
 気になったので、今度は俺が質問してみる。リキのためにも。

「なあ、ほのか。受けの好みはなんとなく……わかったつもりだ。じゃあ攻めのタイプはなんだ?」
 すると何を思ったのか、鼻息を荒くしながら、興奮して喋り出す。
「よくぞ聞いてくれました! 攻めの時はとことん、こっちがいじめ倒したいわね♪ 例を挙げるとすれば……あ、ミハイルくんみたいな中性的な男の子が良いわね」
 俺は咄嗟に、隣りに座る彼を自身の左手で護りに入る。
「な、なにを言い出すんだ! ほのか、血迷ったか!?」
 声を荒げると、ミハイルが首を傾げる。
「どうしたの、タクト? ところで、ほのか。なんでオレが、攻めだっけ? それの好みになるの?」
 聞いちゃダメだろ! こんな変態の性癖。
 ミハイルきゅんは絶対に渡すものか!

 彼の質問に対し、興奮しすぎたせいか、鼻血をポタポタと垂らしながら、物凄いスピードで喋り出す。
「そ、それはね! ミハイルくんみたいな、ショタっぽい……いえ、まだ未成熟な蕾をいたぶる。本能のままに、とことん可愛がってあげるのが、私の愛し方だからよ!」
 クッソ変態じゃねーか!
「でも……残念なことに、ミハイルくんは、私の中ではアウトね」
「え? なんで?」
「ちょっと、ショタにしては成熟しすぎちゃっているからよ! 私は、思春期を迎えるか迎えないか……。すごく曖昧な年頃が一番大好きなの。だから、ごめんなさい。ミハイルくんは攻めの対象には当てはまらないわ」
 なんて眼鏡をくいっとかけ直す。
 それを聞いた俺は胸を撫でおろした。

 ミハイルは、ほのかの抱く変態理想像。
 表現、伝え方がサッパリ届いていないようで。
 困惑していた。

「ん? じゃあオレよりもっと若い子が好きってこと?」
 いや、あなたは今15歳でしょ?
 それより下ってヤバいだろ。犯罪だよ。

「そういうことよ! 私の守備範囲は、8歳ぐらいから13歳ぐらいね! その子の成長具合にもよるけど、股間がフサフサしていたら、ダメよ♪」
 ファッ!?
 ミハイルの股間は、ツルツルだった!
 ヤバい!
「え、お股がフサフサ? オレはしてな……」
 バカ正直なミハイルが、真面目に答えようとしたので、すぐにその小さすぎるお口を、俺が寸止め。
「ふごごご……」
 なんとか彼の操を護ることに成功した。

「ほのか。お前の好みはなんとなくだが、把握できた。良い勉強になったよ」
 このまま、どうにか話をそらして、逃れよう。
「本当? 良かったぁ~ 私の好みが分かり合える友達が出来て♪ あ、でも、私の守備範囲は性別とか関係ないからね。可愛いければ良いし。カッコイイ人だったら何でもOK。人種も性別も曖昧なの♪」
「……」
 この人に勝てるのか? リキ先輩。
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