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第二十五章 まだまだ終わらない高校
カノジョの作った料理に文句は言っちゃダメよ♪
しおりを挟む波のプールで溺れたミハイルを、お姫様抱っこしてから、なんかギクシャクしてしまう。
二人して、ビーチの隅で体操座りする。
ボーッと放心状態で、宗像先生や千鳥、花鶴がプールではしゃいでる姿を、眺めていた。
というか、俺の場合は、股間が直立しちゃったから、動けないんだけどね♪
ミハイルといえば、頬を赤らめて、視線を下にやっている。
結局、その後も俺たちはプールで遊ぶことはなく、「そろそろ、あがるか」と更衣室に戻ってしまった。
更衣室の入口付近に、シャワールームが設置されていたので、俺はそのまま、身体を洗うことにした。
ミハイルはなぜか、「オレは自分の部屋で洗うから」と、一人ホテルに戻ってしまった。
なんでだろう? 裸になるのが恥ずかしいのか。
それを言ったら、このあとの温泉とか大浴場はどうする気だ?
身体と頭を洗い終えると、ムキムキのハゲマッチョに声をかけられる。
「タクオ! プール、楽しかったよな!」
「ああ……まあ、それなりに、な……」
股間くんはすごく楽しかったと言っています。
「てかよ、ミハイルと一緒にいたんじゃねーの?」
「さっきまでいたが、なんか先に部屋に戻ると言ってたぞ」
「ふーん。あ、タクオさ、水着は後で使うから、あそこにある脱水機を使って乾かしておけよな」
「何に使うんだ?」
「この『波に乗れビーチ』の上に、混浴温泉『クーパーガーデン』があんだよ」
なん…だと!?
「混浴だってぇ!? そ、それは本当か?」
興奮するあまり、千鳥に迫る。
「お、落ち着けよ。タクオ……混浴っても、水着で入るんだよ。だから、いるんじゃねーか」
チッ、クソみてーな温泉だな。
一気にテンションが下がる俺氏。
「なるほど。了解した。じゃあ、水着は乾かしておこう」
脱水機で、水着を乾かしている間、俺はロッカーを開く。
入れていたタケノブルーのTシャツは汗臭い、ジーパンも湿っている。
せっかく、シャワーで綺麗な身体になったというのに、これをまた着るのは、げんなりするな。
そう思っていると、近くのカウンターで立っていた男性スタッフから声をかけられる。
「あ、お客様! バスタオルと浴衣を無料でお貸しておりますよ」
助かったと俺は安堵する。
スタッフから、Mサイズの浴衣とバスタオルを受け取り、ロッカーで着替えをすます。
と思いたかったが……。
下着が問題だ。
ブリーフも汗まみれ。
ならば、選択は一つしかない。
アラサー痴女教師、宗像 蘭から借りたTバックを履くしかない。
覚悟を決めろ、琢人よ!
紫のレースのパンティーだが、履いてみたら、案外ダンディーな男に見えなくもない……気がする。
宗像先生が普段、履いている下着を広げて、俺の脚に『穴』を通していく。
両方埋まったところで、グイーッと股間にフィットさせる。
ふむ、サイズ的には問題なしだ。
ケツがスースーするが、案外いいもんだな。
一つ、気持ち悪いとするならば、前面から俺のヘアーが、もじゃもじゃとはみ出ているところか。
浴衣で隠せば、問題ない。
「よし、俺もホテルに戻るかぁ……」
なんだか、女の子の気持ちがわかってきちゃったかも。
※
ホテルに戻ると、腹の音が鳴る。
もう夕方の6時だ。
腹も減る頃合いか。
そう言えば、宗像先生が言ってたな。
一階にある食堂に集まれって……。
食堂に向かうと、もう既にみんな集まっていた。
バイキング形式で、好きな食べ物を自分で取って良いようだ。
「これはなかなかに豪勢だな」
ハンバーグ、刺身、ステーキ、天ぷら、カニ、カレー、ピザ……なんでもありだ。
よし、いざ実食!
トレーを持って、料理を取ろうとした瞬間だった。
華奢な白い腕が俺を静止させる。
「待ってたよ☆ タクト!」
浴衣姿のミハイル。
しっかり帯を巻けていないのか、襟元が随分、はだけている。
上から見ると、もうすぐ乳首が見えちゃいそう……。
サイズもあってないようで、かなり大きい浴衣を着ているようだ。
上前と下前が、左右に開けている。
彼が嬉しそうにぴょこぴょこ動く度、グリーンのボクサーブリーフが、チラチラと見えてしまう。
男装時は、防御力が低すぎんだよな……。
生唾を飲み込んでしまう。
「ねぇ、聞いている? タクト?」
潤んだ瞳が、一段と輝いて見えた。
「あぁ……なんだっけ?」
お前の浴衣姿に見惚れていた……なんて、言えるわけないだろう。
「も~う! だから、言ってるじゃん! タクトの夜ご飯は、オレが作ってきたから、バイキングする必要ないよ☆」
「は?」
「バイキングってさ、選んでテーブル戻っての繰り返しじゃん。疲れるじゃん。なら、最初から豪華な料理を、ダチのオレが作ってきたんだ☆ えっへん!」
ない胸をはるな!
そして、俺はそんなこと頼んでもないぞ!
バイキングしたいのに!
「ほら、こっちに来てきて! もうちゃんとテーブルに用意しているから☆」
そう言って、強引に手を引っ張られる。
俺の拒否権はないんですね。
ミハイルに連れてこられたテーブルは、大人が6人ぐらい座れる巨大なテーブル。
「こ、これは……」
見たこともないぐらいの、豪華な料理がずらーっと並んでいた。
伊勢エビのマスタード焼き、鯛の活け造り、ふかひれスープ、極厚ステーキ、フルーツの盛り合わせ、おまけに、パティスリーKOGAの名前が刻まれたケーキが10個以上……。
れ、レベチィ~っ!?
しかも、テーブルの上には、ネームプレートが置かれており、
『新宮様、古賀様。貸し切り』
と、予約されていたようだ。
蝶ネクタイをつけた品格のあるウェイターが、俺の前に現れる。
「ご予約されていた新宮様と古賀様ですね……こちらの席へどうぞ」
「は、はい……」
貫禄が違う。
思わず敬語になってしまった。
「タクト。これオレが全部、作ったんだゾ☆ すごいだろ!」
「ああ……」
もう、ドン引きしています。
席に二人して座る。ピッタリ並んで。
すかさず、ウェイターが俺の前にメニューを差し出す。
「新宮様、本日のおすすめは、白ワインの10年ものです……」
「はぁっ!?」
思わず、アホな声が出てしまう。
俺、未成年なんだけど。
「タクト、心配しなくてもオレが用意したノンアルコールのジュースだゾ☆」
「そ、そうか……なら、それをください」
「かしこまりました。少々お待ちください。古賀様も同じものでよろしかったですね?」
「うん、グラスも二つお願いね☆」
「承知いたしました」
一礼すると、ささっと静かに調理場へと戻っていった。
てか、何様なの? ミハイルって。
「なあこの根回しは……ミハイルがしたのか?」
「そうだよ☆ ここのホテルにねーちゃんがケーキとか卸してるから、ゆーづうがきくんだ☆」
ヴィクトリア、強し。
「なるほど……」
「そんなことより、早くオレの作った料理食べてよ☆」
「ああ、いただきます」
「どーぞ☆ 残さないで食べてくれよな☆ 徹夜して作ったんだから☆」
めっちゃ笑顔で俺の顔を覗き込んでいるんだけど。
脅しに聞こえます。
このあと、俺は死ぬ思いで、ミハイルのフルコースを一人で食べることになった。
彼と言えば、ジュース以外はホテルのバイキングを食べていた。
ミハイル曰く、
「タクトのために作った料理だから、オレは食べなくていいよ」
「食べるところとか、味の感想を聞きたい☆」
と言って、一緒に食べてくれなかった。
吐きそう……。
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