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第二十五章 まだまだ終わらない高校
おい、道具貸せ……ハイ! どこでも、男の娘ぉ~
しおりを挟む同室になった千鳥と俺は、一旦部屋に荷物を置きに行く。
部屋は8階の一番奥。
エレベーターからは、かなり遠いが、窓から見える景色は最高だ。
洋室で大きなベッドが二つ。小さなテーブルがあった。
事前に用意していた千鳥は、バッグから水着や浮き輪などを取り出す。
俺と言えば、なにも所持していない。
だって、旅行なんて聞いていなかったんだからね……。
持参したものといえば、簡単な筆記用具といつもの相棒、ノートPCぐらいだ。
このままでは、本当に千鳥が言うように、ブリーフでプールを泳ぐことになるのだろうか。
頭を抱えていると、千鳥がテーブルの上にあるパンフレットを俺に見せつける。
「なぁ、タクオ。ここのプールってレンタルの水着あるらしいぜ?」
「ま、マジか!?」
「ああ、有料だけどな」
「助かったぁ……」
俺が胸をなでおろしていると、千鳥がこう言う。
「でもよ、服はどうすんだ? 下着がないじゃん」
「う……」
「俺のはサイズがデカいからタクオには履けないぜ? 宗像先生からパンティーでも借りろよな」
えぇ……だってレースのTバックだろ……。
もう俺はお嫁にいけないかも。
※
支度を終えると、俺たちは再び、ロビーに降りた。
ホテルの玄関外には、常に移動用のバスが待機している。
ここ、松乃井ホテルは巨大な敷地と急斜面の長い坂に建てられている。
だから、各施設に移動する際は、バスを使った方が良いと職員に促された。
バスはもちろん無料。
俺と千鳥が車内に入ると、見慣れた顔ぶれが揃っていた。
宗像先生、日田の双子、北神 ほのか、長浜 あすか。
「おう、新宮たちもプールに行くのか!? 乗ってけ乗ってけ!」
言いながら、ハイボールをがぶ飲みする宗像先生。
足もとに、空き缶の山が出来ていた。
こいつ、もう死ぬな。
「あれ、ミハイルはいないな……」
あいつのことだから、すぐにバスに乗っているかと思ったが。
「古賀か? あいつなら、花鶴と前のバスに乗ってたなぁ~」
豪かいにげっぷをする独身女性、宗像 蘭さん。
「そ、そうっすか……」
プールに着くと、俺はすぐに男性用の水着をレンタルした。
金はもちろん、自腹。
精算を済ませていると、宗像先生があるものを俺に渡す。
「ほれ。着替えがないんだろ? 下着ぐらい替えないとダメだぞ♪」
そう言って何か丸いものを、俺の手に残し、去っていく。
広げて見れば、紫のレースパンティー。Tバック……。
レジのお姉さんが、「うわっ」とドン引きしていた。
クソがっ!?
二階に上がって男子の更衣室へ入る。
中はかなり広い。
この前、アンナと海ノ中道のアインアインプールに行ったが、規模が違う。
数百人は入れそう。
着替えを済ませると、誰かが俺の背中をポンポンと叩いた。
振り返ると、そこには男子更衣室に似合わない可愛らしい女の子……ではなく、ただのミハイルきゅん。
「おっせーぞ、タクト!」
既に水着に着替えていた。
俺はまじまじと彼をながめる。上から下まで。
何故かって?
アンナモードとの比較をしておかねば!
男装時なんだから、お乳首を隠す必要はないはずだ。
それがすごく気になる。
俺はプロの作家だ。
そう、これは取材。ヒロインの特徴を把握しておかないと作品に還元できない。
「……」
黙って彼を見つめる。
ボトムスは黄色でドット柄のボクサータイプ。
かなりタイトなデザインだ。彼の小さな桃尻がプリッと目立っている。
肝心の胸部は……なっ!?
「なぜ着ているっ!?」
思わず声に出してしまう。
激しく動揺した俺は、彼の胸元を指差した。
「な、なぜって……胸は隠すに決まってんじゃん! バカなの、タクト!?」
おいおい、おバカなミハイルくんに、馬鹿呼ばわりされちゃったよ。
てか、男は普通、胸は出すもんだ。
チッ! 見れるかと思ったのに……。
ちょっと、すねてみる。
「オレの今日の水着、そんなに不満?」
頬を膨らませて、上目遣い。
「いや、似合っているよ……」
「じゃあなんで、そんな怒ってんの?」
「怒ってないさ」
確かにカワイイ。似合っている。
トップスは同系色のタンクトップタイプ。
ボーイッシュな感じで、すごく好きです。
でも、僕は中身が見たかった!
「なぁ。タクトってば、なんで泣いているの?」
「いや、目にゴミが入っただけさ……」
「それってヤバいじゃん。目薬貸そうか?」
「だ、大丈夫だもん……」
「変なタクト」
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