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第三十章 おっしょい! 百万人のショタ祭り!

深夜のデート

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 深夜の12時。
 この場合、0時と表現すべきか。
 いつもなら、朝刊配達のために仮眠を取るのだが。
 店長に頼んで今朝の仕事は休ませてもらった。

 深夜の駅だというのに、ホームは思ったより人が多い。
 特に博多行きは、家族連れや若者がちらほら見られる。
 時折、スマホを見て笑ってなんかいたりして。

 終電帰りのサラリーマンなんかとは違う。
 どこか非日常的な夜の世界。

 普通列車が到着して、車内に足を運ぶとやはり中も人が多い。
 カップルなんかはちょっとイチャついていたりして。
 うん、殺意湧くわ。
 と一人で拳を作っていると、背中あたりをチョンチョンと指で突っつかれた。

 振り返ると、ネッキーがプリントされた赤い帽子を被った金髪の少年がニッコリ笑って立っていた。
 イエローのシンプルなタンクトップを着ているのだが、肩紐がゆるゆるで、見ていてドキッとしてしまう。
 首元もざっくりと広めのデザイン。肌の露出度が高い。
 ダメージ加工のショートデニムパンツを履いている。
 その為、白く細い二つの美しい脚が拝める。
 足もとは動きやすいスニーカー。

「よっ、タクト☆」
 グリーンアイズをキラキラと輝かせるのは、古賀 ミハイル。
「ああ。こんばんは、だな」
 思わず口元が緩んでしまう。彼を見てしまうと。
「うん☆ なんか夜中なのに、みんなでお祭りに行くなんて、悪いことしちゃってるみたいで、楽しいよね☆」
「確かにな。俺も親に許可を取ったが、深夜に公然と未成年が出歩くってのは、今夜だけだもんな」
「ねーちゃんも『山笠ならOK』だって☆ オレ、今夜のために、お昼寝してきたよ☆」
 お昼寝とは何ともお子ちゃまな表現だな。


 その後、しばらく俺とミハイルは車内で立ちながら雑談した。
 列車に揺られること約30分。
 目的地である博多駅に辿り着いた。
 ほのかは待ち合わせ場所に、黒田節の像を選んでいた。

 真夜中だというのに、改札口から大勢の人々で混雑していた。
 5月に開催された博多どんたくやこの前の大濠公園の花火大会ほどではないが、それでも深夜にしてはたくさんの人で賑わっている。
 幼い小学生や高齢者など、皆伝統のあるお祭りを楽しみに、活気だっているようだ。

 博多口を出て、駅前広場に出る。
 そこでも普段は閉店しているはずの店が、今夜だけはオールナイトで営業していた。
 ビアホールみたいな会場が儲けられていて、大人たちはワインとウインナーを楽しんで騒いでいる。
 その姿を見て、ミハイルは苦笑していた。
「大人になるとこんなことをするんだな☆ でも、うちのねーちゃんの方が飲み方すごいゾ☆」
 なんて自慢げに胸を張る。
 タンクトップの紐が片方少しズレてしまい、胸のトップが露わになりそうだ。
 俺はそれを見て、咄嗟に紐を直してやる。
 無防備な彼の言動を見て、頬が熱くなるのを感じた。
 咳払いして、こう注意する。
「まあ、確かにヴィッキーちゃんの飲み方はエグいもんな。だけど、ミハイル。俺達はまだ未成年だ。今日は山笠とはいえ、深夜だ。迷子にならないように注意しろ」
「うん☆ タクトがついているから安心しているゾ!」
 なんて腰を屈めて、上目遣いで話してきやがる。
 だから、その無防備な態度が、一番怖いんだよ。
 俺の理性がブッ飛びそうで。
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